放置厳禁!胆のうがんの初期症状や原因、ステージ別の治癒率、病状について
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こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
今回のテーマは「胆のうがんは早期発見がカギ!胆のうがんの意外な原因は?」です。
「胆のうがんのリスクと症状について」や「胆のうがんの治療法」についてお話していきます。
「胆のう」はどんな臓器?
胆のうは袋状の形をしており、肝臓の下側にコバンザメのように引っ付いています。みぞおちと右の脇腹を結んだ線の真ん中くらいにあります。
胆汁という消化液を、一時的にためておく袋の働きをします。食べ物を食べると、それに反応して胆のうが収縮し、貯めておいた胆汁を腸の中に排出します。
胆汁は腸の中で食べ物と混じって脂肪分の消化吸収を助ける働きをします。この時に胆汁が通る管を胆管と言い、胆のうと胆管にできるがんを合わせて胆道がんと言うことがあります。
動物の胆のうは昔から民間療法薬として使われてきた歴史があります。
熊の胆(い)もしくは熊胆(ゆうたん)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。熊の胆のうを乾燥さたものを胃薬として使っていました。現在、熊は捕れないので、牛の胆のうを代用し、ドラッグストアでも購入することができます。他にも、すっぽんやまむしの胆のうも販売されています。
胆のうがんのリスク因子について
胆のうがんのリスクで最も有名なのが、胆のうの中にできる石、胆石です。胆のうがん患者の半数以上は胆石を持っています。
胆石はコレステロール値が高い人に多く、代謝しきれなかった過剰なコレステロールが胆のう内にたまり結晶化して胆石となります。胆石が胆のうの壁を傷つけることで胆のうがんになるのではないかと考えられています。
次に、胆のうポリープも胆のうがんのリスクとなります。胆のうポリープはカリフラワー状をしており、基本的には良性で数mmほどの大きさしかありません。
しかし10mmを超えるようなポリープは悪性化している可能性があります。20mmの大きさのポリープだと80%が悪性、胆のうがんだとされています。
胆のう腺筋症のある人も胆のうがんのリスクが上がります。胆のう腺筋症自体は胆のうの壁が分厚くなる良性の病気ですが、胆のうがん患者の約10%で胆のう腺筋症が見られるので関連が疑われています。
膵・胆管合流異常症という生まれつきの病気の人は、3割の確率で胆のうがんを合併します。通常、腸の中に流れるはずの胆汁が逆流して胆のうの壁に炎症を起こすため、胆のう癌になりやすいと考えられています。
他にも肥満、糖尿病、喫煙、アルコールなどがリスクを上げることが分かっています。
肥満の人の4人に1人は胆石を持っているというくらい胆石保有率が高いことに加え、脂肪細胞から分泌される物質が胆のうがんの成長を促す可能性が言われています。
糖尿病患者も胆のうがんのリスクが高くなります。中国の研究で、糖尿病患者が胆石を持っているとリスクが30倍になるという報告があり、特に胆石持ちでリスクが高くなります。
ある化学物質も胆のうがんのリスクになります。30年以上前、新潟県の平野部に住む人たちの間で胆のうがんが多発していました。
新潟県を流れる河川と飲料水を調べてみると、ジフェニルエーテルという農薬に含まれる化学物質が多量に含まれており、それが胆のうがんの原因だったと考えられています。
ジフェニルエーテルを含んだ農薬を生産中止したところ、新潟県の胆のうがん患者数はどんどん減少しました。
また意外なことに、赤唐辛子の成分アフラトキシンも胆のうがんのリスクになります。
世界の胆のうがんの発生率ランキングを見てみると、一位チリ、二位ボリビア、三位韓国と赤唐辛子をよく使用する国が上位になっています。
胆のうがんのリスクをまとめます。
★胆石 胆のうがん患者の半数以上で見られます
★胆のうポリープ 10mm以上はがんの可能性があります
★胆のう腺筋症
★膵・胆管合流症
★農薬などに含まれる化学物質
★赤唐辛子
★その他(肥満、糖尿病、喫煙、アルコールなど)
胆のうがんの初期症状について
胆のうがんは早期にはまず症状は見られません。進行してくると、ほとんどの症例で腹痛が見られるようになります。
痛みの感じは、刺すような痛みの時もありますし、鈍い痛みや重たい感じの時もあります。痛む個所は、みぞおちの右側、肋骨のすぐ下あたりから脇腹にかけてです。胆石が悪さをする時もこの辺りが痛くなります。
胆のうがんが大きくなると、その辺りで硬いしこりとなって触れることがあります。また、吐き気や嘔吐、食欲低下、体重減少なども見られますが、これらは他のがんでもよく見られる症状です。
胆のうがんによって胆管が塞がれると、行き場がなくなった胆汁が血液の中に入り、体が黄色くなる黄疸(おうだん)が見られます。黄疸は全身の皮膚が黄色くなったり、白目のところが黄色くなります。
黄疸に伴って、次のような症状も起こります。
①白色便ー便が茶や黄色をしているのは、胆汁が便に色を付けているためです。胆管が塞がれると、便に色が付かず、白っぽい便となります。
②濃い色の尿ー血液中の過剰な胆汁が尿として排出されるので、濃い色の尿となります。
③全身のかゆみー血液の中に入った胆汁は、全身の皮膚のかゆみを引き起こします。
胆のうがんの症状をまとめます。
★腹痛 みぞおちの右側から右わき腹にかけて痛みます
★右上腹部のしこり 右の肋骨の一番下あたりで硬いしこりが触れます
★吐気・嘔吐
★食欲低下・体重減少
★黄疸とそれに伴う症状 白色便、濃い色の尿、全身のかゆみなど
胆のうがんの検査や手術について
胆のうがんを見つける方法は腹部エコー検査が最も簡単で確実です。無症状の段階で人間ドックや健康診断のエコー検査で見つかることもあります。
また、エコー検査では、胆のうがんのリスクとなる胆石や胆のうポリープ、胆のう腺筋症も診断できます。もしこれらのリスクが一つでも見つかったら、必ず毎年エコー検査を受けてください。
そして、胆のうがんを疑うような怪しい病変が出てきたら手術を行います。早期で見つかった場合には腹腔鏡で胆のうを切除するだけで終了し、5年生存率もほぼ100%、つまり完治となります。
また胆石で手術を行った時に、エコー検査でも分からないレベルのごく早期の胆のうがんが見つかることも少なくありません。
かつて「胆のうを予め取っておいたら、胆のうがんにはならないの?」という質問をされたことがありますが、胆石症などで胆のうを切除してしまったら、その後胆のうがんになることはありません。ちなみに胆のうが無くなると脂肪の消化が悪くなり下痢気味になることはありますが、薬でコントロール可能です。
症状が出てから見つかった胆のうがんは、ステージ3/4のことが多く、その場合は腹腔鏡手術ではなく、開腹手術となります。(肝臓や周りの臓器まで切除することになり、大手術となります。)
またステージ3以上だと、5年生存率が20%以下とかなり厳しい予後になってしまうので、胆のうがんは何としてでも早期で発見したいですね。
最後に、胆のうがん自体は55歳以上の女性に多いがんですが、そのリスクとなる胆石や胆のうポリープは40歳くらいから増えてきます。40歳を過ぎたら一度は腹部エコー検査を行い、もしリスクとなるような病気が見つかったら、必ず1年に1回は検査するようにしてください。
そして少しでも怪しい兆候が見つかったらすぐに手術する。胆のうがんは早期発見で治る病気です。
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