大腸がんの肝転移に国内未承認薬が効く可能性

濱元誠栄院長

こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。

こんな記事がありました

大腸がんの肝臓転移、国内未承認の治療薬が効く可能性…医薬基盤・健康・栄養研究所など研究成果

大腸がんの肝臓への転移に対して、国内では未承認の悪性リンパ腫の治療薬が効く可能性があるとのこと

また、今回の研究は、実際のがん細胞を用いて細胞内で働いているたんぱく質から新薬候補を見つけ出したという画期的なものです

興味のある方は研究内容を示したこちらの論文もどうぞ

 ↓↓

Longitudinal phosphoproteomics reveals the PI3K-PAK1 axis as a potential target for recurrent colorectal liver metastases

論文の内容は、めちゃくちゃ難しくて複雑です

それでもなんとかまとめてみます

大腸がん肝転移で肝切除した後、抗がん剤治療中に再発した症例は予後が悪い

初回切除時の肝転移巣の細胞と再発した肝転移巣の細胞内のタンパク情報を調べた

再発したがん細胞のタンパク情報を調べると5-FU抵抗性であることが分かった

また、再発したがん細胞ではがん細胞の増殖に関わるタンパク(PAK1)の異常も見られた

そのタンパクをブロックする分子標的薬(PAK1阻害薬)は存在しないが、100種類以上の分子標的薬の中から候補が5つ見つかった

5つの候補薬は全てPI3K/Akt/mTOR シグナル伝達経路という腫瘍の悪性化に関わるものだった

マウスに5ーFU耐性大腸がん細胞を移植し、海外で承認されているいくつかのPI3K阻害薬を使って実験した

PI3K阻害薬の中でコパンリシブが最も腫瘍抑制効果が高かった

コパンリシブが大腸がん肝転移切除後化学療法中に再発した、5-FU耐性肝転移に効く可能性がある

という感じです

実は、同じように、生のがん細胞のタンパク情報からがんの悪性化や候補薬を調べる研究が盛んに行われています

高精細リン酸化シグナル解析により胃がんの治療標的を同定~治療の経過に伴う胃がんの悪性化の実態も明らかに~

2024年10月に発表された、胃がんの悪性化を調べた日本の研究です

胃がんが治療に耐性ができるたびに、上皮間葉転換(EMT) タイプが増えていくことが分かった

EMTタイプではAXLというタンパクが活性化していて、そのタンパクを標的にしたAXL阻害剤で動物実験を行った

EMTタイプの胃がん細胞をマウスに移植しAXL阻害剤+パクリタキセルを投与したところ、パクリタキセル単剤よりも効果を発揮した

EMTタイプ以外にはAXL阻害剤の上乗せ効果は見られなかった

実際のタンパク情報を調べる方が、遺伝子パネル検査よりもリアルタイムのがんの情報を反映できるため、より効果の高い薬剤を見つけやすくなる可能性があります

この技術が進めば、がんの個別化治療がより現在の状況に即してより精度の高いものになっていくかもしれません

濱元誠栄院長

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この記事を書いた人

1976年宮古島市生まれ。宮古島市立久松中学から鹿児島県のラ・サール高校に進学。鹿児島大学医学部を経て沖縄県立中部病院で研修医として勤務。杏林大学で外科の最先端医療を学んだのち再び沖縄県立中部病院、沖縄県立宮古病院、宮古徳洲会病院に外科医として勤務。2011年9月に上京しRDクリニックで再生医療に従事した後に、18年7月にがん遺伝子治療を専門とする銀座みやこクリニックを開院。

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