がんゲノム医療とは
当院で行っているがんゲノム医療(がん遺伝子治療)について解説します。
がんゲノム医療とは?
現在のがん治療は「手術」「放射線療法」「化学療法(抗がん剤)」の三大療法(標準治療)が中心です。
現在、それらに並びがん治療の代表的な選択肢になり得る新しい治療アプローチとして目覚ましく研究が進み、国も積極的に力を入れているのが「がんゲノム医療」です。
がんゲノム医療をわかりやすく言えば、がんを遺伝子レベルで根本から治していこうとする治療法です。
例えば現在、厚生労働省では以下のような取り組みが行われています。
- がんゲノム医療提供体制の整備
- ゲノム情報等を集約・利活用する体制の整備
- 薬事承認や保険適用の検討
- がんゲノム医療に必要な人材の育成の推進
- 研究の推進
がんゲノム医療には、現在2つの方法があります。
①分子標的薬治療(遺伝子の異常に適合した薬剤を投与する)
②遺伝子治療(遺伝子の異常に適合したがん抑制遺伝子を投与する)。
①分子標的治療薬の作用機序
がんを増殖させるスイッチ(EGFRやRASなど)の遺伝子異常が起きた場合、スイッチが入りっぱなしになり、がんの増殖がどんどん進みます。このスイッチをオフにするのが分子標的薬と呼ばれる薬剤です。
異常が起きたスイッチに合った分子標的薬を投与することで、がんの増殖を止めることができます。
多くの分子標的薬は標準治療となっており保険治療で可能です。まだ保険適応となっていない分子標的薬は自費治療となります。
②遺伝子治療の作用機序
がん抑制遺伝子は”細胞の増殖を抑制する””細胞のDNAに生じた傷を修復する””異常な細胞をアポトーシス(細胞死)に誘導する”などのはたらきを持った遺伝子で、がん化にストップをかける役割をします。
この遺伝子に異常が起こると、一旦がん化が起こっても、止めることができなくなりなります。正常ながん抑制遺伝子を投与することで、がんの増殖を止めることができます
がん遺伝子治療は現在臨床研究が進んでいますが、まだ保険適応にはなっていません。
当院で行っているがんゲノム医療は②の遺伝子治療が中心です。
①の分子標的薬の投与も可能ですが、事前に「遺伝子パネル検査」を行い、適合する薬剤を調べる必要があります。
遺伝子治療には遺伝子パネル検査は必ずしも必要ではありません。がん種によって異常となることが多いがん抑制遺伝子を選び、組み合わせて投与します(遺伝子治療で使用する遺伝子タンパクについても参照)。
2つのがんゲノム医療の違い
分子標的薬治療は、遺伝子パネル検査で原因となる遺伝子を特定して、より効果が高い治療薬を選択することが可能で、患者一人一人にあった「個別化医療(オーダーメイド医療)」を目的としています。
一方、遺伝子治療は、がん種による予測のもとでがん抑制遺伝子を組み合わせて行うため「準個別化医療(セミオーダーメイド医療)」となります。
いずれも、がんゲノム(=遺伝子)をもとに治療計画を立て、抗がん剤のように正常細胞まで攻撃するのではなく、がん細胞のみを攻撃するよう考えられた治療です。
当院もこのがんゲノム医療に積極的に取り組んでいます。
がんゲノム医療の実際の流れ
①分子標的薬治療の場合
まず「がん遺伝子パネル検査」を行います。
これは患者さんから採取したがん組織や血液から遺伝子を調べるもので、1回の検査で数十~数百種類の遺伝子異常を調べることができます。結果が出るまでに3~4週間かかります。
遺伝子の異常が見つかれば、それに適合する分子標的薬を投与します。(遺伝子パネル検査で適合する分子標的薬が見つかる確率は約10%)
②遺伝子治療の場合
がん抑制遺伝子を点滴投与します。
基本的な治療スケジュールとしては、1クール6回を2週間おきに投与し、約3か月かかります。
集中治療や遠方からの来院、再発予防目的の場合などによってスケジュールは変わります。
がんゲノム医療の特徴とメリット
①身体への負担や副作用が少ない
がんゲノム医療は遺伝子の異常に合わせた治療で、がん細胞に集中して働きかけるアプローチのため、正常な細胞への影響が最小限で負担が少ないのが特徴です。
抗がん剤と比較して副作用の少ない効果的な治療が期待できます。抗がん剤治療が行えない方でも遺伝子治療が可能です。
②標準治療との相乗効果が期待できる(遺伝子治療の場合)
抗がん剤治療や放射線治療の効果を補完するほか、手術時のがんの取り残しや再発の原因となる微小転移にも高い効果を示します。
標準治療、すなわち保険診療では、全身に残っている可能性があるがんに対して積極的な治療は行えません。
③遺伝性疾患や希少がんなどにも適応がある
がんゲノム医療は「がん細胞の遺伝子異常に対して効果的な薬剤を選択投与して治療を行う」という、抗がん剤とは異なるアプローチの治療法です。
もし適合する遺伝子の異常が見つかれば、まだ標準治療となっていない分子標的薬やがん抑制遺伝子を使用した治療を行うことができます。
④標準治療を希望しない/標準治療が終わった場合でも治療可能
がんゲノム医療は身体への負担が少ない治療なので、標準治療が終了した末期がん患者さんに対しても治療が可能です。
また、標準治療を希望されない場合でも、がんゲノムに応じた治療を行うことができます。
がんゲノム医療のデメリット
すべてのがん症例に実施できるとは限らない(分子標的薬治療の場合)
治療に役立てることを目的としてがん遺伝子解析を行いますが、遺伝子変異が見つからないこともあります。また変異が見つかっても今までに例の少ない変異などの場合には、適切な治療薬がない、もしくは限られる場合もあります。
遺伝子変異ががんの進行に関係しているとしても、それを治す薬剤がまだ未開発のケースもあります。
②副作用リスク
がんゲノム医療は比較的副作用の少ないがん治療ですが、それぞれ副作用が起こることがあります。
分子標的薬治療:アレルギー反応、間質性肺炎、手足症候群、皮疹など
遺伝子治療:頭痛、微熱など
起こる場合があります。くわしくはこちらをご参照ください。
③治療費が高額となる
保険適応とならない分子標的薬や、遺伝子治療は自費となりますので、高額な治療費がかかります。
高額にはなりますが、様々ながん患者さんに幅広く対応できるがんゲノム医療をご提供しています。
銀座みやこクリニックで行うがんゲノム医療の特徴
当院は自由診療のがんクリニックですが、常にがんゲノム医療をおすすめしているわけではありません。まずは保険適用の標準治療(手術・抗がん剤・放射線治療)を第一に考えています。
来院されたからといって当院での治療を必ず受けてもらう必要もありません。
当院ではがんゲノム医療の他にも免疫療法や温熱療法、東洋医学やサプリメント等、様々な選択肢からあなたにあったオーダーメイドながん治療をご提案します。
まずはセカンドオピニオンを受けるだけでもかまいませんので、気軽にご相談ください。
がんゲノム医療(遺伝子治療)に関するQ&A
どんな人にがん遺伝子治療はおすすめですか?
進行がんや治療が困難ながん患者さんにおすすめです。また標準治療に限界を感じている患者さん、標準治療に反応しなかった患者さんにも適しています。
さらに家族にがんの遺伝子変異がある場合や若年性がん患者など、特定の症例にも効果が期待できます。
どんな種類のがんに効果がありますか?
基本的にどんな種類のがんにも効果が期待できます。
一部の種類のがんではより高い効果が期待されることがありますが、遺伝子解析を行うことで個々のがんに合わせた最適な治療法を選択できるようになります。
がんの再発や転移にはどれくらいの効果がありますか?
適切な治療法を選択することで、がんの再発や転移を遅らせることができる可能性があります。
また、がんの進行を抑制し、生存期間を延ばすことも期待できます。
効果は個々のがんによって異なります。まずは気軽にご相談ください。
標準治療と併用すべきですか?
遺伝子治療は、標準治療と併用することでより効果が期待できます。標準治療を希望されない場合でも、治療は可能です。
医療に費用はどれくらいかかりますか?保険は適用されますか?
当院での治療はすべて自費となっております。治療費用はこちらをご参照ください。
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当院ではがんゲノム医療、免疫療法、温熱療法など、様々な選択肢からあなたに適したオーダーメイドながん治療をご提案します。
まずはセカンドオピニオンを受けるだけでもかまいませんので、気軽にご相談ください。