日本の大腸がんの5割は腸内細菌の毒素が原因か!?

濱元誠栄院長

こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。

がんセンターからこんな発表がありました。

国際共同研究により大腸がんの全ゲノム解析を実施し日本人症例を解析日本人大腸がん患者さんの5割に特徴的な腸内細菌による発がん要因を発見

内容を簡単にまとめるとこんな感じです。

  • 日本を含む11か国の国際共同で大腸がんを対象とした全ゲノム解析が行われた。
  • 解析の結果、日本人症例の5割に、一部の腸内細菌から分泌されるコリバクチン毒素による変異パターンが存在することが明らかになった。
  • コリバクチン毒素による変異パターンは、高齢者症例(70歳以上)と比べて若年者症例(50歳未満、大腸がん全体の約10%を占める)に3倍多い傾向がみられ、日本をはじめ世界的に問題視されている若年者大腸がんの重要な発症要因である可能性が示唆された。
  • さらに、大腸がん初期段階に起こるドライバー異常であるAPC変異の15%がコリバクチン毒素による変異であることが分かり、コリバクチン毒素によるDNA変異が大腸がん発症早期から関与していることも示された。
  • 大腸がんにおけるコリバクチン毒素による変異パターンは、その時に存在しているコリバクチン毒素産生菌の量とは関連しないことから、早期から持続的に暴露していることが大腸がん発症に寄与するのではないかと推定される。

大腸がん患者の腸内細菌に歯周病菌が多く見られることが分かっていて、歯周病菌が大腸がんの発生に関わっている可能性があるして研究されています。

アメーバブログでも解説しています。

がんの中に細菌??

ちなみに、歯周病菌は膵臓がんの予後にも関わっている可能性も言われています。

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歯周病菌が膵臓がんの予後を決める?! こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。 第125回外科学会にこんな演題がありました。 膵臓がんの組織内で腸内細菌が検出されたり、歯周病菌が抗がん剤の効果...

このコリバクチン毒素を産生する菌は、歯周病菌とは別物なので、また新しい発がんの機序になります。

コリバクチン毒素に関しては静岡県立大学の渡辺賢二先生が研究されており、

・コリバクチン毒素の構造解明

・乳酸菌がコリバクチン産生菌を阻害する

・コリバクチン産生菌は母子感染する

などの論文を発表されています。

今回の発表のポイントは、若い人の大腸がんでコリバクチン産生菌が多いことと、長期間の持続感染で大腸がんのリスクが上がるということだと思います。

となると、渡辺先生が提唱した母子感染が重要になるのかもしれません。

もしかすると、

若い人の大腸がん →コリバクチン産生菌

高齢者の大腸がん →歯周病菌

と、原因菌が異なる可能性もあります。

大腸がんはリンチ症候群などの遺伝性の病気を除いても、家族歴が結構あるのですが、もしかするとコリバクチン産生菌の母子感染が影響している可能性もあります。

もちろん、コリバクチン産生菌だけが原因となる訳ではないですが、ターゲットとなる菌が同定されたことで、今後予防に関する研究が進んでいくでしょう。

大腸がんの低年齢化を食い止める一手になれば良いですね。

こちらは過去のアメーバブログ

若い人の大腸がんが増えている理由

濱元誠栄院長

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この記事を書いた人

1976年宮古島市生まれ。宮古島市立久松中学から鹿児島県のラ・サール高校に進学。鹿児島大学医学部を経て沖縄県立中部病院で研修医として勤務。杏林大学で外科の最先端医療を学んだのち再び沖縄県立中部病院、沖縄県立宮古病院、宮古徳洲会病院に外科医として勤務。2011年9月に上京しRDクリニックで再生医療に従事した後に、18年7月にがん遺伝子治療を専門とする銀座みやこクリニックを開院。

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