【延命から根治へ!】大腸がんの「免疫の壁」を壊すために、今すぐできること

濱元誠栄院長

こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。

銀座みやこクリニックのアメーバブログで、京都大学が発見した大腸がんで免疫を阻害するタンパクTHBS2(トロンボスポンジン2)についてお話しました。

この記事の続編として、患者さんが「今すぐ実践できる対策」に焦点を当てたブログを作りました。

「ただ待つのではなく、攻めの姿勢で治療に向き合える」よう、皆様の参考になれば幸いです。


目次

【続報】大腸がんの「免疫の壁」を壊すために、今すぐできること

前回のブログでは、京都大学が発表した大腸がんの重大ニュースについて解説しました。

大腸がん(特に免疫療法が効きにくいMSSタイプ)において、「THBS2(トロンボスポンジン2)」というタンパク質が、がんの周りに分厚い壁を作り、免疫細胞の侵入をブロックしているという発見です。

このニュースを聞いて、

「原因が分かったのは嬉しいけれど、その特効薬が出るのは数年先でしょう?」

「今まさに闘病している私には間に合わないのでは…」

と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、THBS2そのものをズバリと消し去る「新薬」が承認されるには、まだ時間がかかります。

しかし、私たちはそこで指をくわえて待っているわけにはいきません。

「新薬がないなら、今あるもので代用できないか?」

これが、私たち自由診療を行う医師の視点であり、私が常に心がけている「ドラッグ・リポジショニング(既存薬転用)」の考え方です。

医学論文を深掘りしていくと、実は私たちの身近にあるサプリメントや、すでに病院で使われている一般的な薬の中に、この「THBS2の壁」を崩すヒントが隠されていることが見えてきました。

本日は、標準治療の裏側で、私たちが「今すぐ」取り入れられるかもしれない戦略についてお話しします。


戦略1:黒幕「TGF-β」を抑える(サプリメント編)

そもそも、なぜがん細胞は「THBS2」という壁の材料を大量に作るのでしょうか?

その指令を出している黒幕(司令塔)の存在が分かっています。

それが、「TGF-β(トランスフォーミング増殖因子ベータ)」です。

TGF-βは、がん細胞の周りに線維(壁)を作らせ、免疫細胞を排除し、がんを守る強力なバリアを構築させる、非常に厄介な存在です。

つまり、「司令塔であるTGF-βを抑えれば、結果としてTHBS2の壁も作られなくなる」可能性があります。

これを助けてくれる可能性があるのが、以下の成分です。

1. クルクミン(ウコン)

カレーのスパイスでおなじみのクルクミンですが、単なる健康食品ではありません。実はがんの「腫瘍微小環境」を変える効果について、世界中で真剣に研究されています。

多くの論文において、クルクミンはTGF-βの働きをブロックし、THBS2の兄弟分である「THBS1」を抑制するというデータがあります。

THBS2に関しても、その産生を抑え、がんの周りの血管や線維の状態を改善し、薬を届きやすくする可能性が高いと考えられます。

ちなみに、クルクミンは大腸がん治療において、以下の報告があります。

生存期間の延長(FOLFOX療法での臨床データあり)*1

・薬剤耐性の解除(効かなくなった薬が再び効く可能性)*2

・副作用の軽減(特にイリノテカンの下痢や、オキサリプラチンの神経障害に対して保護的に働く可能性)*3

*クルクミンはそのままでは体にほとんど吸収されず、排出されてしまいます。「ナノ化」「フィトソーム化」「高吸収型」と明記されているものを選んでください。(通常のウコン粉末では治療レベルの血中濃度には達しません)

2. レスベラトロール

赤ワインに含まれるポリフェノールの一種です。これも強力な抗酸化作用に加え、「抗線維化作用(壁を作らせない作用)」が報告されています。

がん細胞がセメントを固めて壁を作るのを邪魔することで、免疫細胞が入りやすい「柔らかい環境」を作ってくれるかもしれません。


戦略2:既存薬の転用(ドラッグ・リポジショニング)

「サプリメントだけではパワー不足では?」と心配な方には、医師の処方が必要ですが、別の病気の薬としてすでに承認されている「既存薬」を使う手があります。

1. ロサルタン(高血圧の薬)

これは非常に面白い候補です。

普段は血圧を下げる薬として広く使われていますが、実は副作用(副次効果)として「TGF-βを強力に抑える」作用があることが分かっています。

実際、海外の研究では、すい臓がんなどの「線維化がひどい(壁が厚い)がん」に対して、ロサルタンを併用することで抗がん剤の届きを良くする、という臨床試験が行われています。*まだ有効な結果はでていません。

大腸がんの「THBS2の壁」に対しても、理論的には同様の効果が期待できる「隠れた名薬」と言えます。

2. トラニラスト(抗アレルギー薬)

元々は喘息や、ケロイド(皮膚の盛り上がり)の治療薬です。

「ケロイドを治す」ということは、すなわち「余計な線維(壁)を作らせない」ということです。

この薬もTGF-βを阻害し、がんの周りのバリアを解除する効果が期待されています。


戦略3:「ゾンビ細胞」の除去(セノリシス)

最近注目されている「老化細胞(ゾンビ細胞)除去」も、実はここと繋がってきます。

THBS2のような余計なタンパク質を垂れ流しているのは、がん細胞そのものだけでなく、がんの周りに集まって洗脳された「老化してしまった線維芽細胞」であることが多いのです。

この老化した細胞(ゾンビ)を掃除してしまえば、壁の材料も供給されなくなります。

  • ケルセチン(玉ねぎなどの成分)
  • フィセチン(イチゴなどの成分)

これらは「セノリティクス(老化細胞除去薬)」として注目されており、がんの微小環境をきれいにする(若返らせる)ことで、免疫細胞が本来の力を発揮できる環境を取り戻す助けになるかもしれません。


まとめ:多角的に「壁」を攻める

現時点での、THBS2対策(=免疫細胞をがん内部に届けるための対策)をまとめます。

分類成分・薬剤名期待できるメカニズム
サプリクルクミン黒幕(TGF-β)の抑制、バリア解除の補助
サプリレスベラトロール抗線維化作用(壁を作らせない)
サプリフィセチン/ケルセチン壁を作る「ゾンビ細胞」の除去
医薬品ロサルタンTGF-β抑制によるバリア解除(本来は降圧剤)
医薬品トラニラスト線維化の抑制(本来は抗アレルギー剤)

もちろん、これらは「飲めばがんが消える」という魔法の薬ではありませんし、単独でがんを治すものでもありません。ヒトでのデータもまだ出ていないのがほとんどです。

しかし、標準治療(抗がん剤や免疫チェックポイント阻害薬)を行っている方が、これらの対策を組み合わせることで、「薬が効きやすい環境」を自ら作り出すことは十分に可能です。

いわば、標準治療の効果を「底上げ」するための援護射撃です。

京都大学の発見は「THBS2が犯人だ」と教えてくれました。

それをどう攻略するか。新薬を待つだけでなく、今ある武器をどう組み合わせるか。

それが、銀座みやこクリニックが提案する「がんとの戦い方」です。

当院では、標準治療との相性を考えながら、こうしたサプリメントの選び方や、既存薬の処方(自由診療)についても相談に乗っています。

「何かできることはないか」と模索している方は、ぜひ一度ご相談ください。

「がんになっても、あきらめない」

一緒に、その壁を打ち破っていきましょう。


Howells LM, et al. “Curcumin combined with FOLFOX chemotherapy is safe and tolerable in patients with metastatic colorectal cancer in a randomized phase IIa trial.” The Journal of Nutrition, 2019.

Endo M, Kanai M, et al. “Curcumin β-D-glucuronide exhibits anti-tumor effects on oxaliplatin-resistant colon cancer with less toxicity in vivo.” Cancer Science, 2020.

“Curcumin reverses irinotecan-acquired resistance in DLD1 colorectal cancer cells: Insights from whole transcriptomic data.” Biochemical Pharmacology, 2025.

濱元誠栄院長

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この記事を書いた人

1976年宮古島市生まれ。宮古島市立久松中学から鹿児島県のラ・サール高校に進学。鹿児島大学医学部を経て沖縄県立中部病院で研修医として勤務。杏林大学で外科の最先端医療を学んだのち再び沖縄県立中部病院、沖縄県立宮古病院、宮古徳洲会病院に外科医として勤務。2011年9月に上京しRDクリニックで再生医療に従事した後に、18年7月にがん遺伝子治療を専門とする銀座みやこクリニックを開院。

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