
【高用量ビタミンD】がん治療の皮膚障害を早期改善?最新研究を解説

濱元誠栄院長こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
抗がん剤や放射線治療では、皮膚の赤み、痛み、腫れ、かゆみ、皮むけなどの皮膚障害が起こることがあります。
症状が強くなると、日常生活に影響するだけでなく、抗がん剤の減量や休薬、放射線治療の中断が必要になることもあります。
こうしたがん治療に伴う皮膚障害に対して、高用量のビタミンDを内服することで、比較的早期に症状が改善する可能性が報告されました。
研究結果は、2026年7月に医学雑誌『JAMA Dermatology』に掲載されています。
抗がん剤や放射線治療による皮膚障害を調査
今回の研究は、アメリカの3つの大学病院で行われた多施設共同の後ろ向き研究です。
対象となったのは、抗がん剤による中毒性紅斑、または急性放射線皮膚炎を発症した33人でした。
- 抗がん剤による中毒性紅斑:28人
- 急性放射線皮膚炎:5人
患者さんには、ビタミンD2またはビタミンD3が1回10万IU投与されました。症例によっては、2回投与されています。
87%が10日以内に症状の改善を実感
症状の経過を評価できた30人のうち26人、つまり87%が、ビタミンD投与後10日以内に症状の軽減を実感していました。
症状が改善するまでの期間の中央値は5日でした。入院患者に限ると、改善までの期間の中央値は3日でした。
また、医療者が評価した皮膚の赤みについても、ビタミンD投与前と比較して、10日目までに改善がみられています。
73%ががん治療を中断せずに継続
33人のうち24人、73%は抗がん剤や放射線治療を中断せずに継続できました。
皮膚障害が改善したことで、がん治療を継続しやすくなった可能性があります。
ただし、今回の研究には、高用量ビタミンDを投与しなかった患者さんとの比較がありません。そのため、ビタミンDによって治療の中断を防げたとまでは断定できません。
それでも、がん治療による皮膚障害は、治療の減量や休薬、中断につながることがあります。短期間で症状を軽減できる治療法が確立されれば、がん治療を支える重要な支持療法になる可能性があります。
高カルシウム血症などの副作用は認められず
高用量ビタミンDを使用する際に注意が必要な副作用の一つが、血液中のカルシウム濃度が高くなる「高カルシウム血症」です。
今回の研究では、血清カルシウム値に臨床的に問題となる変化はなく、ビタミンD投与に関連すると考えられる有害事象も報告されませんでした。
ただし、今回の対象者は33人と少なく、まれな副作用まで十分に評価できる研究規模ではありません。安全性については、今後さらに多くの患者さんを対象とした研究が必要です。
なぜビタミンDが皮膚障害に作用するのか
ビタミンDは、骨やカルシウムの代謝に関係するだけではありません。免疫反応や炎症を調整する働きもあることが知られています。
過去の小規模な研究では、高用量ビタミンDによって、炎症を抑える方向に働くマクロファージの機能が高まり、皮膚の炎症や組織の修復に影響する可能性が示されています。
今回の研究でも、こうした抗炎症作用や皮膚修復作用が、症状の早期改善につながった可能性があります。
ただし、高用量ビタミンDが、がん治療による皮膚障害を改善する詳しい仕組みについては、まだ十分に解明されていません。
まだ標準的な治療ではありません
今回の結果は期待される内容ですが、いくつかの限界があります。
- 対象者が33人と少ない
- 過去の診療記録を調べた後ろ向き研究である
- 高用量ビタミンDを投与しなかった患者さんとの比較がない
- ステロイド外用薬など、ほかの治療の影響を除外できない
- 皮膚障害の種類や重症度が患者さんによって異なる
そのため、今回の研究だけで、高用量ビタミンDの有効性が証明されたとはいえません。
どのような皮膚障害に効果が期待できるのか、適切な投与量や投与時期はいつなのか、繰り返し投与しても安全なのかなど、今後さらに検討する必要があります。
現時点では、がん治療による皮膚障害に対する高用量ビタミンDは、標準的な治療として確立されたものではありません。
高用量ビタミンDを自己判断で使用しないでください
今回使用された10万IUという量は、一般的なサプリメントの摂取量とは大きく異なります。
成人におけるビタミンDの一般的な耐容上限量は、1日4,000IUとされています。
今回の研究では、毎日10万IUを摂取したわけではなく、単回または少数回の投与が行われています。そのため、日常的な摂取量と単純に比較することはできません。
ただし、ビタミンDを過剰に摂取すると、高カルシウム血症を起こす可能性があります。
高カルシウム血症では、吐き気、食欲低下、便秘、脱水、筋力低下、意識障害、腎機能障害などが起こることがあります。
市販のサプリメントを使って、自己判断で今回の研究と同じ量を摂取することは避けてください。
今回の研究結果のポイント
- 87%が10日以内に症状の改善を実感
- 改善までの期間の中央値は5日
- 73%が抗がん剤や放射線治療を中断せずに継続
- 高カルシウム血症などの明らかな有害事象は認められなかった
まとめ
今回の研究では、抗がん剤や放射線治療による皮膚障害に対して高用量ビタミンDを投与したところ、多くの患者さんで比較的早期に症状の改善がみられました。
一方で、対象者が少なく、比較対象のない後ろ向き研究であるため、高用量ビタミンDの効果が証明されたわけではありません。
がん治療による皮膚障害は、単なる見た目の問題ではありません。痛みやかゆみ、感染リスク、睡眠、仕事や外出などの日常生活に影響し、場合によっては、がん治療の継続にも関係します。
今後、より規模の大きな比較試験で有効性と安全性が確認されれば、高用量ビタミンDが、がん治療を支える新たな選択肢の一つになる可能性があります。
参考文献
Patil MK, Sakunchotpanit G, Toulmin SA, et al. High-Dose Oral Vitamin D for Toxic Effects of the Skin Associated With Chemotherapy and Radiation. JAMA Dermatology. Published online July 15, 2026. doi:10.1001/jamadermatol.2026.2267.













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