大腸がん死亡が急増!その原因と初期症状、検診検査の重要性とは
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こんにちは。銀座みやこクリニック院長の濱元です。
本日は「今、大腸がん死亡が増えている!」をテーマにお話させて頂きます。
大腸がんは早期発見が大事!
大腸がんと診断される人は年々増えていて、この40年で約7倍になり、毎年13万人が大腸がんと診断されています。
現在、男性で大腸がんと診断される人の数は前立腺がんに次いで2位となり、これは男性の11人にひとりが大腸がんになる計算となります。女性では乳がんに次いで2位となり、女性の14人にひとりが大腸がんになります。
また最近では若者の大腸がんが急増しており、大腸がんの2-4%が40歳未満、1%弱が30歳未満と、若いから大丈夫というがんではなくなってきています。
診断される人が増えるのに伴い死亡者数も増え、がん全体の死亡者数の中で男性で3位、女性ではここ20年間ずっと1位となっています。
大腸がんは早期のステージ0やステージ1で発見すれば5年生存率は95%以上となっていて「治る病気」と言えます。
ステージ2でも88%、ステージ3で76%とまずまずの成績ですが、ステージ4になると一気に18%まで下がります。
大腸がんは何としてもステージ4になる前に見つけて治療しなければならないのです。
では大腸がんを早期発見するためにはどうすればよいか。まず頭に入れて置いて欲しいことは「大腸がんは早期のうちは全く症状がない」ということです。
進行して初めて見られる症状は以下が挙げられます。
- 血便
- 便秘と下痢を繰り返す
- 便が細くなる
- 残便感(便が残っている感じ)
- 貧血
- 腹痛
これらの症状が出てから見つかると、最低でも「ステージ2以上」と考えられます。
大腸がんの遠隔転移先として最も多いのが肝臓、次に肺ですが、肝臓や肺に転移しても通常は症状が出ないので、血便などの症状を無視しているうちに気付かないままステージ4になっていることも珍しくありません。
ということは、大腸がんを早期発見するには症状が出る前に見つけるしかないということです。
症状が出る前に見つける方法で最も行われているのが便潜血検査です。
検診や人間ドックで便をちょこちょこっとこすって提出したことがあると思います。あれが便潜血検査です。
大腸がん検診でも便潜血検査を行います。2日続けて検査して1回でも鮮血が認められたら陽性となります。
便が大腸の中を通っていく際に大腸がんの表面を傷つけて出血を起こします。(すり傷みたいなイメージです)。超微量の出血なので目には見えないのですが、検査ではその微量な出血を検出し大腸がんの有無を調べることができます。
ただ高性能すぎて痔からのわずかな出血や、便秘で便が硬い人の場合には肛門を傷つけた出血、生理中の人の生理血などもひっかけて陽性となることがあります。
つまり大腸がんからの出血ではない可能性も十分あります。実際、便潜血検査が陽性となった人で大腸がんが見つかる割合は1%ほどしかありません。
しかし大腸がんの約30%が便潜血検査で発見され、そのうちの70%がステージ1~2であることを考えると体に負担のない便潜血検査はぜひとも活用して欲しいと思います。
便潜血検査で陽性となった場合の次のステップは大腸内視鏡検査、いわゆる大腸カメラです。
大腸カメラではほとんどの大腸がんを見つけ診断することができますし、小さなポリープであればカメラで切除することもできます。
しかしながら、せっかく便潜血検査を受けても陽性になった人のうち約40%の人が大腸カメラを受けてないということが問題となっています。「苦しそう」「お尻を見られるのが恥ずかしい」「どこで受けたらいいか分からない」「時間がない」というのが受けない理由のようです。
麻酔をしてくれる病院であれば眠っている間に終わりますし、女医を含めスタッフ全員が女性というところもあります。近所で消化器内科という看板を掲げている病院があればだいたい大腸カメラができます。
大腸カメラは午前中から下剤をしっかり飲まなければならないので1日がかりとなり時間が取られますが、一生がかかった検査なのでぜひとも受けて欲しいです。
あと大腸がんを超早期で見つけたいのであれば、便潜血検査を行わずに初めから大腸カメラを行うのが良いです。超早期の大腸がんであれば大腸カメラで切除できますし、がんになる前のポリープの段階で切除してしまえば大腸がんになることもありません。
個人的には毎年の便潜血検査と5年おきの大腸カメラの組み合わせをオススメします。
まずここまでのまとめです。
★大腸がんと診断される人、死亡者数は増えている
★大腸がんは早期発見すれば90%以上が治る
★大腸がんは進行してからでないと症状が出ないので、40歳を過ぎたら毎年便潜血検査を行い早期発見に努めましょう
★より早期で見つけたいのであれば、定期的に大腸カメラを受ける必要がある
コロナ禍でがん検診の受診率が低下
ここからが本題です。 新型コロナウイルス感染症が2類感染症から5類感染症に移行し、3年半に及んだコロナ禍が終了しました。新型コロナウイルス感染症が残した爪痕はいろいろありますが、そのうちの一つにがん検診の受診率低下があります。
初めての緊急事態宣言が出された2020年にはがん検診の受診者が例年より3割減って、2021年には1割減ったそうです。
内訳を見てみると症状が無い人の受診率が減少し、症状がある人は以前と変わらない受診率でした。ということは検診で発見される症状が出る前の早期がんが減ったということです。
大腸がんについて見てみると、年々増え続けている大腸がんと診断された人数が2020年に激減しています。これはがん検診や血便などの症状があっても受診を控えていた人が多く、大腸がんと診断された人が少なかったのだと推測されます。
アメリカの調査では便潜血検査を1年遅らせるごとに大腸がんの死亡率が1%上がるという報告がありました。また65歳以上に限定すると1年遅れるごとに死亡率が3%上がるとなっていました。
2020年に大腸がん検診を受けずに大腸がんの発見が1年遅れた人は、ステージ2で見つかる予定だった人がステージ3になっていたかもしれません。コロナ禍でさらにもう1年受診せず、2年間が空いてしまった人は、ステージ2がステージ4になって、もう根治が望めない状況になる可能性があります。
発見が遅れるとはそういうことなのです。
コロナ禍で1年間もしくは2年間大腸がん検診が遅れてしまった人は、今年中に大腸カメラを受けてください。そうすれば遅れを取り戻せる可能性があります。3年空いてしまったという人はすぐに大腸カメラを受けてください。
症状が出てからでも治らないことはないですが、遠隔転移のあるステージ4になってしまうと5年生存率が18%とかなり厳しい結果になってしまいます。
何度も言いますが大腸がんは早期で発見すれば9割以上が治る病気です。
まとめ
大腸がんについてのまとめです。
★大腸がんを早期で発見するためには40歳以上になったら毎年便潜血検査を行うか、もしくは5年に1回大腸カメラを受けてください
★コロナ禍で検査を受けない年があった人は今年は大腸カメラを受けてください。1年の検査の遅れが致命的になることがあります
★症状が無いからとか若いから大丈夫と考えないでください。30代、40代の大腸がんが増えています
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