乳がんのしこり痛み、悪性良性の違い画像と見分け方!ステージ4でも諦めない最新治療
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こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
今回のテーマは「乳がんはステージ4でも治るのか?乳がんの最新治療とは」です。
「乳がんの症状とステージ」「乳がんステージ4の治療成績」「乳がんの最新治療」についてお話していきます。
乳がんになる人は増えている
最近、乳がんになる人は非常に増えていて、日本人女性の9人にひとりが乳がんになります。私の生まれた約50年前は50人にひとり、私が医者になった約20年前は20人にひとりの割合でした。昔はクラスにひとりいるかいないかだったのが、今ではクラスメートに数人乳がんになる人がいる時代になりました。
芸能人でも乳がんであることを公表する人が増えていて、山田邦子さん、北斗晶さん、南果歩さん、麻木久仁子さん、矢方美紀さん、残念ながらお亡くなりになった小林麻央さんなどが乳がんを公表されています。
乳がんの「しこり」の特徴、見分け方、セルフチェックの方法
乳がんで最も多い症状はしこりです。乳がん学会の調査では55%の人が自己触診でしこりを触れ、検査で乳がんを見つけたそうです。
一般の人だと2-3cm大で、熟練した乳腺科医だと1cmで見つけることができると言われています。ただ、一般の人でも普段からよく自己触診していれば乳腺科医と同じく1cm大で見つけることができると言われているので定期的に触診をする習慣を付けましょう。
また、検診会場などで触診体験を行っていることがあるので一度は体験してみてください。
乳がんのしこりの特徴についてお話します。乳がんによるしこりの特徴は以下の3つです。
- ゴツゴツしていて非常に硬い
- 触ってもあまり動かない
- しこりに伴う痛みが無い
がんの表面がデコボコしているので、触った感じがゴツゴツしている上に、非常に硬いです。また、周辺の組織にくっついているので基本的には乳がんのしこりは動きません。
意外に思うかもしれませんが、乳がんは通常痛みを伴いません。炎症性乳がんという特殊なタイプの乳がんや、皮膚の神経に近い場合などは痛むことがあります。
乳がんができる場所は、乳首より上が7割で、その中でも特に脇に近いところで多く見られます(画像参照↓)。
その場所は特に注意して触診してください。
乳がんを疑ったが「良性のしこり」であるケース
自己触診でしこりを触れたら皆さん病院で検査をする訳ですが、その中の8割くらいは良性のしこりと診断されます。良性のしこりを作る病気について解説します。
①乳腺症
乳腺症は30代から40代の女性に多いです。生理不順やストレスなどで女性ホルモンが乱れることで起こると考えられています。乳腺症では乳腺がところどころ硬くなってゴツゴツした感じになり、痛みを伴います。乳首から透明~白っぽい分泌液が出てくることがあります。
乳腺症ではしこりと痛みがあるので、乳がんを心配されて受診される方が非常に多いです。昔は「乳腺症から乳がんになる」と言われていましたが、現在はその可能性はないと考えられています。
②線維腺腫
線維腺腫は10代から20代の女性に多く見られます。コロコロとよく動く硬いしこりを触れます。1個だけの場合がほとんどですが、複数個見られることもあります。
線維腺腫は正常な乳腺組織が異常増殖してできたしこりで、だいたい2-3cmの大きさになると増殖が止まり、40代以降自然と消えていきます。
③葉状腫瘍
好発年齢が線維腺腫より高めで35歳から55歳でよく見られます。触るとよく動くので、小さいうちは線維腺腫と見分けが付きにくいです。
線維腺腫が3cmを超えないのに対して葉状腫瘍は3cm以上の大きさになります。はじめは小さかったのに急速に大きくなって、数か月で10cmを超えることもあります。
葉状腫瘍は基本的には良性の腫瘍ですが、まれにがん化して肺などに転移することがあります。
④のう胞
のう胞は乳腺の管、乳管が詰まって水風船のようになったものです。35歳から50歳で多く見られます。大きさは数ミリから数cmと様々で複数個見られることがほとんどです。
小さいうちはしこりとしては触れないので、エコーやマンモグラフィでは偶然見つかります。大きくなってくると柔らかいしこりとして触れるようになります。
のう胞自体は悪性化することはなく、放っておいても閉経後に自然と消失していきます。ただ、のう胞内に腫瘍ができる場合があり、乳がんとなることあるので注意が必要です。
⑤乳腺炎
産後に母乳が乳腺に溜まって乳腺炎になるという話は聞いたことがあるかもしれません。それに細菌感染が加わって急性化膿性乳腺炎という状態になると、膿のたまりができて、しこりとして触れるようになります。
急性化膿性乳腺炎では、他にも乳房の痛み、赤み、熱感、高熱が見られます。同じような症状を起こし、授乳と関係なく細菌感染が起こる慢性乳腺炎というのがあります。急性化膿性乳腺炎よりも発症がゆっくりで症状が軽いので、乳がんと間違われやすいです。
⑥乳腺以外のしこり
粉瘤などの皮下腫瘍や乳腺内の脂肪の塊を、しこりとして触れて外来を受診されることもあります。乳がんと良性のしこりの特徴の違いを知っておけば、自身である程度見分けることができます。
ただ、やはり完全に見分けることは難しいので、しこりが気になる方は病院を受診してください。
乳がんで「しこり」以外に見られる症状
しこり以外に、乳がんで見られる症状についてお話しします。
①乳頭分泌物
乳腺に病気があると妊娠中や授乳中でもないのに乳頭から分泌物が出ることがあります。分泌物がサラサラした透明の液体や、黄色っぽいミルクのような液体であれば問題ないですが、血液が混じると乳がんの可能性があります。
乳頭分泌物が出る病気は乳がん以外にも乳腺症や乳管内乳頭腫などがあります。
②乳頭の陥没
乳がんが乳頭を引っ張ることで乳頭が陥没してくることがあります。
③乳房のくぼみ
②と同様に、乳がんが皮膚を引っ張ることで皮膚に凹みができることがあります。えくぼ症状とも言われます。
④乳頭や乳輪のただれ
乳房パジェット病という特殊な乳がんで乳房や乳頭が湿疹のようにただれることがあります。
⑤乳房の皮膚の発赤
乳房の皮膚の発赤を起こす原因として、乳がんが皮膚に浸潤して赤くなるものと、炎症性乳がんという特殊な乳がんがあります。炎症性乳がんとは、明らかなしこりがないのに、乳房の皮膚が赤く熱を持ち、急激に広がっていく病気です。
乳がんの症状のまとめです。
- しこり
- 乳頭分泌物(血性だと乳がんの可能性があります)
- 乳頭の陥没
- 皮膚のくぼみ
- 乳頭や乳輪の発赤
- 乳房の発赤(急速に広がる場合はすぐに病院を受診してください)
これらの症状が一つでもあれば、病院を受診してください。
乳がんのステージ分類とそれぞれの治療方針
乳がんにも他のがんと同じくステージ0から4まで分類があります。
ステージ0はがんが乳管の中にしか存在しない状態です。浸潤(がんが周りに広がっていくこと)がないので、非浸潤性乳管がん(DCIS)と呼ばれます。
がんが塊を作らないので、しこりとしては触れず、主に乳がん検診で見つかります。
がんが乳管の外に浸潤して塊を作ると、しこりとして触れるようになります。しこりの大きさが2cm以下でリンパ節転移がないのがステージ1です。ステージ1の大きさの乳がんは自己触診でしこりを触れることは少なく、主に乳がん検診で見つかります。
ステージ0やステージ1の場合は、リンパ節や他の臓器に転移することはほぼないので、手術で切除すれば完治となります。
ステージ2とステージ3は、ステージ1よりもがんが大きく、リンパ節転移がある状態です。ステージ2と3の乳がんも手術で完治を目指します。がんが大きかったりリンパ節転移が多かったりすると手術が困難になるため、事前に抗がん剤治療を行ってがんを小さくしてから手術します。また、ステージ0と1と違って、完全に切除しても再発するリスクがあるため、術後にホルモン剤や抗がん剤を使用します。
がんの大きさに関わらず、他の臓器に転移があればステージ4となります。ステージ別の5年生存率は、ステージ0が100%、ステージ1 99.8%、ステージ2 95.5%、ステージ3 80.7%とかなり高く、乳がんは治りやすいがんだと言えます。
しかし、遠隔転移のあるステージ4では38.7%と極端に下がります。
ただ、ステージ4の乳がんでもホルモン治療に反応するタイプの乳がんは予後が良く、ある病院のデータでは5年生存率が60~80%あります。
また、抗がん剤などの薬物治療がすごく効いて、がんが完全に無くなってしまう人もいるのでステージ4だからと諦める必要はありません。
乳がんの最新治療について
ステージ0の乳がんはこれまでは全例手術が行われていました。しかし、ステージ0でかつ進行の遅いタイプは手術せずにホルモン治療だけで治せるのではないかと考えられており、現在臨床試験が行われています。
また、ステージ1の乳がんに対してラジオ波焼灼療法や重粒子線/陽子線治療など手術以外の方法も試みられています。
ラジオ波焼灼療法は電流が流れる針を乳がんに刺し、熱を発生させて乳がんを焼く治療法です。2023年の12月に保険適応となりました。乳房を切除せずに完治を目指せるとして、注目されています。
また、重粒子線や陽子線治療はまだ臨床試験の段階ですが、こちらも乳房を切除する必要はありません。
ステージ0と1に関しては、このように「切らない治療」が進んでいます。
そして、ステージ4の薬物治療にも新薬が登場しました。HER2というタンパクに反応するタイプの乳がんに対して、これまでは2時間前後かけてハーセプチンとパージェタという点滴治療を行っていました。この2剤が一つになり、しかも皮下注射できる薬剤が2023年11月に発売となりました。
投与時間は何とたったの5分!点滴を取る必要もないし、皮下からゆっくり吸収されるため副作用も点滴より軽いようです。すごい時代になりました。
乳がんの治療について以下にまとめます。
乳がんの治療法は、ステージ4以外は乳房とリンパ節を切除する手術が行われます。ステージ0と1の乳がんでは、条件にもよりますが切らない治療が進んできています。また、ステージ4だからと言って諦める必要は無く、がんのタイプによっては長期生存が可能なことがありますし、中にはがんが完全に消失することがあります。
乳がんついてのよくある質問
- マンモグラフィで石灰化があると言われました。がんでしょうか?
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がんとは全く関係が無い良性の石灰化と、がんによる悪性の石灰化があります。エコーなどでよく調べてもらってください。
- エコーで乳管の拡張があると言われました。がんと関係がありますか?
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乳管が拡張する原因はいくつかありますが、ほとんどががんと無関係なものです。がんで乳管が拡張する場合には、しこりや石灰化など他の所見を伴うので、ただ乳管拡張だけを指摘されたのであれば問題ないと思います。
- エコーでのう胞があると言われて10年くらい経ちます。もうがん化はしないですか?
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のう胞だけであればがん化することはありません。のう胞の中に腫瘍がある場合には、がん化する可能性があります。
- 服を脱がなくてもできる乳がん検診というのがありました。どのような検査でしょうか?
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DWIBS(ドゥイブス)法といって、MRIを使って乳がんを調べる方法です。服を着たまま行えますし、痛くないし、被ばくの心配もありません。ただ、行える施設は少ないです。
- 乳がんの治療で、トモセラピーはいかがでしょう?
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トモセラピーのような通常の放射線治療は、乳がんに対して集中して照射するのが難しいので向いていません。重粒子線治療や陽子線治療なら可能ですが、まだ保険適応ではありません。
- 乳がんの凍結療法って、どんなのですか?
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乳がんに針を刺し、その部分をマイナス170℃にしてがんを凍らせて死滅させる治療法です。一部の医療機関で行われています。保険は効きません。
- 乳がんのステージ4だと、絶対に抗がん剤をしなきゃダメですか?
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ホルモン陽性乳がんの場合には、ホルモン療法と分子標的薬の飲み薬による治療が行われることがあります。
- がんの顔つきが悪いと言われました。どういった意味でしょうか?
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がんの悪性度が高いことを指し、転移しやすかったり術後に再発しやすかったりします。
- ステージいくつで見つかる患者さんが多いですか?私はステージ2でした。
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ステージ1が最も多く、だいたい4割くらいです。ステージ2は3割くらいです。
- 腫瘍マーカーで乳がんが分かりますか?
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早期の乳がんで腫瘍マーカーが高くなることはまずありません。進行しても高くならないこともありますので、腫瘍マーカーだけでは判断が付きません。
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