がんの6~7割は治る時代!治りやすいがん、治りやすい患者の特徴3つ

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濱元誠栄院長

こんにちは。銀座みやこクリニック院長の濱元です。

今回のテーマは「治りやすいがんってどんながん?」です。

「治りやすいがんと治りにくいがんの違い」「がんを治すためにできること」などをお話します。

目次

がん患者の6~7割は治る時代

2人に1人はがんになる時代と言われていますが、がんになったからといって、必ず命を落とす訳ではありません。がんになっても治る人はたくさんいます。

がんが治ったかどうかという話をする時によく使われるのが5年生存率という言葉です。5年生存率はがんと診断されてから5年後も生きている確率のことを指しますが、最新のデータではがん全体で68.4%となっています。つまり、がんになっても10人に6~7人は治るということです。

ちなみに30年前は5年生存率が53.2%と、約半数が亡くなっていた計算になります。 推移は以下のグラフの通りです。

5年生存率が上昇した一番の理由は、この30年でCTやMRIなどが発達し、早期診断ができるようになったことだと思います。

がんは早期発見するほど治りやすい

早期で発見し治療を行えば、がんは治る確率が高くなります。

がんには「ステージ」という、がんの進行度合いを表す表現があり、0から4まで分けられます。ステージ0はがんが臓器の表面にとどまっている状態で、この段階で治療すればほとんどのがんは100%治ります。

ステージ1 それよりちょっとだけ臓器の奥に入り込み、かつリンパ節などの転移がない状態です。

ステージ2、3 はがんが臓器の奥深くまで入り込んだり、リンパ節転移がある状態です。

ステージ4 遠隔転移と言って、別の臓器に転移が見られる状態のことを言います。

ステージ0-3までは局所にがんがとどまっていて手術や放射線治療といった局所治療で治る可能性がありますが、ステージ4となると血液に乗って全身にがん細胞が回っているため、抗がん剤での全身治療となります。

抗がん剤だけでがん細胞をすべて消滅させることは難しく、また抗がん剤はいずれ効かなくなるため、ステージ4になると5年生存が難しくなります。

前立腺がんを例にとると、5年生存率はステージ1で100%、ステージ2は100%、ステージ3でも98%なのですが、ステージ4になると60%まで低下します。

乳がんの5年生存率はステージ1で99%、ステージ2は94%、ステージ3でちょっと下がって80%なのですが、ステージ4になると39%まで低下します。

このように、ステージが0から3で発見できたがんは「治りやすいがん」、ステージ4で発見したがんは「治りにくいがん」と言えます。

治りにくいがんもある

ステージに関係なく治りにくいがんもあります。例えば「すべてのがんの中で最も予後が悪い」と言われている膵臓がんの5年生存率はステージ1で43%、ステージ2では28%、ステージ3では17.5%、ステージ4になると1.7%という状況です。

膵臓がんのように早期で発見しても治りにくいがんは、他のがんと比べて何が違うのでしょう。

膵臓がんが一番厄介なのは、がんの進行がとても速いということです。がんには悪性度という指標があり、私たち医者は「顔つき」とも表現します。増大するスピードが速いがんは、顔つきが悪い、すなわち悪性度が高いことになります。

一般的に膵臓がんなど治りにくいがんは悪性度が高く、前立腺がんなどの治りやすいがんは悪性度が低いです。

よく「若い人はがんの進行が速く、高齢者は遅い」と言われていますが、前立腺がんなど悪性度が低いがんが高齢者に多いからそう見えるだけで、高齢者でも進行が速く、悪性度が高いがんはたくさんあります。ちなみに膵臓がんは若くても高齢者でも進行速度は変わりません。

膵臓がんが治りにくいもう一つの理由は、再発しやすいということです。膵臓がんは早期で手術を行っても、8割の確率で再発します。他の多くのがんの再発率は2割くらいなので、膵臓がんの再発率は群を抜いています。

「治りやすいがん」「治りにくいがん」の違いを以下にまとめます。

★早期で発見できたがんは治りやすく、発見が遅れれば遅れるほど治りにくい

★悪性度が低いがんは進行速度が遅く治りやすく、顔つきが悪い、悪性度が高いがんは治りにくい

★再発しやすいがんは治りにくく、再発しにくいがんは治りやすい

がん患者によっても変わる、がんの治りやすさ

さて、治りやすさはがん自体の特徴で異なりますが、実は患者側の要素でも変わると考えられています。

体力

患者側の要素で重要なのは、まずは「体力」です。

がんで弱っていくイメージがあるからか「がん治療中だから安静にしないと…」と思う患者さんは少なくありません。また、周囲も気を遣って安静を勧めることがあります。

しかしこれは逆効果で、運動などで体を動かしている人の方が、がんによる死亡率は低いことが分かっています。特に男性では大腸がん、女性では乳がんにおいて、活動量が高い人ほどがんで死亡するリスクが低くなります。

また、抗がん剤治療中に吐き気や倦怠感などが出ているとあまり動かなくなりますが、そうなると体力が低下し、次の抗がん剤治療の時にはさらに動かなくなるという悪循環が生じます。

“がんのリハビリテーションガイドライン”によると、抗がん剤治療中に適度な運動をすることで倦怠感や副作用が軽減するとされています。体を動かすことは気分転換にもなりますしね。

ただ、副作用が強すぎる時に無理に行う必要はありません。調子が良い時には体を動かそうという意識が重要です。

前向きな気持ち、姿勢

次は「前向きな気持ち、姿勢」です。

がんを告知された直後は誰もが落ち込みます。その後、多くの人が治療に向けて前向きになるのですが、なれない人もいます。

がん治療を受けながらの生活環境はこれまでと一変します。この新しい環境に慣れることができず、頭痛や動悸、倦怠感、不眠、意欲の低下などの症状が続いたり、ひどい場合にはうつ病になったりする人が2割ほどいます。

このような症状があると治療に消極的になったり、治療の継続が難しくなったりして治りにくいということになります。ただもちろん、治療期間中は様々な負の感情が出てくるのは当然ですので、それが続かなければ大丈夫です。

前向きな気持ちになることは免疫力を上げる効果もあります。がん治療に頭の中のすべてを持って行かれないように、家族や友人とお出かけしたり、気分転換をしながら気持ちを高めていきましょう。

情報力

身体的、精神的な要素以外で「情報力」というのも治るための重要な要素の一つです。

自身のがんに関する正しい情報や最新情報を入手し、治療について自ら考える力が必要です。特に治りにくいがんでは標準治療だけでは難しいこともあり、主治医に言われるままに治療を受けるのではなく、自身の状態に合った治療法を探すこともあります。

病院での治療以外でも、生活習慣の改善や免疫力を高める習慣など自ら調べて実践することはプラスにつながります。ただしインターネット上には様々な情報が溢れていますので取捨選択をする必要があります。「〇〇でがんが治る」といったような怪しい情報に惑わされないことが大切です。

もし一人では難しいという人は、病院のがん相談室や患者同士の集まりなどで話をしたり聞いたりするのも一つの手です。

「がんを治すためにできること」を以下にまとめます。

★治療に立ち向かえるだけの体力をつける

★前向きな気持ちで治療にのぞむ

★情報力をつける

がんになっても治る人になるためには、まずは検診を受けるなどして早期発見に努めることが重要です。その上で体力をつけ、気持ちを整え、情報力を付け、がんと闘っていきましょう。

濱元誠栄院長

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この記事を書いた人

1976年宮古島市生まれ。宮古島市立久松中学から鹿児島県のラ・サール高校に進学。鹿児島大学医学部を経て沖縄県立中部病院で研修医として勤務。杏林大学で外科の最先端医療を学んだのち再び沖縄県立中部病院、沖縄県立宮古病院、宮古徳洲会病院に外科医として勤務。2011年9月に上京しRDクリニックで再生医療に従事した後に、18年7月にがん遺伝子治療を専門とする銀座みやこクリニックを開院。

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