
エコーで「胆のう壁肥厚」 これってがん?

濱元誠栄院長こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
読売新聞の医療相談にこんな記事がありました。
健康診断や人間ドックで腹部エコーを行った際に、「胆のう壁肥厚」という所見が見つかることが少なからずあります。
胆のう壁肥厚に対しては「要精査」が勧められ、病気の可能性を探ることになります。
相談者のように手術を勧められるケースもあります。
今回は、意外と知らない「胆のう」という臓器の役割と、胆のう壁肥厚に潜む病気のリスクについて相談者内容とあわせて詳しく解説します。
1. そもそも「胆のう」って何をしているところ?
胆のうは、肝臓の下にコバンザメのようにくっついている、ナスのような形をした小さな袋です。
- 役割: 肝臓で作られた胆汁(たんじゅう)という脂肪を分解する液体をギュッと濃縮して蓄えておく「倉庫」のような役割です。
- 出番: 私たちが脂っこい食事をすると、胆嚢がキュッと縮んで胆汁を十二指腸へと送り出し、消化を助けます。
この胆汁の成分が時に結晶化して胆のう結石(胆石:たんせき)という石ができます。
日本人の10人に1人は胆石を持っていると言われていますが、その多くは特に悪さをしない「無症状」のものです。
胆石を持っていると、胆石が胆のうの出口に詰まって胆汁が出せなくなり、痛みが出たり(胆石発作)、胆のうが炎症(胆のう炎)を起こしたりします。
これらの症状が一度でもあった場合には、胆のう摘出手術を勧められます。
現在は腹腔鏡で行われるため、傷も小さく、術後は数日で退院できます。
2. なぜ「痛みがない」のに手術を勧められるのか?
相談者は胆石もなく無症状だったようですが、「壁が厚いから切除しましょう」と言われたそうです。
無症状なのに手術を勧められたら戸惑うのは当然です。しかし、そこには「胆のうならではの診断の難しさ」があります。
胆のうの壁が厚くなる原因には、大きく分けて3つあります。
- 胆のう腺筋腫症(たんのうせんきんしゅしょう): 筋肉の層が厚くなる良性の変化。
- 慢性胆のう炎: 石の刺激などで長年炎症が続き、胆のうの壁が硬く厚くなった状態。
- 胆のうがん: 壁そのものから悪性腫瘍が発生している状態。
診断の「壁」
実は、エコーやCTを駆使しても、これらが「100%良性か悪性か」を術前に見分けるのは非常に困難です。
「良性だと思って様子を見ていたら、実はがんだった」という事態が一番恐ろしいため、医師は「がんの可能性を完全に否定できない」場合に、安全を最優先して手術を提案するのです。
ちなみに、胆のうがんは早期のステージ1で発見できれば予後が良いのですが、ステージ4になると膵臓がん並みに5年生存率が低くなります。


3. 手術をしたら生活はどう変わる?
「臓器を一つ取ってしまって大丈夫なの?」と心配になりますが、結論から言うと、術後の生活に大きな支障が出ることはほとんどありません。
- 手術方法: 現在は「腹腔鏡(ふくくうきょう)」手術が一般的です。お腹に小さな穴を開けて行うため、傷跡も小さく、回復も非常に早いです。
- 術後の消化: 胆嚢という「倉庫」がなくなっても、肝臓が胆汁を作る機能は変わりません。胆汁が直接十二指腸へ流れるようになるため、体が変わらず脂っこいものを消化できるよう、体が徐々に順応していきます。
4. 「早期発見」が最大のメリット
胆のうがんは、初期段階では自覚症状がほとんどありません。しかし、壁が厚くなっている段階で見つけることができれば、それは早期発見になる可能性があります。
そのため、「良性か悪性か判断できないけど、悪性だった時のことを考えて早めに手術を勧める」という方針になります。
まとめ:悩んだらセカンドオピニオンも
もし手術に踏み切れない場合は、別の病院で検査画像を見てもらう「セカンドオピニオン」を利用するのも一つの手です。納得して治療に臨むことが、何より大切です。
あなたの大切な体、まずは「なぜ手術勧められたのか」を主治医としっかり話し合ってみてください!


















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