卵巣がんを早期発見するには?原因や初期症状、驚きの予防法について
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こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
本日は「卵巣がんを早期発見するには?驚きの予防法とは?」についてお話していきます。
卵巣という臓器について
まず卵巣について説明します。卵巣は子宮の両脇に左右1個ずつ存在していて、うずらの卵のような大きさと形をした臓器です。
卵巣の中には命の元となる「卵子」が入っていて、だいたい4週に1回の割合で卵子が卵巣の外に放出される排卵が起こります。卵巣から排卵された卵子は卵管にキャッチされ、受精のために子宮内に運ばれます。
また卵巣には女性ホルモンであるエストロゲンを分泌する働きがあります。40代になると卵巣機能が弱まり、エストロゲンの量が減ってきて50歳前後で閉経を迎えます。
卵巣がんは「治りにくいがん」
卵巣がんの患者数は年々増えていて、最新のデータではここ20年で約2倍になっています。
それでも、女性のがんの中では9位とそう多くは無いのですが、診断された人の約半数が亡くなる、つまり非常に治りにくいがんという特徴があります。
卵巣がんのリスク
では、卵巣がんのリスクが高いのはどのような人なのでしょう。以下に挙げます。
①妊娠・出産経験がない
卵巣がんは排卵回数が多いほどリスクが高くなります。妊娠や出産で排卵が中断されることが無かった人は生涯の排卵回数が多くなり、リスクが高くなると考えられています。
ちなみに、出産経験のある人でも、初産の年齢が30歳以上だとリスクが高まります。
②40歳以上
卵巣がんは40代以降で急激に増えることが分かっています。
③「チョコレートのう胞」がある
本来子宮の内側にあるはずの子宮内膜が、子宮の外にできる病気を子宮内膜症と言います。
この子宮内膜症が卵巣の中に起こると、卵巣の中で生理のたびに出血が起き、卵巣の中で血液がどろどろのチョコレートのような状態で溜まります。これをチョコレートのう胞と言います。
この卵巣チョコレートのう胞の一部は、卵巣がんになるとされています。
④家族や親せきに卵巣がん・乳がんがいる
卵巣がんの約2割は遺伝的要因が関係しているとされています。
BRCAという遺伝子に異常がある場合は遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)といって、乳がんや卵巣がんのリスクが高まります。遺伝性乳がん卵巣がん症候群の人は、そうでない人と比べて卵巣がんになる確率が最大60倍になります。
ちなみに遺伝性乳がん卵巣がん症候群は50%の確率で子どもに遺伝します。
逆に、卵巣がんのリスクが低い人については以下の人が挙げられます。
★出産回数の多い人ー出産回数が2回以上の人はリスクが下がるとされています。
★経口避妊薬(ピル)を内服している人ーピルは排卵を抑制するのでリスクが下がります。5年以上内服している人はリスクが半減すると言われています。
★長く眠る人ー日本人を対象にした研究では、睡眠時間が7時間以上の人は、6時間未満の人と比べてリスクが1/2になるとされています。その理由は不明です。
卵巣がんの症状について
排卵の時にも説明したように、卵巣の表面は腹腔内に顔を出しているので、卵巣がんは比較的早期からお腹の中に転移しやすいです。
お腹の中に転移すると腹水がたまり、それによって以下のような様々な症状が起こります。
①下腹部が張る
54%と最も多くの方に見られる症状です。卵巣がんの患者さんは「食後じゃなくてもお腹が張る」とか「太った訳でもないのにウエストがきつくなった」という訴えをすることがあります。
②下腹部の痛み
50%の方に見られます。卵巣がんが大きくなると痛みを感じるようになりますが、はっきりした痛みではなく「下腹部が重たい感じがする」という程度のこともあります。
③トイレが近い
33%の方に見られます。腹水がたまると膀胱が圧迫されて広がらないので、少しの尿でもに膀胱内がいっぱいになり、トイレに行きたくなります。
④下腹部にしこりが触れる
24%の方に見られます。本来はうずらの卵くらいの大きさの卵巣が、こぶし大くらいまで大きくなるとしこりとして感じるようになります。横になって下腹部を触ってみて、左右どちらかに硬いしこりが触れたら、卵巣がんの可能性があります。
⑤食欲低下
23%の方に見られます。腹水で胃や腸が圧迫されると、すぐにお腹いっぱいになったり食べ物の通りが悪くなったりして、食欲がなくなります。
⑥生理以外の出血
19%の方に見られます。卵巣がんで女性ホルモンのバランスが乱れると不正出血がおこることがあります。
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その他に見られる症状としては「腹水による体重増加」「足の浮腫みや便秘」などがあります。
卵巣がんの検診について。早期発見、予防するには?
子宮頸がん検診のような定期検診は卵巣がんにはありません。ですから卵巣がんを早期で見つけるためには健康診断や人間ドックのオプションでお腹のエコー検査を付けたり、婦人科で調べてもらうしかありません。
あるアンケートによると女性の約6割が婦人科検診を受けていないと回答していました。その理由は「体調の不調や不安を感じていない」65%、「必要性を感じていない」23%と言うものでした。
婦人科検診を行った女性の4分の1は子宮や卵巣に何かしらの異常が見つかるという話もあるので、40歳を過ぎたら症状が無くても定期的に婦人科で検診を受けることをお勧めします。
実際、お腹が張るなどの症状がある場合、いきなり婦人科を受診せずに内科を受診する人が多いと思います。内科では婦人科疾患を疑わないこともあるため、症状が改善しないようだったら婦人科も受診するようにしましょう。
卵巣がんのリスクが非常に高い遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の人の場合には、予防的に卵巣を切除するという方法があります。
卵巣がんの好発年齢である40歳よりも前に行うことが推奨されています。
予防的卵巣切除は、HBOCの人が卵巣がんで死亡するリスクを確実に下げる効果があります。女優のアンジェリーナ・ジョリーさんもHBOCで、38歳の時に予防的に乳房と卵巣を切除しました。
日本ではHBOCですでに乳がんを発症している人は、もう片方の乳房切除と両側の卵巣切除が保険適応となります。
HBOCで卵巣がんを発症した人の場合には両側の乳房切除と乳房再建が保険適応となります。
40歳を過ぎたら定期検診を
最後に、卵巣がんの早期発見を妨げる要因についてお話します。
あるアンケートで「卵巣がんになった家族や親族がいることが、卵巣がん発症のリスクになる」と理解している人は37%しかおらず、また「発症しやすい年齢」「リスク要因」「自覚症状」についても、子宮頸がんと比較して「分からない」と答えた人が多いという結果でした。
自覚症状が出た後も受診に至らない人が多いです。その理由としては「卵巣がんの知識が無く、婦人科を受診する考えに至らなかった」が37%、「婦人科を受診した経験が少なく、抵抗があった」が22%、「内診を受けるのに抵抗があった」が13%でした。
40歳を過ぎたらだれでも卵巣がんになるリスクが出てきます。症状が出る前に見つけるために、定期的に婦人科で検診を受けるようにしましょう。
そして、お腹の張りなど気になる症状があれば、卵巣がんである可能性も考えて内科だけでなく婦人科を受診することをお勧めします。
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