咽頭がん・喉頭がんの原因と初期症状チェック!最新の治療法とは?
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こんにちは。銀座みやこクリニック院長の濱元です。
本日は「長引く風邪症状、それって喉のがんかも」をテーマにお話させて頂きます。
咽頭(いんとう)と喉頭(こうとう)
喉のがんというとあまりピンとこないかもしれませんが、咽頭(いんとう)がんや喉頭(こうとう)がんという言い方だと知っている人がいるかもしれません。
有名人で咽頭がんや喉頭がんの人は結構いて、咽頭がんだと先日直腸がんで亡くなった音楽家の坂本龍一さん、音楽プロデューサーのつんくさん、俳優の村野武範さん、大相撲の輪島さん、喉頭がんだと歌手の忌野清志郎さん、落語家の立川談志さん、落語家の林家木久扇さんなどが公表していますので、それで耳にしたことがあるのかもしれません。
皆さんは「喉を指さしてみて」と言われたらどこを指すでしょうか?口を開けて、口蓋垂(所謂のどちんこ)や扁桃腺があるあたりを指す人もいるでしょうし、首の喉仏あたりを指す人もいると思います。
これはどちらも正解です。喉は「空気」と「食べ物」の通り道のことを指し、食べ物の通り道を咽頭、空気の通り道を喉頭と言います。口の奥に見えるのが咽頭で、喉仏の裏にあるのが喉頭ですね。
もっと厳密に言うと、鼻の奥から食道の入り口までを咽頭、食べ物が気管に入らないように蓋をする喉頭蓋から声帯、気管までを喉頭と言います。
咽頭、喉頭どちらにもがんができるのですが、この二つは同じ喉のがんでも原因や症状が異なります。
咽頭がんの原因と症状
咽頭がんは場所によって上中下の3つに分けられます。口を大きく開けて奥に見えるのが中咽頭で、その上の方で鼻の奥からつながる部分が上咽頭、下の方で食道につながる部分を下咽頭と言います。
上咽頭がんは非常に珍しいがんで、日本で毎年750人ほどしか診断されません。60代以上の男性で多く見られますが、10代から30代という若い世代でも見られます。
上咽頭がんの多くは風邪ウイルスの一種であるEBウイルスの感染が原因です。日本人の約8割は幼少期にこのウイルスに感染しますが、ほとんどが無症状か軽い風邪症状で終わります。その後、治ったように見えても細胞内に潜んで悪さをします。
上咽頭がんは初期には全く症状がありません。上咽頭は鼻の穴の奥の方にあるので進行すると鼻詰まりや鼻血などの症状がでます。
またそこには「耳管」と言って耳とつながる管があるので、閉塞すると耳が詰まった感じや中耳炎、難聴などの症状が見られます。すぐ近くに脳神経もあるので、脳へ進展した場合には頭痛やモノが見えにくい、二重に見えるなどの視覚障害が見られることがあります。
それらの症状が全くなくて、首のリンパ節転移によるしこりだけが見られることもあります。
中咽頭がんは以前はタバコや飲酒などによる刺激が発症の原因だと考えられていました。しかし最近では子宮頚がんの原因としても知られているヒトパピローマウイルス(HPV)による中咽頭がんが増えています。
海外では女性のHPVワクチン接種が進んでいるため女性の中咽頭がんが減り、ワクチンを接種していない男性では増え続けています。日本はHPVワクチン接種が進んでいないため、男女とも増え続けています。
中咽頭がんは物を飲み込むときの違和感や痛み、扁桃腺の腫れなど、いわゆる喉の痛みや腫れと言った症状が出るので比較的早く発見されやすいです。また胃カメラをする際に偶然見つかることもあります。
下咽頭がんはすぐ下の食道がんと性質が似ていて、その原因も長年のタバコとアルコールによる刺激という、食道がんと全く同じ性質のものです。
下咽頭がんになるのはほとんどが男性で60代から80代という高齢者で見られます。
症状は中咽頭がんに似ていますが、空気の通り道である喉頭がすぐ隣にあるので、血が混じった痰や、声のかすれや息のしにくさなどが見られることがあります。
喉頭がんの原因と症状
次に喉頭がんの原因や症状についてお話しします。
喉頭がんの原因はタバコです。喉頭がんになった人の喫煙率は97%とも言われています。タバコに含まれる有害物質が空気の通り道である喉頭を長年刺激することでがんになりやすくなります。
また、そこに飲酒が加わると、よりリスクが高まるとされています。早い段階から声のかすれが見られるので早期発見できることも多いです。
進行すると喉の違和感や息がしにくい、血の混じった痰などの症状が出てきます。
喉のがん(咽頭がんと喉頭がん)の症状まとめ
★喉の腫れや痛み
★声がかすれる
★飲み込む時の違和感や痛み
★息がしにくい
★血液の混じった痰首のしこり
これらは風邪でも見られる症状ですが、1か月以上続き、また全く改善しないという場合には喉のがんを疑って耳鼻科で検査を受けましょう。喉の奥を見る特殊なカメラで診断をすることができます。
喉のがんとは言っても上咽頭がんは鼻や脳に近いので、鼻血や視野傷害などの症状が見られることがあります。
喉のがんの治療について
喉のがんの治療は放射線治療がよく効くことが多いので、早期だと放射線治療だけで治ってしまうことがあります。早期の場合には口から入れたカメラで切除してしまうこともあります。
進行している場合には放射線治治療に抗がん剤を加えた放射線化学療法を行うか、手術で喉を切除するかの選択になります。
直腸がんでお亡くなりになりましたが、坂本龍一さんは放射線化学療法で中咽頭がんが完治しました。一方、つんくさんは手術を選択し、こちらも完治しました。
喉のがんの手術はかなり大掛かりな手術で、咽頭と喉頭を丸ごと取ってしまう手術となります。そうなると鼻や口から呼吸ができなくなり、穴を首に開け、そこから呼吸することになります。
また、声を出す機能が失われてしまうため、機械を使って声を出したり食道を振るわせることで声を出すという方法でコミュニケーションを取ります。
また、喉のがんの最新治療としてBNCTと呼ばれる中性子線を用いた治療や光免疫療法があります。
BNCTは正常細胞を傷付けずにがん細胞のみを狙い撃ちにできる、体に負担が少ない夢のような治療です。ただ、まだ行える施設が福島と大阪の2か所しかありません。
次に光免疫療法は日本人研究者がアメリカで開発した治療法で、こちらもピンポイントでがんだけを狙い撃ちすることができ、体への負担が少ない治療です。
光免疫療法を行える施設は徐々に増えています。この2つの治療は次世代の治療と呼ばれ注目されていますが、どの施設でも行える治療ではないというのが難点です。
喉は「食べる」「呼吸する」「話す」といった、生きていくための重要な機能を司る場所です。喉のがんは早期発見ができれば、これらの機能を残したまま治療することが可能です。
症状が出たら早めに耳鼻科を受診して早期発見に努めましょう。
進行してしまった場合は治療によって多くの機能を失う可能性がありますが、今後BNCTや光免疫療法などの治療法が進歩すれば機能を温存できるようになる可能性があります。
最後に強調しておきますが、喉のがんの原因の多くはタバコや大量飲酒です。タバコを吸わない、お酒を飲み過ぎないことが、喉のがんの予防につながります。
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