小児がんの原因は?疑うべき10の症状~ 白血病/脳腫瘍/リンパ腫/網膜芽細胞腫
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こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
今回のテーマは「小児がんを見つけるために注意したい10の症状」です。
「小児がんってどんながん」「小児がんで見られる症状」「小児がんでよくある質問」についてお話していきます。
小児がんとは
「小児がん」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。大人のように臓器別に〇〇がんというのではなく、小児がなるすべてのがんを総称して小児がんと言います。
小児の定義が0歳から14歳なので、その期間になったがんは、すべて小児がんです。
小児がんと言うと「子供でもがんになるの?」と思う人がいるかもしれません。
日本では0歳から14歳の子供のうち、毎年約2100人が小児がんと診断されます。大人が2人に1人がんになるのに対して、子供は7,500人に対して1人というかなり低い割合です。
ただ、子供の死因の中で小児がんの占める割合は高く、1歳から4歳では3位、5歳から9歳では1位、10歳から14歳では2位で、子供の三大死因と言われています。小児の病気の中では、命に関わる重大な病気と言えます。
大人のがんでよくある乳がんや肺がん、大腸がんなどは小児には見られません。小児がんの中で最も多く見られるのが白血病で、小児がんの約3分の1を占めます。その次は脳腫瘍で25%を占めます。3位はリンパ腫で約10%。4位以降は胚細胞腫瘍、神経芽腫など大人ではほとんど見られないがんが続きます。
大人のがんは生活習慣病が原因となるものが多いですが、小児がんで生活習慣が原因となることはまずありません。胎児期や幼児期などの成長の過程で異常な細胞が発生し、それらが増殖することで起こります。中には網膜芽細胞腫という眼のがんのように、遺伝性の小児がんもあります。
小児がんの治療は大人と同じで手術治療、放射線治療、抗がん剤治療などを組み合わせて行います。小児がんは抗がん剤や放射線が効きやすく、進行していても7‐8割が治ります。
小児がんの症状、早期発見のポイント
子供には大人のようながん検診や人間ドックはありません。小児がんは何らかの症状で病院を受診した際に見つかることがほとんどです。
以下の症状が見られた際には、小児がんを疑って病院を受診してください。
①2週間以上続く原因不明の発熱
小児がんで最も多い白血病は約半分の小児に発熱の症状が見られます。がんによる発熱だけでなく、白血病になると感染症にかかりやすくなるため、風邪が長引いて発熱が続く場合もあります。
子供はよく風邪をひくし、よく熱を出して病院を受診しますが、すべて白血病を疑う訳ではありません。原因がはっきりしないまま2週間以上続く発熱や風邪症状が見られた場合に白血病を疑って検査します。
子供の不明熱の1割弱は小児がんが原因だとも言われています。小児がんの発熱は39℃や40℃の高熱が必ず出るという訳ではなく、微熱の場合もありますし、解熱と発熱を繰り返すこともあります。
②顔色が悪い、疲れやすい
白血病では、赤血球が十分に作られなくなるため貧血になります。そのため、顔色が悪い、元気が無い、疲れやすいといった貧血による症状が見られます。
③あざができやすい、鼻血が止まりにくい
白血病では、血液を固める役割をする血小板が十分に作られなくなり、出血が止まりにくくなります。これを出血傾向と言います。
そのため、あざができやすかったり、鼻血が止まりにくくなったりすることがあります。
歩ける子供であれば膝から下に、まだ歩けない赤ちゃんであればお尻にあざができやすくなります。
特にぶつけたわけでもないのに子供にあざができやすいと言った場合は要注意です。
白血病によるあざは小さいものが多発することがあり、ぱっと見ただけでは湿疹と見分けにくいことがあります。そんな時の見分け方としてガラス圧法があります。
皮膚に透明なガラス(もしくはプラスチック)の板を押し当ててみて、赤みが消えたら湿疹、消えなかったらあざと判断します。
出血傾向は白血病以外でも腫瘍の骨髄転移や血小板減少性紫斑病などの血液の病気で見られることがあります。
④痛みを伴わないリンパ節の腫れ
リンパ腫や白血病で、首のまわり、耳の後ろ、顎の下、足の付け根などにあるリンパ節が腫れることがあります。
リンパ腫で腫れた場合には基本的に痛みを伴いません。首のまわりのリンパ節は風邪や川崎病など様々な病気でも腫れますが、その場合は痛みを伴うことが多いです。
⑤骨や関節の痛み、腫れ
骨や関節の痛みは小児がんで多く見られる症状で、骨肉腫やユーイング肉腫、白血病で見られます。
骨肉腫やユーイング肉腫による骨の痛み方は、間欠的で、痛くなったり軽くなったりを繰り返しながら徐々に悪化していきます。腫れやしこりを伴うことも多いです。
骨の痛みは良性の骨腫瘍や成長痛でも見られます。良性の骨腫瘍や成長痛は夕方から夜にかけて痛みが強くなる、下肢で多く見られるという特徴があります。
⑥筋肉のしこり
筋肉や脂肪など体の柔らかい組織にできるがんを軟部肉腫といいます。軟部肉腫は手足でよく見られ、特に太ももで多く見られます。
太ももの軟部肉腫では、太もも全体が大きく腫れたように見え、関節が曲がらなくなったり座ることができなくなったりすることもあります。痛みや発熱を伴うこともあります。
⑦お腹のしこり、膨満
お腹のしこりとなる小児がんに神経芽腫、肝芽腫、腎芽腫などがあります。これらは正常な細胞になるはずの芽である細胞から発生したがんなので、がんの名前に“芽”が付いています。
胎児期に臓器が作られる段階から発生し、生まれたての赤ちゃんで見つかることもあります。
“芽”が付くがんは3歳までのうちに見つかることが多いです。うまく言葉でお腹の症状を訴えることができない年齢だと、腹部に硬いしこりを触れるか、お腹が異常に膨らんでいる様子など、親が異常に気付いてあげるしかありません。
⑧光る目、白っぽい目
網膜芽腫と呼ばれる網膜のがんでは、瞳孔を通じて目の奥にある網膜のがんが白く見えます。
そのため、黒目の部分が白く見え、暗闇で光って見えるという特徴があります。0歳から見られ、5歳までには発症し診断が付きます。
同じく黒目が白くなる病気に先天性の白内障があり、こちらも生後すぐから見られることがあります。
⑨吐き気を伴う頭痛
頭痛で外来を受診する子供は少なくありません。その多くは片頭痛や緊張性頭痛と呼ばれるものですが、中には脳腫瘍や白血病で頭痛が見られることがあります。
脳腫瘍や白血病による頭痛は吐き気やおう吐を伴うことが多いという特徴があります。
⑩長引く咳、喘息
胸の中で左右の肺に囲まれた部分を縦郭(じゅうかく)と言います。縦郭には気管や食道、大動脈、心臓などの重要な臓器があります。
子供は気管が柔らかいので、縦郭に腫瘍ができると気管が圧迫され、咳や喘息のような症状が見られます。治療しても改善しない子供の咳や喘息では、縦郭腫瘍を疑います。
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これまで10の症状を挙げましたが、発熱、風邪症状や腹痛など普段から小児でよく見られる症状も含まれています。また10の症状以外が見られることもあります。
小児がんの発見で最も大事なのは「いつもと違う」「何かおかしい」という感覚です。少しでも異変を感じたら遠慮せずに病院を受診してください。
初期のうちでは症状が軽く、最初の病院では診断がつかないことがよくあります。その後も「症状がなかなか改善しない」「徐々にひどくなっている」という場合には、再度病院を受診してください。
全国に“小児がん拠点病院”が15施設、“小児がん連携病院”が144施設ありますので、そちらを受診しても良いと思います。
小児がんについてのよくある質問
- 小児がんは予防できるのでしょうか?
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原因が分からないことがほとんどなので、予防は難しいです。
- あんな小さな子供に抗がん剤を使っても大丈夫なのでしょうか?
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小児がんは抗がん剤が効きやすいので、よく使用されます。ただ、晩期合併症といって、10年以上経ってから様々な後遺症に悩まされることがあります。
- 小さい子供に手術は負担が大きいと思います。放射線治療では治療は難しいでしょうか。
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小児がんは放射線治療が効きやすいので、放射線治療を行うこともあります。
- 放射線治療をすると将来がんになりやすいと聞きました。本当でしょうか?
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放射線治療を行うと、照射部位にかかる正常組織に将来的にがんが発生することがあります。ただ、必ずしも発生するわけではなく、数%の確率とされています。
- 陽子線治療なら体への負担が少ないと聞きました。陽子線治療はいかがでしょうか?
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正常組織に当たる放射線が少ないので、副作用や発がん性などは通常の放射線治療より少ないと考えられています。ただ、全国で19施設しかないので通院が難しいという問題があります。
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