がん患者はリスク5倍! がん関連血栓症とトルソー症候群。血管が詰まる原因と症状。

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濱元誠栄院長

こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。

今回のテーマは「がんで血管がつまる!その症状と予防法は?」です。

「血管がつまる原因と症状」「がん患者と血栓症」「血栓症でよくある質問」についてお話していきます。

目次

血管がつまる「血栓」について

皆さんは「血管がつまる病気」と言うとどのような病気を想像するでしょうか?脳の血管がつまる脳梗塞や、足の血管がつまるエコノミークラス症候群などが思い浮かぶかもしれません。

血管がつまる病気というのは命に関わることが多いので、症状を知り早く対処できるようにしましょう。

私たちはケガをして出血しても、しばらくすると傷口で血が固まって自然に止血します。このように血液は「固まる(凝固する)」という性質を持っています。

でも、私たちが普通に生活していて血液が固まってしまったら大変なことになりますよね。

血管の細胞から血液を固まりにくくする物質(抗凝固因子)が出ていて、健康な状態であれば血液が固まることはありません。

ただし「血流」「血管」「血液」のいずれかに異常があると血管内でも血液が固まりやすくなります。

血管の中で血液が固まると血栓という塊ができます。血栓で動脈がつまると、その先に血液が流れなくなり組織が壊死してしまいます。

血栓で動脈がつまって組織が壊死することを梗塞と言います。脳の脈が血栓でつまると脳梗塞、心臓の動脈がつまると心筋梗塞と言います。

ちなみにエコノミークラス症候群は足の静脈がつまって血栓ができ、それが肺にとんで肺の動脈をつまらせて、呼吸困難などを起こします。足の静脈が血栓でつまることを深部静脈血栓症と言います。

血栓の主な原因3つ

血栓ができやすくなる原因は主に3つ「血流の異常」「血管の異常」「血液の異常」です。

まず「血流の異常」についてお話します。

血液の流れが悪くなり血液の渋滞が起こると血液が固まりやすくなります。血液の流れが悪くなりがちな人は以下の通りです。

①同じ姿勢をずっと取っている人

デスクワークや飛行機で長時間座ったままの状態や寝たきりの状態が当てはまります。

②麻痺やケガがある人

動かせなかったりギプスで圧迫されていたりすると、血流が悪くなります。

③高齢者

血液が心臓に戻るのを、筋肉が収縮するポンプ作用でお手伝いをしています。高齢者で筋力が低下すると、このポンプ作用が弱まり、下肢に血液が滞りやすくなります。また、外出する機会が減って家の中でじっとしていることが多いのも血流低下につながります。

④肥満の人

太っている人はお腹の圧が高くなり、下肢からの血流の戻りが悪くなります。

⑤妊娠中の人

肥満の人と同じく、腹圧が高くなることで下肢からの血流の戻りが悪くなります。

⑥高脂血症の人

中性脂肪などの脂質が多い人は、血液に脂質が混ざって血流が悪くなります。

⑦喫煙者

タバコを吸うと血管が収縮して血流が悪くなります。外科手術の後などにタバコを吸うと、血流が悪くなり傷の治りが遅くなります。

⑧脱水のある人

脱水があると血液量が減って、血流が悪くなります。

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次に「血管の異常」についてお話します。

代表が動脈硬化です。動脈はゴムのように弾力があり、壁の内側も滑らかで、血流がスムーズに流れるようになっています。

コレステロールが高い人はコレステロールが血管の壁に付着し壁が厚くなります。壁が厚くなると血管の中が狭くなり、血液がスムーズに流れなくなります。

ちなみに他にも喫煙者や高血圧、糖尿病、高尿酸血症の人は、タバコの有害物質や糖質などで血管の壁が傷つけられ、動脈硬化が起きやすくなります。

また運動不足やストレス、加齢でも動脈硬化が起こりやすくなります。

他の血管の異常として下肢静脈瘤があります。静脈には逆流防止弁が付いていて、下肢の血流が足先に戻らないような工夫がされています。この弁が何らかの原因で機能しなくなると、逆流が起こって下肢に血流が滞りやすくなります。

下肢静脈瘤の人は足に太い静脈が浮いて見えていて、時にこぶのようになります。

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最後に血液の異常についてお話します。

経口避妊薬(ピル)や更年期障害で女性ホルモン剤を使用していると、女性ホルモンであるエストロゲンの影響で血液が固まりやすくなります。

また、血液が固まりやすくなる遺伝性の病気もあります。

血栓ができやすい人のまとめです。

「血流の異常」が原因  

・同じ姿勢をずっと取っている人
・麻痺やケガがある人
・高齢者
・肥満の人
・妊娠中の人
・高脂血症の人
・喫煙者脱水のある人

「血管の異常」が原因

・動脈硬化の人(脂質異常症、高血圧、糖尿病、高尿酸血症、喫煙、ストレス、運動不足、加齢などがリスクを高めます)
・静脈瘤のある人

「血液の異常」が原因

・ピルを内服している人
・女性ホルモン剤を使用している人
・遺伝的に血液が固まりやすい人

血栓で起こる症状について

脳の血栓がつまると麻痺言語障害を始め様々な症状が出ますし、心臓の場合には胸痛不整脈心不全などの症状が出ます。

肺の場合には主に下肢から血栓が飛んできて肺の動脈をつまらせ(塞栓と言います)、呼吸困難胸痛が起こります。

下肢の静脈に血栓ができてつまった場合は、ふくらはぎや太ももに痛み、赤み、強い浮腫み、突っ張り、足のだるさといった症状が出ます。

長時間の移動などで下肢の症状が出てきたり、寝たきりの人で腫れや赤みなどが出てきたりしたら、下肢の静脈血栓症を疑います。

がんと血栓症の関係

先ほどはがん患者に血栓症について触れませんでしたが、がん患者では「血流」「血管」「血液」の3つの異常がすべて起こっており、健康な人に比べて5倍ほど血栓症が起こりやすいとされています。

またがん治療が終了したがんサバイバーの人も、健康な人と比べて血栓症が起こりやすくなっています。がんやがん治療に関連した血栓症をがん関連血栓症と言います。

がんと血流異常

がんが大きくなると血管を浸潤したり圧迫したりして血流が低下し、血栓症が起きやすくなります。血管を圧迫して血栓症が起きやすいがんは膵臓がん、胆のう・胆管がん、卵巣がんなどです。

膵臓がんで腸に行く血管がつまったら突然の激しい腹痛が起こります。胆のう・胆管がんで肝臓に行く血管がつまったら発熱、腹痛、お腹が張る感じなど症状が軽いことが多く、他の腹痛と見分けが付きにくいです。

卵巣がんで下肢の静脈がつまったら、前半でもお話しした、ふくらはぎや太ももに痛み、赤み、強い浮腫み、突っ張り、足のだるさといった症状が出ます。

がんと血管異常

抗がん剤はがん細胞だけでなく正常細胞にも影響を与えます。抗がん剤によって血管の細胞が傷つけられると、血管が炎症を起こし、硬くなったり中が狭くなったりして血栓ができやすくなります。

抗がん剤による血管障害は乳がんで使用される抗がん剤で多く見られます。また放射線治療でも血管の細胞が傷つき血栓ができやすくなります。

手術でがんを切除する際に血管も切除するのですが、その際に周囲の血管を傷つけてしまうことがあります。その場合も血栓ができやすくなります。

がんと血液異常

ある種類のがんでは、がん細胞が血液を固まりやすくする物質を分泌し、血栓ができやすくなります。これをトルソー症候群と言います。

トルソー症候群を起こしやすいがんは肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの患者さんです。一見何のリスクも無さそうな若い女性が脳梗塞を発症した場合には、乳がんや子宮頸がんによるトルソー症候群を疑ってがんの検査を行うこともあります。

血液の固まりやすさは血液検査で調べることができるので、がん治療中の人は調べてみてください。もし固まりやすくなっている場合には血液を固まりにくくサラサラにする薬を投与します。

ただし、胃がんや大腸がん、子宮がんなどでがんから出血している場合には、慎重に投与する必要があります。

まとめ

がん治療中の人はそうでない人よりも血栓症が起こりやすいです。

特にがんのある部位の血管や放射線治療を行った部位は血栓症が起こりやすいですが、がんの人では全身の血管で起こる可能性があります。

血栓症は急に発症することがほとんどです。脳や心臓、下肢などの症状が急に出たという場合には、血栓症を頭に入れてすぐに病院を受診しましょう。

自身の血液の固まりやすさを調べて、もし高いような場合には固まりにくくする薬を使用します。また、がん治療後の人も治療後2年は血栓症に気を付ける必要があると言われていますので、注意が必要です。

血栓症についてのよくある質問

低用量ピルなら血栓はできにくいでしょうか?

低用量ピルでも血栓はできやすくなります。できやすくなるとは言っても、日本産婦人科学会によると、1万人当たり数人リスクが高くなるだけなので、あまり心配しなくても良いと思います。ただ、タバコを吸っていて肥満もあり、長時間同じ姿勢を取っているような人だと、もっとリスクは高くなると思います。

血栓症が疑われたら、何科を受診したら良いでしょうか。

血栓症の症状は急なので、一般の外来ではなく救急室を受診してください。

一度血栓症になったら、一生サラサラの薬を飲まなければいけないのでしょうか。

様子を見ながらいずれ内服を中断します、ただ、血栓症は再発しやすいので、日常生活でも注意が必要です。

がん患者の血栓を予防する方法はあるのでしょうか?サラサラの薬は飲んだ方が良いでしょうか?

血液検査で血液が固まりやすくなっていることが分かったら、サラサラにする薬を飲むことがあります。ご自身でも、水分をしっかり取って脱水にならないようにする、長時間同じ姿勢を取らない、適度な運動をするなど対策することが重要です。

抗がん剤の副作用で、血小板が下がって出血しやすくなっていると言われました。固まりやすくなるだけではないのですか?

抗がん剤の副作用の一つに血小板減少があります。血小板は血液が固まるお手伝いをするのですが、それが少なくなっていると出血しても血液が固まりにくく、血が止まらなくなるので、注意が必要です。

エコノミークラス症候群が起きやすいなら、がん患者は旅行に行かない方がよいですか?

対策をしながらの旅行であれば大丈夫です。移動中は、水分をしっかりとる、定期的につま先を引き上げたり、ふくらはぎを揉んだりなどしてください。

濱元誠栄院長

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この記事を書いた人

1976年宮古島市生まれ。宮古島市立久松中学から鹿児島県のラ・サール高校に進学。鹿児島大学医学部を経て沖縄県立中部病院で研修医として勤務。杏林大学で外科の最先端医療を学んだのち再び沖縄県立中部病院、沖縄県立宮古病院、宮古徳洲会病院に外科医として勤務。2011年9月に上京しRDクリニックで再生医療に従事した後に、18年7月にがん遺伝子治療を専門とする銀座みやこクリニックを開院。

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