
漢方薬の併用で、肺がんの生存期間が2.5倍に!!


こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
台湾から発表されたこんな論文を見つけました。
日本語訳すると、「進行肺癌における漢方薬の統合:ターゲット試験エミュレーションを用いた多施設共同実臨床研究」です。
何のこっちゃいな?って感じですよね。
内容をものすごく簡単にまとめると、
ステージ4の非小細胞肺がんの患者さんで、漢方薬を併用したグループとそうでないグループの生存率を比較したところ10年生存率で大きな差が出たというものです。
漢方薬併用群 10年生存率 8.2%
漢方薬非併用群 10年生生存率 3.4%
がん治療は、手術、抗がん剤治療、放射線治療などいわゆる西洋医学的な治療がメインで行われますが、それに東洋医学的な治療を加えることで、生存率が向上する可能性があることが今回の論文で示されました!
なぜ漢方薬の併用で生存率が倍になったのか?
試験に使用された生薬の種類と具体的な効果
今回の臨床試験では
①白花蛇舌草(びゃっかじゃぜつそう)
②桑白皮(そうはくひ)
③地膚子(じふじ)
④苦参(くらら)
など、あまり日本ではなじみのない生薬が使われていました。
上記の4つの生薬に共通する抗がん作用は、主にがん細胞の増殖抑制とアポトーシス(細胞死)の誘導です。これらは、がん細胞の増殖を食い止め、自滅させるという基本的なメカニズムであり、多くのがん研究で共通して報告されています。
個々の生薬に特徴的な作用
① 白花蛇舌草 (Hedyotis diffusa Willd.)
特徴的な作用: がん細胞内のPI3K/AKT経路やSTAT3経路といった、細胞の生存や増殖に関わる複数のシグナル伝達経路を同時に抑制する多標的なアプローチが特徴です。さらに、化学療法耐性を持つがん細胞に対しても効果を示す可能性が示唆されています。
② 桑白皮 (Morus alba L.)
特徴的な作用: がん細胞への直接的な作用に加え、血管新生の抑制が挙げられます。桑白皮の成分が、がん細胞が成長するために必要な新しい血管の形成を妨げることで、がんの栄養補給路を断ち、増殖と転移を抑える作用があるとされています。
③ 地膚子 (Kochia scoparia)
特徴的な作用: 主に、がんの細胞周期を停止させる作用が報告されています。特に大腸がん細胞において、細胞周期を特定の段階(G1/S期)で止め、がん細胞が増殖するのを阻止する働きが注目されています。
④ 苦参 (Sophora flavescens)
特徴的な作用: 複数のアルカロイド(マトリン、オキシマトリンなど)が有効成分として知られています。これらの成分は、免疫調節作用に優れており、がん細胞を攻撃するナチュラルキラー細胞(NK細胞)やT細胞の活性を高める作用があるとされています。また、がん細胞の遊走(移動)能力を低下させ、転移を抑制する効果も示唆されています。
*苦参とは異なりますが、植物アルカロイドは抗がん剤としてもよく使われており、代表的な薬剤にパクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカンなどがあります。
これらは抗がん作用がある生薬として知られていますが、日本ではほぼ見かけることがありません。
日本ではツムラなど生薬を複合させた漢方薬が、がん治療の補助として用いられています。
がん治療の補助として用いられる漢方薬
①補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
がんの術後に見られる全身倦怠感や免疫機能の低下、炎症反応の抑制
②十全大補湯 (じゅうぜんたいほとう)
がんの術後に体力低下、疲労、貧血などの症状の改善、術後感染症予防
③人参養栄湯(にんじんようえいとう)
がん患者の体力低下、食欲不振、倦怠感など悪液質の改善
④大建中湯(だいけんちゅうとう)
開腹手術による腸閉塞の予防、がん治療に伴う便秘や下痢などの症状改善
⑤半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
抗がん剤治療による口内炎や下痢の軽減
⑥五苓散(ごれいさん)
がんに伴うむくみや腹水、水様性下痢の改善
⑦牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
抗がん剤治療による末梢のしびれや冷えの改善
がん治療で漢方薬を使用する際の注意点
生薬・漢方薬には抗がん剤に近いような作用を起こすものもありますが、あくまでも「補完医療」であり、西洋医学と組み合わせることで最大限の効果を発揮します。
生薬・漢方薬だけでがんが治る可能性もゼロではありませんが、そのエビデンスはないので、漢方薬だけに頼るのは危険です。
また、 漢方薬は個人の体質や病状に合わせて選ぶオーダーメイドの治療であり、「すべてが誰にでも効くわけではない」ため、漢方薬に詳しい医師と相談しながら使用することが重要です。
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