生存率という“過去データ”の読み方

濱元誠栄院長

こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。

先日のブログ

銀座みやこクリニック-東京のがん...
【がん5年生存率】数字に縛られないで!データより「今の医療」を信じるべき理由 【YouTube動画でご覧になりたい方はこちら】 https://youtu.be/uPx64ugJrao?si=_MJDtTDe30stQjFw こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。 先日、厚生労働省から...

こちらの続編となるような、2017年、2018年に診断された5年生存率のデータが発表されました。

「2017年全国がん登録5年生存率報告 」の結果

「2018年全国がん登録5年生存率報告」の結果

2016から2018年までの5年純生存率(%)の推移を見てみると

  • 胃:2016 64.0 → 2017 64.3 → 2018 64.4
  • 大腸(結腸・直腸):2016 67.8 → 2017 68.0 → 2018 68.0
  • 肝および肝内胆管:2016 33.4 → 2017 34.1 → 2018 34.4
  • 肺:2016 37.7 → 2017 39.8 → 2018 39.6
  • 乳房(女性):2016 88.0 → 2017 88.0 → 2018 88.4
  • 子宮頸部:2016 71.8 → 2017 72.1 → 2018 71.4
  • 前立腺:2016 92.1 → 2017 92.2 → 2018 92.5
  • 膵臓:2016 11.8 → 2017 12.6 → 2018 13.5

ほとんどが横ばいか微増しています。

それぞれのがん種についてみてみます。

目次

胃がん

推移:64.0 → 64.3 → 64.4(ほぼ横ばい)

新薬・治療の更新(代表例):

  • ニボルマブ(オプジーボ):進行・再発胃がん(化学療法後増悪)で2017年に承認事項一部変更承認。
  • トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ):HER2陽性進行・再発胃がんで2020年に国内承認。
  • MSI-High固形がんに対するペムブロリズマブ:2018年末に“臓器横断”で承認(胃がんの一部も対象になり得る)。

考察:
胃がんは、早期がんは内視鏡・手術でかなり救える一方、生存率を押し下げるのは「進行例・再発例」です。2016〜2018診断の5年成績には、免疫療法やエンハーツが“効く層”の恩恵が混ざり始める前夜の部分が大きい。

大腸がん(結腸・直腸)

推移:67.8 → 68.0 → 68.0(実質横ばい)

新薬・治療の更新(代表例):

  • MSI-High固形がんへのペムブロリズマブ(キイトルーダ)(臓器横断承認):2018年末承認。大腸がんでもMSI-H/dMMR群が対象になり得る。

考察:
大腸がんは、集団としては「手術で治る層」が厚く、そこで上限が高い一方、全体の5年生存率をさらに押し上げるには、①進行例の初回治療の底上げ、②再発例の長期生存の増加、の両輪が必要です。MSI-H免疫療法はインパクトが大きい反面、対象は一部なので、全体平均の数字を短期に大きく動かしにくい。

肝がん(肝および肝内胆管)

推移:33.4 → 34.1 → 34.4(小幅上昇)

新薬・治療の更新(代表例):

  • レンバチニブ(レンビマ):切除不能肝細胞癌で2018年に適応追加承認(一次治療の新たな選択肢)。

考察:
肝がんは背景肝(肝硬変など)と共存するため、薬が効いても“肝機能の天井”があるのが難しいところ。とはいえ2018年に一次治療の選択肢が増えたことは、少し遅れて生存率に効いてくる可能性が高い(2016〜2018診断の5年成績は、その“効き始め”の入口)。

肺がん

推移:37.7 → 39.8 → 39.6(2016→2017で上がり、2018で横ばい)

新薬・治療の更新(代表例):

  • オシメルチニブ(タグリッソ):EGFR T790M変異陽性NSCLCで2016年に販売開始(当時の耐性克服の重要ピース)。 一次治療としては2018年8月承認。
  • デュルバルマブ(イミフィンジ):切除不能Stage III NSCLCで、根治的化学放射線療法後の維持療法として2018年に国内承認

考察:
肺がんの生存率が短期間で動きやすいのは、①分子標的、②免疫療法で、進行例の自然史が変わりやすいからです。2016→2017の上昇は、既に使われ始めていた免疫療法・分子標的の浸透、検査体制の整備(遺伝子検査が当たり前になる過程)などが混ざった可能性があります。2018年はデュルバルマブ承認年なので、真の上積みはもう少し後の診断年で出やすい。

乳がん(女性)

推移:88.0 → 88.0 → 88.4(高水準で微増)

新薬・治療の更新(代表例):

  • パルボシクリブ(CDK4/6阻害薬、イブランス):進行・再発乳がんで2017年に国内承認。
  • アベマクリシブ(CDK4/6阻害薬、ベージニオ):進行・再発乳がんで201年に国内承認。

考察
乳がんはもともと生存率が高く、ここからさらに上げるのは“統計的に”難しい(天井効果)。それでも2018で微増しているのは、治療の底上げ(薬)もありますが、検診・早期診断・手術/補助療法の最適化が積み重なった結果でもあります。CDK4/6阻害薬は進行・再発領域での影響が大きく、全体の5年生存率に反映されるのは少し遅れて出やすいタイプです。

子宮頸がん

推移:71.8 → 72.1 → 71.4(ほぼ横ばい、2018でやや低下)

新薬・治療の更新(代表例):

  • ペムブロリズマブ+同時化学放射線療法(CCRT):局所進行子宮頸癌で2024年に国内追加承認(KEYNOTE-A18)。

考察
この3年の数字が動きにくいのは、子宮頸がんは“治療”だけでなく“発見のされ方(検診・受診行動・進行期分布)”に強く左右されるからです。2024年の追加承認のような治療の更新は、2016〜2018診断の枠外なので、ここには乗りません。つまり、今後の診断年のほうが上昇余地がある領域です。

前立腺がん

推移:92.1 → 92.2 → 92.5(高水準で微増)

新薬・治療の更新(代表例):

  • ロボット支援前立腺全摘(RARP):日本で2012年に保険収載後、急速に普及(手術侵襲や機能温存の改善が“治療継続”に寄与し得る)。
  • オラパリブ(リムパーザ):BRCA変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺癌で2020年12月に承認(その後、2023年にアビラテロン併用で承認も)。

考察:
前立腺がんは①PSA検査で比較的拾われやすい、②治療選択肢が多い、③進行が比較的ゆっくりの群も多い、が重なって生存率が高い。2016〜2018で微増なのは、そもそも天井が近いのと、遺伝子標的(PARP阻害薬)のような“強いカード”は2020年以降に本格化するため、この期間の数字にはほぼ乗りません。

膵がん

推移:11.8 → 12.6 → 13.5(3年で着実に上昇、ただし依然として低い)

新薬・治療の更新(代表例):

  • オラパリブ(リムパーザ):BRCA変異陽性の切除不能膵癌で、白金系化学療法後の維持療法として2020年12月に承認。

考察:
膵がんの改善が“ゆっくりでも上向く”のは、薬そのものより先に、①化学療法レジメンの最適化、②集学的治療(化学療法→手術など)を選べる施設連携、③支持療法で完遂率が上がる、が積み重なるからです。一方で、膵がんの最大の壁は診断時に進行している割合が高いことで、ここが変わらない限り平均値の上昇には限界があります。オラパリブのような“刺さる層”は明確に存在しますが、対象は一部なので、全体平均を大きく動かすには早期診断・切除可能例の増加も必要になります。

2016〜2018診断の数字は、免疫療法や分子標的が“席に着き始めた”時期で、がん種によっては今の標準治療の主役がまだ揃っていないめ、まだまだこれから数字が動き始めます。

繰り返しになりますが、2017年2018年もまだまだ過去の成績表です。

あまり気にしないように。

濱元誠栄院長

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この記事を書いた人

1976年宮古島市生まれ。宮古島市立久松中学から鹿児島県のラ・サール高校に進学。鹿児島大学医学部を経て沖縄県立中部病院で研修医として勤務。杏林大学で外科の最先端医療を学んだのち再び沖縄県立中部病院、沖縄県立宮古病院、宮古徳洲会病院に外科医として勤務。2011年9月に上京しRDクリニックで再生医療に従事した後に、18年7月にがん遺伝子治療を専門とする銀座みやこクリニックを開院。

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