がんゲノム医療薬のご紹介

がんの最大の特徴は「無限増殖」「不死」が挙げられます。したがってがん治療は、がんの増殖を止めること、がん細胞をアポトーシス(自死)に導くこと、この2つが重要なポイントです。

これらに対して働くのが、がんゲノム医療(がん遺伝子治療)です。

1.がん抑制遺伝子

当院では、以下のがん抑制遺伝子を投与することで、がん細胞の無限増殖を止め、アポトーシスに導くよう働きかけます。

がん抑制遺伝子は多くの種類がありますが、当院で用いているがん抑制遺伝子は、がんの方で特に変異が多く見られるものを選んでいます。

【p53】

効果:がん細胞をアポトーシス(自死)に導きます

標準治療との併用:細胞を死滅させるタイプの抗がん剤や放射線治療と相乗効果を発揮します

※シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセルなど

約60%のがん患者でp53の異常がみられます(再発がんでは90%以上)

*p53の異常が多くみられるがん:膵神経内分泌腫瘍(90~100%)、肺小細胞がん(80~90%)、子宮体がん(漿液性腺がん)(90%)、膵がん(75%)、肺扁平上皮がん(70%)、頭頚部がん、食道がん、大腸がん、乳がんなど)

【PTEN】

効果:がん細胞の激しい増殖を止める働きをします

標準治療との併用:がんの増殖を抑制するタイプの抗がん剤と相乗効果を発揮します

※分子標的薬、ホルモン剤など

約50%のがん患者でPTENの異常がみられます(再発がんでは90%以上)

*PTENの異常が多くみられるがん:子宮体がん(類内膜がん)(80~90%)、神経膠腫(グリオーマ)(70%)、悪性黒色腫(メラノーマ)(40~55%)、乳がんなど

【p16】

効果:がん細胞の分裂を遅らせ、アポトーシス(自死)に導きます

標準治療との併用:p53と同様の抗がん剤や放射線治療で相乗効果を発揮します

約30%のがん患者でp16の異常がみられます(再発がんでは90%以上)

*p16の異常が多くみられるがん…すい臓がん(80~90%)、悪性黒色腫(メラノーマ)、(>75%)など

【RB1】

効果:がん細胞の増殖を抑制し、発がんを予防します

*RB1の異常が多くみられるがん…小細胞肺がん(93%)、乳がん(トリプルネガティブ72%、Luminal B 62%)、前立腺がん(原発巣5%、転移巣40%)、肉腫(粘液線維肉腫 60%)、網膜芽細胞腫(先天的)など

【Smad4】

効果:がん細胞の増殖・転移を抑制します

*Smad4の異常が多くみられるがん:膵臓がん(30~60%)、大腸がん(5~24%)、乳がん、食道がん、若年性ポリポーシス(先天的)

2.がん関連タンパク抑制miRNA(マイクロRNA)

【CDC6抑制RNA】

効果:CDC6を抑制することで、がん細胞の増殖スピードを遅くし、p53を働きやすくします

CDC6:がん細胞の増殖を進行させる働きをします

※CDC6などの遺伝子タンパクを抑制する技術(RNA干渉)で2006年にアンドリュー・ファイアー教授とクレイグ・メロー教授がノーベル賞を受賞しました

CDC6は前立腺がんを除くほとんどのがんで発現しています

*CDC6の発現が多くみられるがん…頭頸部がん(100%)、カルチノイド(100%)、精巣がん(100%)、膵臓がん(81%)、尿路系(腎・尿管・膀胱)がん(71%)、乳がん(63%)など

【EZH2抑制RNA】

効果:EZH2タンパクを抑制することで、がん細胞の悪性化にブレーキをかけ、進行を止めます

悪性度が高い多くのがんでEZH2タンパクが発現しています(正常細胞や悪性度の低いがんではほとんど見られません)

EZH2の発現が多くみられるがん…濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞性B細胞リンパ腫(DLBCL)、肺小細胞がん、(予後の悪い)肺小細胞がん、転移性前立腺がん、(悪性度の高い)乳がん、胆管がん、悪性黒色腫、神経膠腫、ラブドイド腫瘍、卵巣小細胞がんなど

GATA3抑制RNA

効果:GATA3を抑制することで、がん細胞の悪性化にブレーキをかけ、進行を止めます

乳がん細胞の悪性化(進行や転移)に関係しています

*GATA3の異常が多くみられるがん:乳がん(Luminal A、Luminal B、Her2ともに 100%、トリプルネガティブ 50~60%)、悪性中皮腫(肉腫型  100%)、尿路上皮がん(90%以上)など

【ガンキリン抑制RNA】

効果:ガンキリンを抑制することで、様々ながん抑制遺伝子が活性化され、がん細胞の増殖、転移などを抑えます

ガンキリン:p53をはじめとした多くのがん抑制遺伝子を働けなくします。がん抑制遺伝子の殺し屋とも言われます

ほとんどのがんでガンキリンタンパクが発現しています

*ガンキリンの発現が90%以上みられるがん…肝臓がん、食道がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、前立腺がん、脂肪肉腫など

【KRAS抑制RNA】

効果:KRASタンパクが作られないようにすることで、がん細胞の増殖を抑えます

KRAS:KRASタンパクに異常があると、細胞増殖のスイッチがオンになったままとなり、がん細胞が無限に増殖するようになります

*現在、KRAS阻害剤(G12C変異のみ)が非小細胞肺がんに適応となっています(薬剤名:ソトラシブ)

*KRASの異常が多くみられるがん…膵臓がん(86~95%)、大腸がん(41%)、肺腺がん(32%)

MDM2抑制RNA

効果:MDM2というタンパクを制御し、p53の働きを正常にします

MDM2:がん抑制遺伝子p53を働けなくする、抗がん剤や分子標的薬に耐性を作る(=効かなくなる)、放射線治療の効果を低下させるといった作用があります

 *MDM2の異常が多くみられるがん…高分化型脂肪肉腫(>90%)、脱分化型脂肪肉腫(>90%)、内膜肉腫(60-70%)、多型膠芽腫など (p53を投与しても効果が乏しい症例にもMDM2の異常が多く見られます)

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