胃がんの99%は予防可能!初期症状や「一番の原因」ピロリ菌について

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濱元誠栄院長

こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。

今回は「胃がんの原因と症状」「胃がんを予防するためにできること」などについて解説します。

目次

かつて「死亡率トップ」だった胃がん

昔は「がんと言えば胃がん」というくらい胃がんは多くて、2011年までは日本人のがんの部位別死亡者数において胃がんはトップでした。有名人でも胃がんになった人は多く、宮川花子さん、大橋巨泉さん、小林克也さん、王貞治さん、宮迫博之さん、渡辺謙さんなどがいらっしゃいます。

また、胃がんが原因で亡くなった有名人は、逸見政孝さん、越路吹雪さん、今いくよさんなど、だいたい50代以上なのですが、黒木奈々さんは32歳、山本Kid徳郁(のりふみ)さんは41歳など、若い人でも見られます。

胃がんの一番の原因はピロリ菌!

胃がんの一番の原因はヘリコバクター・ピロリ菌(通称ピロリ菌)です。胃がん患者の99%にピロリ菌感染が見られます。

ピロリ菌は1983年に発見された比較的新しい病原菌で、井戸水や土壌に多く存在しています。ピロリ菌は胃の免疫力が弱い幼少期に、井戸水などを介して口から体内に入り、胃の粘膜の中に住み着く(感染する)と考えられています。

その他にも、幼少期に親が食事を噛み砕いて与えたり、親が同じ箸やスプーンを使ったりすることで親から子へ移るとも考えられています。

幼少期に胃の中に住み着いたピロリ菌は除菌しない限り一生住み続けます。胃の免疫力が強くなる10代以降は、ピロリ菌が胃の中に入ってきても住み着くことができないため、幼少期に感染しなければ一生感染することはありません。

井戸水を利用することが無くなり、親から子への口移しの習慣が無い現代では新たなピロリ菌感染は減っています。

日本人のピロリ菌感染者は約3500万人いて、人口の約4分の1が感染していることになりますが、50歳以上の約7割以上の人が感染しているのに対して、20歳未満だと1割程度しか感染していません、

そのため、感染しない世代が今後増えていくに従って胃がんになる人も徐々に減っていくと考えられます。

ピロリ菌以外の原因として、塩分濃度の高い食事、大量飲酒、喫煙などの生活習慣があります。塩分やお酒、タバコの有害物質などが胃の粘膜を傷つけることで、胃がんになりやすいと考えられています。

胃がんの症状

濱元誠栄院長

ここからは、胃がんでよく見られる代表的な症状を挙げていきます。

①腹痛

胃がんで見られる症状で最も多いのが腹痛です。主に胃があるみぞおちあたりが痛みます。また早期のうちは、痛みとまでは行かず違和感や重苦しい感じということもあります。

痛むタイミングは空腹時だけ痛くて食後に楽になる場合もあるし、食後に痛くなる場合もあります。

しかし、かなり進行すると「食事に関係なく痛みが持続する」「痛みで眠れない」「夜中に痛みで起きてしまう」といった症状が見られるようになります。

②お腹の張り

胃は食べ物を消化するだけではなく、ぎゅっと収縮させて消化した食べ物を腸へと運ぶ働きもしています。胃がんでこの動きが悪くなると、お腹が張った感じや吐き気がしたり、げっぷが多くなるなどの症状が見られます。「食べたらすぐにお腹がいっぱいになる」という訴えもよく聞かれます。

これらの症状が3週間以上続く場合には、胃がんの可能性が高くなります。

③食欲低下

胃がんが生み出すサイトカインと言う物質が、脳に働きかけて食欲が無くなります。ストレスや夏バテなどで一時的に食欲が低下することはありますが、胃がんによる食欲低下は長期間続き、またどんどん悪化していきます。

具体的には3週間以上続く食欲低下で、さらに症状が悪化していくようであれば胃がんを疑います。

④体重減少

進行がんの場合には、がんが産生する物質によって筋肉や脂肪が減っていき「食べても痩せていく」という症状が出ます。胃がんは食欲が低下し食べられなくなるのも相まって、がんのなかでもかなり体重が減ります。

⑤黒色便

胃から出血した血液は胃酸によって酸化され黒っぽくなり、黒い便となって出てきます。便は黒いだけでなく、粘っこさもあります。黒色便は胃潰瘍でも見られます。これらの症状は胃がんになる前から見られることがあります。

特に腹痛やお腹の張りなどの症状はピロリ菌に感染した胃でよく見られます。ピロリ菌は胃の粘膜に炎症を起こすのですが、軽い胃炎から始まり、炎症が強くなってくると胃潰瘍が見られることもあります。胃潰瘍の7割はピロリ菌が原因なくらい、胃潰瘍とピロリ菌は深く関係します。

また、長い期間かけてピロリ菌による炎症が胃全体に広がっていくと萎縮性胃炎と言って胃が縮んで食べ物を運ぶ機能を果たさなくなっていきます。

そうなると胃の動きも悪くなり、お腹が張りやすくなります。

胃がんの症状を改めてまとめます。

★みぞおちあたりの痛み(食事によって痛くなったり軽くなったりします。進行すると食事に関係なく痛くなります)

★お腹の張り(吐き気やげっぷをすることが多くなります)

★食欲低下(3週間以上続く場合には胃がんを疑います)

★体重減少

★黒色便治療に立ち向かえるだけの体力をつける

※ただし、これらの症状は胃癌でなくてもピロリ菌感染した胃でもしばしば見られます。

胃がん検診は胃カメラがおすすめ

胃がんかどうかを調べるには胃がん検診が適しています。50歳以上になると無料か少ない自己負担額で受けることができます。検査方法は胃バリウム検査胃カメラ検査の2通りがあり、各自好きな方を選ぶことができます。

これまで胃がん検診ではバリウムの方が優先されてきました。それはバリウムの方が安価で検査時間も短く、検査技師でも行える上にバスによる巡回検診が可能というメリットがあったからです。

しかしバリウムで引っかかっても結局は胃カメラをしないと診断が付かないのと、バリウムでは早期の胃がんを発見するのは難しく、胃カメラの方が正確に診断できます。

それにも関わらず胃カメラが広がらなかったのは医師が行わなければならないのと検査時間もかかるためです。

しかし胃カメラによる検診は、もし病変が見つかった場合にそのまま組織検査を行えるというメリットもあります。個人的には胃カメラによる検診をお勧めします。

ピロリ菌検査について

また、50歳からの胃がん検診が始まる前に一度、ピロリ菌検査を受けて欲しいです。

ピロリ菌の検査法は以下の4種類があります。

  • 呼気で調べる方法
  • 血液や尿でピロリ菌抗体を調べる方法
  • 便のピロリ菌抗原を調べる方法
  • カメラを使って直接胃の組織を採取して調べる方法

もしピロリ菌が見つかった場合には薬で除菌します。ピロリ菌除菌後は胃がんになるリスクが3分の2に低下します。

ただ、ピロリ菌感染が長期にわたる場合にはピロリ菌がいなくなってもがんを発症することがあるので、胃がんになる可能性はゼロにはなりません。

ピロリ菌に感染している期間が長いほどリスクが高くなるため、できるだけ早い段階でピロリ菌の有無を調べ除菌してしまおうという動きがあります。実際一部の市町村では中学生でピロリ菌検査が行われています。

検診、ピロリ菌検査で胃がんリスクを下げましょう

胃がんは早期で発見することができれば手術せずカメラでがんを取り切ることができ、5年生存率は97%とほとんどの人が治ります。

胃がん検診をきちんと受け、早期発見に努めましょう。

また、胃がんを予防するために早い時期にピロリ菌検査をしましょう。そして塩分濃度の高い食事を控え、禁煙してお酒を飲み過ぎないことで、さらにリスクを下げましょう。

濱元誠栄院長

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この記事を書いた人

1976年宮古島市生まれ。宮古島市立久松中学から鹿児島県のラ・サール高校に進学。鹿児島大学医学部を経て沖縄県立中部病院で研修医として勤務。杏林大学で外科の最先端医療を学んだのち再び沖縄県立中部病院、沖縄県立宮古病院、宮古徳洲会病院に外科医として勤務。2011年9月に上京しRDクリニックで再生医療に従事した後に、18年7月にがん遺伝子治療を専門とする銀座みやこクリニックを開院。

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