子宮頸がん・子宮体がん最新治療2024-2025 / 子宮全摘 / 薬物療法 /免疫チェックポイント阻害薬など
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こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
今回は子宮頸がん・子宮体がん最新治療2024-2025というテーマでお話します。
子宮がんの患者数
子宮がんのり患率の推移を見たグラフです。
子宮頸がんは検診の始まった1982年あたりをピークに減少していましたが、2000年代より上昇しています。
一方、子宮体がんはずっと右肩上がりです。
頸がんと体がんでは好発年齢が異なります。
頸がんは30代40代でピークを迎えますが、体がんは40代から増え始め50代60代でピークを迎えます。
上皮内がんも含めたグラフです。頸がんも昔は50歳以上でピークが来ていたのが、今では25-44歳という若い世代にピークが移っています。
出産、子育てする世代に多いため、マザーキラーとも呼ばれています。
子宮体がんの特徴
子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)感染が原因であるのに対して、子宮体がんは女性ホルモンであるエストロゲンが原因であることが多いです。
エストロゲンの分泌量が多いと子宮内膜が厚くなります。
子宮内膜が異常に厚くなる子宮内膜異型増殖症から子宮体がんが起こると考えられています。
エストロゲンが関与しない子宮体がんも20%ほどに見られます。
エストロゲンが関与しない体がんは漿液性がんや明細胞がんといったまれな組織型が多く見られます。
また、増殖が速く、抗がん剤が効きにくいため、予後は悪いです。
子宮体がんは早期から症状が出やすいです。
中でも不正出血は、90%以上の割合で見られます。
出血ではなく、古い血液が少量の茶褐色のおりものとして出てくることもあります。
20代まではホルモンが安定せずに生理不順が見られることがありますが、30歳以上で生理不順が見られた場合は注意が必要です。
閉経後に不正出血が見られた場合は、まずは子宮体がんを疑います。
九州大学病院のデータでは体がんの約8割がステージ1で見つかっています。
また右のグラフのピンク色、自覚症状で発見された割合も高く、初期から症状が出やすく発見につながりやすいことが分かります。
子宮頸がんの特徴
HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染すると、異形成という段階を経て子宮頸がんになります。
ただ、感染しても自己免疫でウイルスが排除され、ほとんどが自然治癒します。
HPV感染で頸がんまで進行するのは0.1%ほどと言われています。
HPV感染を予防するワクチンを接種することで、頸がんを80-90%防ぐことができます。
また、子宮頸がん検診も行うことで、さらに予防することができます。
HPVワクチンは現在、2価、4価、9価の3種類のワクチンがあります。
9価ワクチンのシルガードで、頸がんの原因となるHPVの9割近くをカバーできます。
子宮頸がんは初期には無症状です。
進行してくると、不正出血や性交時の出血、おりものの異常など、子宮体がんに似た症状が現れます。
子宮体がん、子宮頸がんのいずれも、進行してくると様々な症状が出てきます。
膀胱は子宮の隣にあるため、子宮がんが進行すると頻尿や血尿が見られます。
また、下腹部痛や骨盤、腰の痛みなども見られます。
リンパ節転移やリンパの流れが悪くなると、鼠径部の痛みや下肢の浮腫みなども見られます。
体部側の円柱上皮から発生する腺がんと膣側の扁平上皮から発生する扁平上皮がんの2種類があります。
腺がんは奥の方で発生するため、頸がん検診では見つけられないこともあります。
一般的に、扁平上皮がんの方が放射線治療や抗がん剤治療がよく効きます。
子宮頸がんは子宮頸部をブラシで擦って細胞を採取するのに対して、子宮体がんは子宮内をブラシなどで擦って採取します。
子宮頸がんの検査は痛みを感じることはほぼありませんが、体がんの検査では時に痛みを感じることがあります。
今までは20歳以上で2年に1回子宮頸部細胞診を行っていました。
新しい指針では、30~60歳の場合、細胞診は行わずHPV単独検診を行う検査法が承認されました。
どちらの検査法にするかは、市町村によって異なります。
子宮頸がんと子宮体がんそれぞれのリスクと特徴についてまとめた図です。
子宮体がんステージ別治療法
子宮体がんのステージ分類はこのようになっています。
ステージ1、2は子宮内部にがんがとどまっている状態で早期がんと言われます。
ステージ3以上で子宮外へ進展し、進行がんとなります。
ステージ3以上になると、子宮外での症状が出てくるようになります。
ステージ別の5年生存率です。
子宮内にとどまっているステージ1、2では、高い5年生存率が見られます。
この段階で発見すれば、高い確率で治ります。
ステージ別の治療フローを示した図です。
左のガイドラインの図は複雑なので、右の簡潔にまとめた図で覚えて欲しいです。
骨盤内のリンパ節転移が切除できるステージ3の一部までは手術で根治を目指します。
術後、再発リスクに応じて追加治療が行われます。
子宮体がんの再発リスクの基準を示した図です。
類内膜がんのグレード1、2でかつステージ1Aの場合のみ青の低リスクとなります。
漿液性がんや明細胞がんの場合には、ほぼ赤の高リスクと判定されます。
中リスクと高リスクでは術後に抗がん剤治療が行われます。
術後抗がん剤はAP療法もしくはTC療法が行われます。
最近では、副作用が少ないTC療法が行われることが多くなっています。
dMMR、ミスマッチ修復機構欠損が見られた場合、術後の化学療法に免疫チェックポイント阻害薬キイトルーダを併用することで、生存率が向上するという臨床試験がありました。
今後の結果次第では標準治療として承認される可能性があります。
ミスマッチ修復機構欠損については、ぜひ銀座みやこクリニックのアメーバブログをご覧ください。
日本ではほとんど行われませんが、海外では術後の再発予防に放射線治療が選択されます。
外からの外部照射と子宮内に器具を挿入して照射する腔内照射を合わせて行います。
ステージ4の場合には薬物療法が行われます。
一次治療のイミフィンジ、二次治療のキイトルーダと、ここ最近で数十年ぶりに新薬が登場しました。
他の免疫チェックポイント阻害薬も今後一次治療で承認される可能性があります。
2024年10月に一次治療で初めて免疫チェックポイント阻害薬が承認されました。
これまでの生存期間を大幅に延ばす新しい標準治療として期待されています。
子宮頸がんステージ別治療法
子宮頸がんのステージ分類はこのようになっています。
ステージ0は上皮内、ステージ1は子宮にがんがとどまっている状態です。
ステージ2以上は子宮外に広がり、ステージ4は膀胱や直腸への深い浸潤もしくは遠隔転移がある状態です。
ステージ別の5年生存率です。
子宮にがんがとどまっているステージ1の生存率は良いのですが、ステージ2以降は低下し、ステージ4では極端に下がります。
このグラフには載っていませんが、上皮内がんのステージ0だと5年生存率は100%です。
ステージ別の治療法を示した図です。
高度異形成や上皮内がんが疑われる場合には円錐切除を行い、診断やがんの広がりを調べます。
子宮、膣の一部にとどまるステージ2Aまでは手術治療が基本です。
手術で取り切れる範囲を超えた場合には化学放射線療法や薬物療法が行われます。
子宮頸部円錐切除の切除範囲を示した図です。
子宮は温存するので妊娠・出産は可能ですが、子宮頚管が短くなってしまうため、早産のリスクが高まります。
一部の高度異形成や中等度異形成が長く続く場合、高リスク型HPV感染などの場合には、自然消失しにくいため、レーザーで子宮頸部の病変を焼いてしまう蒸散術が行われることがあります。
この場合は早産のリスクはありません。
円錐切除で断端が陽性だった場合や、ステージ1以上では子宮全摘術が行われます。
上皮内がんやステージ1の一部では基本的に子宮のみを切除する単純子宮全摘術が選択されます。
その他は広汎子宮全摘術が基本ですが、膀胱の神経を切除して排尿障害が起きたり、下肢のリンパ浮腫が起きたりするので、切除範囲の狭い準広汎子宮全摘術が行われることもあります。
妊娠・出産を希望される場合には、子宮頸部と基靱帯を切除する特殊な手術が行われることがあります。
手術後は、再発リスクに応じた治療が行われます。
ステージ4B、遠隔転移が見られる場合には薬物療法が行われます。
2022年に、免疫チェックポイント阻害薬であるリブタヨとキイトルーダが承認され、子宮頸がんの薬物療法が数十年ぶりに大きく変わりました。
二次治療以降に使われる新薬が現在承認申請中です。
もし承認されれば、2025年にはこのように変わっていると思います。
期待される治療
HER2陽性の体がんと頸がんの二次治療以降でエンハーツが奏功するという報告がありました。
HER2は体がんの20~80%、頸がんの20%で見られると言われていますので、今後の承認が期待されます。
子宮体がんまとめ
- 好発年齢である閉経以降で不正出血が見られたら、子宮体がんを疑って婦人科で検査を行う
- 治療の基本は手術で、早期発見だと高い確率で治る
- 手術後は再発リスクに応じて抗がん剤治療や放射線治療を追加する
- 最近免疫チェックポイント阻害薬が承認され、数十年ぶりに薬物療法の幅が広がった
- 承認予定の免疫チェックポイント阻害薬がいくつかあり、近いうちにガイドラインが変わる
子宮頸がんまとめ
- HPVワクチンとがん検診で、9割以上の子宮頸がんを予防できる
- 早期だと手術+術後化学療法、進行期は化学放射線療法もしくは化学療法を行う
- 早期で妊娠希望があれば子宮を温存する手術が可能である
- 免疫チェックポイント阻害薬の登場で、数十年ぶりに薬物療法の幅が広がった今後承認予定の薬剤がいくつかあり、近いうちにガイドラインが変わる
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