大腸がんの転移・再発と言われた方へ|ステージ4でも治療方針は一つではありません

濱元誠栄院長

こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。

「肝臓に転移があります」

「手術後に再発が見つかりました」

「ステージ4です」

このように説明を受けると、多くの方が「もう治らないのではないか」「できる治療が限られているのではないか」と不安になると思います。

しかし、大腸がんのステージ4には大きな幅があります。

肝臓に小さな転移が1個だけある場合も、複数の臓器に転移が広がっている場合も、同じステージ4に分類されます。

そのため、ステージ4だからといって、全員が同じ治療を受けるわけではありません。

転移の場所や数、手術で取り切れるかどうか、がんの遺伝子タイプ、これまでの治療歴、患者さんの体力などによって、治療方針は大きく変わります。

今回は、大腸がんの転移・再発と診断されたときに知っておきたい治療の考え方を、順番に解説します。

目次

ステージ4は、必ずしも「末期」を意味しません

大腸がんのステージ4とは、一般的に、大腸から離れた臓器に転移がある状態を指します。

代表的な転移先は、肝臓、肺、遠くのリンパ節、腹膜などです。

ただし、同じステージ4でも、病状は一人ひとり大きく異なります。

例えば、肝臓に小さな転移が1個だけあり、手術ですべて取り切れる場合には、手術による根治を目指せることがあります。

一方、肝臓や肺、腹膜など複数の場所に転移がある場合には、抗がん剤や分子標的薬などの薬物療法を中心に治療を組み立てます。

重要なのは、「ステージ4」という言葉だけで今後を判断しないことです。

まず、現在のがんの広がり方を正確に整理する必要があります。

大腸がんはどのように転移するのか

大腸がんは、大腸の一番内側にある「粘膜」から発生します。

初期の段階では、がんは粘膜の中にとどまっています。

しかし、がんが成長して大腸の壁の深い部分まで入り込むと、壁の中にある血管やリンパ管へ侵入することがあります。

血管やリンパ管に入り込んだがん細胞が、血液やリンパ液の流れに乗って別の臓器へ運ばれ、そこで増殖することで転移が起こります。

そのため、手術後の再発リスクを判断するときには、がんの深さだけでなく、リンパ節転移の有無や、血管・リンパ管への侵入なども確認します。

大腸がんが転移しやすい場所

大腸がんが広がりやすい代表的な場所は、次の4つです。

所属リンパ節

まず、大腸の周囲にあるリンパ節へ広がることがあります。

さらに進行すると、太い血管の近くにあるリンパ節や、離れたリンパ節に転移することもあります。

肝臓

大腸がんの遠隔転移で、特に多いのが肝転移です。

大腸から流れ出た血液の多くは、門脈という血管を通って最初に肝臓へ集まります。そのため、大腸がんの細胞も肝臓に到達しやすくなります。

肝臓に次いで転移がみられやすいのが肺です。

特に直腸がんでは、血液の流れの関係から、肝臓を経由せず肺へ転移する場合もあります。

腹膜

がんが大腸の壁を越えて、お腹の中に種をまくように広がった状態を「腹膜播種」と呼びます。

腹膜播種が進むと、腹水や腸閉塞などの原因になることがあります。

転移している場所によって、手術、薬物療法、放射線治療、局所治療など、検討される治療法は異なります。

「転移」と「再発」の違い

転移と再発は、似た意味で使われますが、厳密には少し異なります。

転移とは

最初に発生した大腸がんの細胞が、血液やリンパ液に乗って別の臓器へ移動し、そこで増殖することです。

大腸がんが見つかった時点ですでに肝臓や肺に転移がある場合も、手術後に別の臓器でがんが見つかった場合も、どちらも転移に含まれます。

再発とは

手術でがんをすべて取り切れたと判断されたあとに、再びがんが現れることです。

手術を行った場所の近くに再発する「局所再発」と、肝臓や肺など離れた臓器に現れる「遠隔再発」があります。

再発の多くは、手術の時点では画像に映らないほど小さながん細胞が体内に残っており、時間がたってから増殖することで起こります。

再発したからといって、手術が不十分だったとは限りません。

現在の画像検査でも捉えられない微小ながん細胞が存在する可能性があるため、再発予防を目的として術後抗がん剤を行うことがあります。

大腸がんの再発率はステージによって異なる

大腸がんの手術後の再発率は、一般的にステージが進むほど高くなります。

資料内では、一般的な目安として次の数字が示されています。

  • ステージ1:約3~8%
  • ステージ2:約10~20%
  • ステージ3:約30~40%

ただし、同じステージでも再発リスクは一人ひとり異なります。

がんが大腸の壁にどこまで入り込んでいるか、リンパ節転移が何個あるか、血管やリンパ管への侵入があるか、腸閉塞や穿孔を伴っていたかなどによっても変わります。

数字だけを見て、必要以上に不安になる必要はありません。

ステージ3であっても、適切な手術や術後治療によって、再発せず長期間経過する方は多くいらっしゃいます。

転移・再発大腸がんは、まず3つの状態に分けて考える

治療方針を決めるときには、現在の状態を大きく3つに分類します。

1.現在の時点で手術により取り切れる

転移の数や場所が限られており、手術ですべてのがんを取り切れると判断される状態です。

肝転移や肺転移があっても、手術による根治を目指せる場合があります。

2.薬物療法で小さくなれば手術できる可能性がある

最初の時点では転移が大きい、数が多い、重要な血管に近いなどの理由で手術が難しくても、抗がん剤などで転移が縮小すれば、後から手術できる可能性があります。

3.手術で取り切ることが難しく、薬物療法を中心にする

転移が複数の臓器に広がっている場合や、患者さんの体力、臓器機能などから大きな手術が難しい場合には、薬物療法を中心に治療します。

この分類は、最初に一度決めたら変わらないものではありません。

薬物療法によって転移が小さくなれば、当初は手術が難しいと判断された方でも、後から手術を検討できるようになることがあります。

そのため、治療中も定期的に画像検査を行い、手術や局所治療の可能性を再評価することが重要です。

がん治療より先に対応が必要な症状

詳しい治療方針を検討する前に、身体の危機的な状態を避けるため、先に処置が必要になることがあります。

特に注意したいのが、次のような症状です。

腸閉塞

便やガスが出ない、お腹が強く張る、吐き気や嘔吐が続く場合には、腸閉塞の可能性があります。

状態に応じて、絶食や点滴、ステント、人工肛門、緊急手術などが必要になります。

出血

がんからの出血が続くと、貧血が進行することがあります。

出血の程度によっては、輸血や内視鏡治療、放射線治療、手術などを検討します。

感染

高熱や強い炎症反応がある場合には、感染症を合併している可能性があります。

抗菌薬や膿を排出する処置などが必要になることがあります。

黄疸

皮膚や白目が黄色くなる場合には、肝転移やリンパ節転移によって胆管が圧迫されている可能性があります。

胆汁の流れを確保するため、ステントなどの処置を先に行うことがあります。

強い痛み

日常生活を送れないほどの強い痛みがある場合には、痛みを我慢せず、鎮痛薬や放射線治療などを早い段階から取り入れます。

転移があっても手術で根治を目指せることがある

大腸がんでは、転移があっても、すべて取り切れると判断されれば手術による根治を目指せることがあります。

特に、肝転移や肺転移では、転移の個数、大きさ、位置、ほかの臓器への広がりなどを確認し、切除できるかどうかを検討します。

重要なのは、単に「転移があるかどうか」ではなく、「すべての病変を安全に取り切れるかどうか」です。

大腸の原発巣と転移巣を同時に手術する場合もあれば、身体への負担を考えて手術を分けて行う場合もあります。

手術できるかどうかは、外科医、腫瘍内科医、放射線科医などが参加する多職種の検討が重要です。

肝転移には複数の治療方法がある

通常のがんと異なり、大腸がんの肝転移では、病変の数、場所、肝機能、全身状態などをみながら治療を組み立てます。

肝切除

すべての肝転移を切除でき、手術後に十分な肝臓を残せる場合には、根治を目指す治療として肝切除を検討します。

薬物療法後の肝切除

最初は切除が難しくても、抗がん剤や分子標的薬によって肝転移が小さくなれば、後から肝切除が可能になる場合があります。

ラジオ波・マイクロ波治療

転移に針を刺し、熱を加えてがんを治療する方法です。

転移の大きさや位置によっては、手術の代わりに、または肝切除と組み合わせて行うことがあります。

定位放射線治療

転移が限られており、手術や焼灼治療が難しい場合には、病変へ集中的に放射線を照射する定位放射線治療が検討されることがあります。

肝転移だからといって、薬物療法だけに限られるわけではありません。

コンバージョン手術とは

コンバージョン手術とは、最初は切除が難しいと判断された転移に対して薬物療法を行い、がんを小さくしてから手術を目指す治療戦略です。

まず、CTやMRIなどで転移の数や位置、周囲の血管との関係を詳しく確認します。

そのうえで抗がん剤や分子標的薬を使用し、一定期間ごとに画像検査で効果を評価します。

薬物療法によって転移が十分に縮小し、すべて取り切れる可能性が高くなれば、手術を検討します。

治療を続けている間に手術の機会を逃さないよう、外科医を含めて定期的に評価することが大切です。

手術が難しい場合の治療

手術でがんをすべて取り切ることが難しい場合でも、治療方法がなくなるわけではありません。

治療の中心となるのは、全身に作用する薬物療法です。

化学療法

大腸がんで使用される主な抗がん剤には、フルオロピリミジン系、オキサリプラチン、イリノテカンなどがあります。

これらを組み合わせたFOLFOX、CAPOX、FOLFIRIなどの治療が広く行われています。

分子標的薬

がんの血管を作りにくくする血管新生阻害薬や、がん細胞の増殖に関係するEGFRを標的とする抗EGFR抗体薬などがあります。

がんの遺伝子タイプや、原発巣が大腸の右側か左側かによって、適した薬が異なります。

免疫チェックポイント阻害薬

MSI-HighやdMMRと呼ばれる特徴を持つ大腸がんでは、免疫チェックポイント阻害薬が高い効果を示すことがあります。

放射線治療

痛み、出血、腸閉塞、骨転移などの症状を和らげる目的で放射線治療を行うことがあります。

緩和ケア

緩和ケアは、治療をやめてから受けるものではありません。

痛み、吐き気、食欲低下、しびれ、不眠、不安などを軽くし、がん治療を続けやすくするため、早い段階から薬物療法と並行して取り入れます。

遺伝子検査で治療が変わる

転移・再発大腸がんでは、治療を始める前にバイオマーカー検査を行うことが重要です。

同じ大腸がんでも、遺伝子の特徴によって効果が期待できる薬が異なるためです。

主に確認するのは、次のような項目です。

MSI-High・dMMR

MSI-HighやdMMRの場合には、免疫チェックポイント阻害薬が有力な選択肢になります。

RAS遺伝子

RAS遺伝子に変異がある場合、抗EGFR抗体薬の効果は期待しにくいと考えられています。

RAS遺伝子に変異がない場合には、抗EGFR抗体薬を含む治療が候補になります。

BRAF V600E遺伝子変異

BRAF V600E変異がある大腸がんでは、BRAFを標的とした薬を含む治療が検討されます。

原発巣の場所

RAS・BRAF遺伝子に変異がない場合には、がんが大腸の左側に発生したか、右側に発生したかも、分子標的薬を選ぶ際の参考になります。

一次治療の考え方

一次治療とは、転移・再発大腸がんに対して最初に行う薬物療法です。

治療内容は、MSI、RAS、BRAFなどの遺伝子検査、原発巣の場所、患者さんの体力、症状、臓器機能などを総合して選びます。

MSI-Highの場合には、免疫チェックポイント阻害薬が候補になります。

RAS変異がある場合には、FOLFOX、CAPOX、FOLFIRIなどの化学療法に、血管新生阻害薬を組み合わせる治療が中心になります。

RAS・BRAFがともに野生型の場合には、原発巣が左側か右側かによって、抗EGFR抗体薬または血管新生阻害薬を組み合わせます。

BRAF V600E変異がある場合には、BRAF阻害薬を含む治療も検討します。

二次治療の考え方

一次治療の効果が弱くなった場合や、副作用のため継続が難しくなった場合には、二次治療へ切り替えます。

基本的には、一次治療で使用していない主要な抗がん剤へ変更します。

一次治療でオキサリプラチンを使用していた場合には、二次治療でイリノテカンを含む治療を検討します。

反対に、一次治療でイリノテカンを使用していた場合には、オキサリプラチンを含む治療が候補になります。

分子標的薬についても、一次治療で使用した薬、RAS・BRAFの状態、原発巣の場所、副作用などを考慮して選びます。

三次治療以降にも選択肢がある

三次治療以降は、全員が同じ順番で治療するわけではありません。

これまでに使用した薬、効果が続いた期間、副作用、患者さんの体力、バイオマーカーなどを踏まえて選択します。

主な薬剤として、次のようなものがあります。

  • ロンサーフとベバシズマブの併用
  • スチバーガ
  • フリュザクラ

また、まだ使用していないオキサリプラチン系やイリノテカン系の薬があれば、それらを改めて検討することもあります。

以前使用した薬でも、一定期間休薬したあとに再び効果が期待できる場合があります。

三次治療以降で確認したいバイオマーカ

標準的な治療を進めたあとでも、遺伝子パネル検査などによって、追加の治療選択肢が見つかる場合があります。

代表的なバイオマーカーは次のとおりです。

HER2

HER2陽性の場合には、抗HER2療法が候補になります。

NTRK融合遺伝子

頻度は低いものの、NTRK融合遺伝子が見つかれば、NTRK阻害薬を検討できることがあります。

RET融合遺伝子

RET融合遺伝子についても、対応する分子標的薬が候補になることがあります。

KRAS G12C

KRAS G12C変異がある場合には、対応する分子標的薬を含む治療が検討されます。

検査をしていなければ、使用できる治療の存在に気づけないことがあります。

これまでにどの検査を受けているか、治療経過の中で改めて整理することが重要です。

大腸がん治療で起こりやすい副作用

大腸がんに使用する薬は、種類によって起こりやすい副作用が異なります。

フルオロピリミジン系

口内炎、下痢、食欲低下、吐き気、手足症候群などが起こることがあります。

オキサリプラチン

手足や口の周りのしびれ、冷たいものに触れたときの痛みなど、末梢神経障害が特徴的です。

治療を重ねると、しびれが長く残ることもあります。

イリノテカン

下痢、骨髄抑制、吐き気、脱毛などに注意します。

トリフルリジン・チピラシル

白血球や好中球の低下、貧血などの骨髄抑制が中心になります。

血管新生阻害薬

高血圧、たんぱく尿、出血、血栓、傷の治りにくさなどが起こることがあります。

抗EGFR抗体薬

にきびのような皮疹、皮膚の乾燥、爪の周囲の炎症、低マグネシウム血症などがみられます。

副作用は、我慢してから伝えるのではなく、早めに医療スタッフへ伝えることが大切です。

休薬や減量、支持療法を適切に行うことで、治療を長く続けやすくなる場合があります。

標準治療だけで悩んだときに確認したいこと

治療の選択肢が少なくなったと感じたときにも、改めて確認できることがあります。

まだ使っていない薬が残っていないか

これまでの治療歴を整理すると、未使用の薬や、再び使用できる可能性のある薬が見つかる場合があります。

手術や放射線治療の可能性はないか

薬物療法によってがんが小さくなっていれば、手術や定位放射線治療など、局所治療が可能になっていることがあります。

治験に参加できないか

新しい薬の承認を目指す治験に参加できる条件が整っている場合があります。

セカンドオピニオンを活用する

別の医療機関の専門医に画像や治療経過を見てもらうことで、異なる視点から治療方針を検討できる場合があります。

「標準治療が難しくなった」ということと、「検討できることが何もない」ということは、必ずしも同じではありません。

大腸がんに対するCIK療法の研究

CIK療法は、患者さん自身の血液から免疫細胞を採取し、体外で増殖・活性化してから体内へ戻す治療です。

資料内では、大腸がんの術後再発予防において、術後補助化学療法へCIK療法を追加した研究と、転移性大腸がんに対して標準治療とCIK療法を併用した第Ⅱ相臨床試験が紹介されています。

これらの研究では、CIK療法を追加したグループで、無病生存期間や全生存期間、無増悪生存期間が延長した可能性が報告されています。

ただし、CIK療法は、現時点で大腸がんの標準治療として確立しているわけではありません。

研究の規模や質、治療方法にはばらつきがあり、すべての患者さんに同じ効果が期待できるものではありません。

CIK療法を検討する場合にも、標準治療の代わりに行うのではなく、標準治療とどのように組み合わせるかを慎重に判断することが大切です。

まとめ|ステージ4でも、治療方針は一つではありません

大腸がんの転移・再発、ステージ4と診断されても、治療方針は決して一つではありません。

転移の場所や数、手術で取り切れるかどうか、がんの遺伝子タイプ、これまでに使用した薬、患者さんの体力や生活状況によって、選択肢は大きく変わります。

転移が限られていれば、手術による根治を目指せることがあります。

最初は手術が難しくても、薬物療法によって転移が小さくなり、コンバージョン手術が可能になることもあります。

手術が難しい場合にも、抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、放射線治療、緩和ケアなどを組み合わせて治療します。

また、三次治療以降でも、遺伝子パネル検査によって新しい治療の候補が見つかる場合があります。

不安なときに、すべてを一人で整理する必要はありません。

まずは現在の状態を正確に整理し、その時点で考えられる治療方針を、医療チームと一緒に一つずつ検討していくことが大切です。

濱元誠栄院長

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この記事を書いた人

1976年宮古島市生まれ。宮古島市立久松中学から鹿児島県のラ・サール高校に進学。鹿児島大学医学部を経て沖縄県立中部病院で研修医として勤務。杏林大学で外科の最先端医療を学んだのち再び沖縄県立中部病院、沖縄県立宮古病院、宮古徳洲会病院に外科医として勤務。2011年9月に上京しRDクリニックで再生医療に従事した後に、18年7月にがん遺伝子治療を専門とする銀座みやこクリニックを開院。

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