乳がんかも?しこりの特徴や痛みの確認見分け方。初期症状や意外な原因とは

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濱元誠栄院長

こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。

今回のテーマは「乳がんを疑うべき症状とは?〇〇もリスクになる?」です。

「乳がんを疑うべき症状」「新たに分かった乳がんのリスク」、最後は「乳がんでよくある質問」についてお話していきます。

目次

年々増えている乳がん

日本人の乳がん患者数は年々増えていて2019年には9万7千人が乳がんと診断され、もうすぐ10万人を超えそうです。これは日本人女性の9人にひとりという計算になります。

また最近、歌手のブラザー・コーンさんが男性乳がんになったことが話題となりました。これまであまり知られていなかった「男性でも乳がんになる」ということが世間に広まりました。ちなみに、2019年に乳がんと診断された男性は670人でした。女性と比べれば少ないですが、男性乳がんも意外といます。

乳がんのしこりの特徴、見分け方

多くの女性が乳房に何か異常を感じて乳がんじゃないかと心配したことがあると思います。そして、乳がんにはどんな症状があるのか、インターネットなどで調べた経験があるのではないでしょうか

乳がんで最も多い症状は「しこり」です。乳がんの約半数は自分でしこりを触知して発見されています。

ちなみに、しこりが何cmくらいの大きさになれば自己触診で見つけることができると思いますか?熟練した乳腺科医だと1cmもあれば見つけることができます。一般の人だと2-3cm大になって初めてしこりを見つけられると言われています。

ただ、一般の人でも普段からよく自己触診していれば乳腺科医と同じく1cm大で見つけることができると言われているので定期的に触診をする習慣を付けましょう。

また検診会場などで触診体験を行っていることがあるので、一度は体験してみてください。

乳がんによるしこりの特徴は以下の3つです。

①ゴツゴツしていて非常に硬い
②触ってもあまり動かない
③しこりに伴う痛みが無い

がんの表面がデコボコしているので、触った感じがゴツゴツしている上に非常に硬いです。また周辺の組織にくっついているので、基本的には乳がんのしこりは動きません。

意外に思うかもしれませんが、炎症性乳がんという特殊なタイプ以外では乳がんのしこりが痛むことはまずありません。

ちなみに乳がんのしこりの7割は乳首より上で見られ、その中でも特に脇に近いところで多く見られます。

しこりを触れたという主訴で病院を受診する人は多いですが、80-90%の人は良性のしこりだと診断されます。乳腺の良性のしこりについて解説します。

①乳腺症

乳腺症は30代から40代の女性に多く、生理不順やストレスなどで女性ホルモンが乱れることで起こると考えられています。

乳腺症では乳腺がところどころ硬くなってゴツゴツした感じになり、痛みを伴います。乳首から透明~白っぽい分泌液が出てくることがあります。

乳腺症ではしこりと痛みがあるので、皆さん乳がんを心配されて受診されます。乳腺症の痛みは不安で強くなる傾向があり、「乳腺症なので心配ない」と言われると痛みが気にならなくなる人が多いです。

昔は「乳腺症から乳がんになる」と言われていましたが、現在はその可能性はないと考えられています。

②線維腺腫

線維腺腫は10代から20代の女性に多く、硬いしこりが触れます。しこりは表面がつるっとしていて、ころころとよく動きます。1個だけ触れる場合がほとんどですが、複数個触れることもあります。

線維腺腫は正常な乳腺組織が異常増殖してできたしこりで、だいたい2-3cmの大きさになると増殖が止まり、40代以降自然と消えていきます。

③葉状腫瘍

葉状腫瘍はかなり稀な良性のしこりで表面がつるっとしていて触るとよく動くので、しこりを触れた特徴は線維腺腫と似ています。

ただ好発年齢が線維腺腫より高めで35歳から55歳でよく見られます。小さいうちは線維腺腫と見分けが付きにくいのですが、線維腺腫のほとんどが3cmを超えないのに対して葉状腫瘍は3cmを超えます。急速に大きくなることがあり、数か月で10cmを超える大きさになることもあります。

葉状腫瘍は基本的には良性の腫瘍ですが、まれに悪性化して肺などに転移することがあります。

④のう胞

のう胞は乳腺の管、乳管が詰まって水風船のようになったものです。35歳から50歳に多く見られ、大きさは数ミリから数cmまで様々で、複数個見られることがほとんどです。

エコーやマンモグラフィで偶然見つかることが多いのですが、柔らかく、小さいうちはしこりとして触れることはまずありません。

大きくなったり、のう胞の中に腫瘍ができたりすると、しこりとして触れるようになります。

のう胞自体は悪性化することはなく、放っておいても閉経後に自然と消失していきます。のう胞内腫瘍がある場合には、まれに腫瘍が悪性化し、乳がんとなることあるので注意が必要です。

⑤乳腺炎

産後に母乳が乳腺に溜まって乳腺炎になるという話は聞いたことがあるかもしれません。それに細菌感染が加わって「急性化膿性乳腺炎」という状態になると、膿のたまりができて、しこりとして触れるようになります。

急性化膿性乳腺炎では他にも乳房の痛み、赤み、熱感、高熱が見られます。

同じような症状を起こし、授乳と関係なく細菌感染が起こる慢性乳腺炎というのがあります。急性化膿性乳腺炎よりも発症がゆっくりで症状が軽いので、乳がんと間違われやすいです。

⑥乳腺以外のしこり

粉瘤などの皮下腫瘍を乳腺のしこりと感じたり、乳腺内の脂肪の塊をしこりとして触れて外来を受診されることもあります。

乳がんと良性のしこりの特徴の違いを知っておけば、自身である程度見分けることができます。ただ、やはり完全に見分けることは難しいので、しこりが気になる方は病院を受診してください。

しこり以外の乳がん症状

次に、しこり以外に乳がんで見られる症状についてお話しします。

①乳頭分泌物

乳腺に病気があると妊娠中や授乳中でもないのに乳頭から分泌物が出ることがあります。分泌物がサラサラした透明の液体や、黄色っぽいミルクのような液体であれば問題ないですが、血液が混じると乳がんの可能性があります。

乳頭分泌物が出る病気は乳がん以外にも乳腺症や乳管内乳頭腫などがあります。

②乳頭の陥没

乳がんが乳頭を引っ張ることで乳頭が陥没してくることがあります。

③乳房のくぼみ

②と同様に、乳がんが皮膚を引っ張ることで皮膚に凹みができることがあります。えくぼ症状とも言われます。

④乳頭や乳輪のただれ

乳房パジェット病という特殊な乳がんで乳房や乳頭が湿疹のようにただれることがあります。

⑤乳房の皮膚の発赤

乳房の皮膚の発赤を起こす原因として、乳がんが皮膚に浸潤して赤くなるものと、炎症性乳がんという特殊な乳がんがあります。炎症性乳がんとは、明らかなしこりがないのに、乳房の皮膚が赤く熱を持ち、急激に広がっていく病気です。

乳がんの症状のまとめ

①しこり
②乳頭分泌物(血性だと乳がんの可能性があります)
③乳頭の陥没
④皮膚のくぼみ
⑤乳頭や乳輪の発赤
⑥乳房の発赤(急速に広がる場合はすぐに病院を受診してください)

これらの症状が一つでもあれば、病院を受診してください。

新たにわかった乳がんリスク「大気汚染」

乳がんになりやすい人は以下の通りです。

①欧米型の食事、高脂肪・高カロリー食が多い人
②特に閉経後に肥満の人
③初潮が早い人
④閉経が遅い人
⑤出産経験のない人
⑥お酒をよく飲む人
⑦タバコを吸う人
⑧糖尿病のある人
⑨ピルを内服している人
⑩家族に乳がんがいる人です。

さらに、最近新たなリスクが発表されました。それが大気汚染です。

アメリカの研究でPM2.5の暴露量が多い地域に住んでいると乳がんの発生率が8%増加するという衝撃の結果が出ました。

ホルモン陽性乳がんだけが増えたことから、大気中の有害物質が体内のホルモンバランスを乱すことが原因なのではないかと考えられています。

もちろん乳がんの原因となるのは一つだけではなく様々な要因がありますので、大気汚染だけが原因となるわけではありません。

乳がんについてのよくある質問

乳がんリスクに一つも当てはまっていないのに乳がんになりました。リスクは当てにならないのでしょうか?

新たに大気汚染がリスクになると分かったように、まだ知られていないリスクもあると思います。これだけ日本で乳がんが増えているので、これまで分かっているリスクだけでは説明が付かないことがあります。重要なのは自己触診と検診で早期発見することです。

妊娠中は乳がんになりにくいのでしょうか?

妊娠中も乳がんを発症することがあります。乳がん検診は受けた方が良いです(被ばくのあるマンモグラフィ検査ではなくエコー検査)。安定期に入ったら、抗がん剤や手術治療を行います。

授乳中です。母乳を介して乳がんが子供にうつることはありますか?

そのような報告はないので、うつらないと思います。授乳中に検診に行けずに、乳がんの発見が遅れてしまう症例もあるので、授乳中でも乳がん検診は受けてください。授乳中の乳腺だとマンモグラフィ検査で見つけるのは難しいので、エコー検査を行います)

ミレーナ(避妊器具)を入れています。乳がんになりやすくなりますか?

海外の報告では、わずかにリスクを上げるようです。

エクオール(大豆イソフラボン)サプリメントは、女性ホルモンと同じ成分と聞きました。乳がんになりやすくなりますか?

サプリメントで摂取する程度のイソフラボンでは、乳がんリスクは上がらないようです。

生理痛でピルを飲んでいますが、乳がんが心配です。止めた方が良いでしょうか。

ピルを内服している人は、1万人に1人くらいの割合で乳がんが増えるようです。そのくらいわずかなリスクを心配するよりは、生理痛をコントロールできるメリットの方が大きいと思います。

濱元誠栄院長

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この記事を書いた人

1976年宮古島市生まれ。宮古島市立久松中学から鹿児島県のラ・サール高校に進学。鹿児島大学医学部を経て沖縄県立中部病院で研修医として勤務。杏林大学で外科の最先端医療を学んだのち再び沖縄県立中部病院、沖縄県立宮古病院、宮古徳洲会病院に外科医として勤務。2011年9月に上京しRDクリニックで再生医療に従事した後に、18年7月にがん遺伝子治療を専門とする銀座みやこクリニックを開院。

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