タバコ以外も原因!肺がんの意外なリスクと初期症状、早期発見のコツ

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濱元誠栄院長

こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。

今回のテーマは「タバコを吸わないのに肺がんに?女性は〇〇が肺がんのリスクになります」です。

「肺がんのリスク」「肺がんの症状」「肺がんでよくある質問」についてお話していきます。

目次

肺がんは、かかる人が多く死亡率も高い

肺がんになる人は年々増えており、最新の情報では1年間に12万6千人が肺がんになっています。その中で男性が約8万人、女性は4万人と男性に2倍も多く見られます。

患者数は男女ともがんの中で4位なのですが、死亡率は男性で1位、女性で2位と、死亡率が高いがんと言えます。

また肺がんは都道府県によって死亡率が異なり、最も死亡率が高いのは男女ともに北海道が1位となっています。これは北海道が喫煙率全国1位であることが関係しているのかもしれません。

肺がんは、がん細胞の「顔つき」によっていくつかのタイプに分けられます。主なものは扁平上皮がん、腺がん、小細胞がんの3つのタイプです。

このうち扁平上皮がんと小細胞がんはタバコとの関連が大きく、腺がんはタバコとの関連が小さいと言われています。

扁平上皮がんと小細胞がんではタバコを吸う人は吸わない人に比べて男性では約13倍、女性では 約17倍がんになりやすいという結果でした。

一方、腺がんについては、タバコを吸う人は吸わない人に比べて男性では2.8倍、女性では2倍このタイプのがんになりやすいという結果でした。

このように肺がんの中でも種類によってタバコの影響度合いは変わりますが、タバコを吸っている人の方が肺がんの発生率が高いことには変わりありません。

ちなみに喫煙指数(吸いはじめてからの年数×一日に吸う本数)によって分けると、喫煙指数が400を超えると肺がんのリスクが高くなります。

例えタバコを吸っていても禁煙すればリスクは下がります。禁煙後10年経てば、タバコを吸わない人と比べてリスクが1.8倍となり、禁煙後20年経てば、タバコを吸わない人とリスクはほぼ同じになります。

原因はタバコ以外にも。肺がんになる様々なリスク

タバコと肺がんについてお話すると「喫煙者がこんなにも減っているのに肺がんが増えているのはおかしい」という意見を言う人がいます。

タバコの煙の中には5000種類を超える化学物質が含まれており、それが気管支や肺の粘膜を傷つけることで肺がんが起こります。

傷ついた粘膜ががん化して肺がんで亡くなるまでには20-30年かかるとされていて、確かに男性の喫煙率の低下に伴い、かなり遅れてではありますが男性の肺がんの年齢調整死亡率は低下してきています。

それなのに、なぜ肺がんになる人が増え続けているのでしょうか。タバコが肺がんの原因であることは間違いないのですが、実はタバコ以外にも肺がんになる原因はあります。

国立がんセンターの調べでは、肺がんの原因がタバコであった患者の割合は男性で68%、女性で18%という結果でした。では、タバコ以外の肺がんのリスクには何があるでしょうか。

まずは大気汚染です。

海外での調査で都市部における大気汚染により肺がんリスクが1.5倍程度にまで増加することが報告されています。最近の研究で、粒子の小さなPM2.5という物質が肺の奥まで到達し、その人の持つがん遺伝子を活性化することで、肺腺がんになりやすくなることが分かりました。

中でもアジア人の女性、非喫煙者でよくみられるEGFR遺伝子異常による肺腺がんに、関係しているようです。

もう一つ意外なリスクが女性ホルモンです。

初潮が早く閉経が遅い、つまり女性ホルモンに長い期間さらされている女性や、女性ホルモンであるエストロゲン補充療法を受けた女性に肺がんの発症率が高いことが分かっています。

女性ホルモンが肺の腺がん細胞の発生に関わっていると考えられています。特に非喫煙者の女性で影響が大きくなるようです。

肺の持病がある人も肺がんのリスクが高くなります。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者さんの10-20%は肺がんを合併するというくらい、CPODは肺がんのリスクとなります。喫煙者で見てみると、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者さんはCOPDを合併していない患者さんと比較してリスクが3-4倍と高くなります。

間質性肺炎も肺がんのリスクとなります。間質性肺炎患者さんは、間質性肺炎がない患者さんと比べて7-14倍リスクが高くなります。肺結核になった後、肺がんのリスクが5倍に増加すると言われ、肺結核の既往のある人の4%に肺がんが発症するとされています。

家族に肺がんがいる人も肺がんのリスクが高くなります。

肺がんの家族歴がある人は、無い人と比べてリスクが2倍になります。遺伝的な要因が関係しているのか、喫煙習慣など同じような生活習慣をしていたからなのか、理由は分かっていません。

アスベストやヒ素、クロロメチルエーテルなどの化学物質は肺がんのリスクと関連しており、それらを扱う職業の人はリスクが高くなります。

また、中華料理も肺がんのリスクになります。正確には「中華料理をする際の油煙」が肺がんのリスクとなります。

中国で主婦の肺がん率が高い原因を調べたところ、換気の悪い台所で油調理による油煙が要因として考えられたということです。また中国の一部では現在でも暖房器具として室内で石炭を焚いており、それも肺がんのリスクと考えられています。

肺がんのリスクについてまとめます。

  1. タバコ(肺がんの最大のリスクとなります)
  2. 大気汚染(非喫煙者の女性で影響が大きいようです)
  3. 女性ホルモン(こちらも非喫煙者の女性で影響が大きいようです)
  4. 肺の持病(COPDや間質性肺炎、肺結核などがリスクとなります)
  5. 肺がんの家族歴
  6. 特定の化学物質を扱う職業
  7. 中華料理などの油調理

肺がんを早期発見するための検査について

上記のリスクがある人は定期的に肺がんを調べる必要があります。

基本的にはレントゲンで良いのですが、レントゲンはがんがある程度の大きさにならないと見つけることがきませんし、心臓の陰に隠れていると見つけにくいなど、見逃しの問題もあります。

半年から1年に1回定期的にレントゲンを撮り、数年に1回はCT検査でより詳しく肺の状態を調べた方が良いです。

CT検査というと放射線の被ばくを気にする人がいます。しかし最近では低線量CTという、放射線の量をかなり抑えたCT検査もあります。

低線量CTは通常のCTの1/10の放射線量しかなく、健康診断で行う胃のバリウム検査で被ばくする放射線量と同じくらいです。数年に1回撮るくらいであれば健康被害はほとんどないと言われています。

肺がんの症状について

肺がんの症状については、以前も解説していますので、今回は簡単に述べます。

【以前の解説はこちら】

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肺がんの症状で最も多いのはです。2週間以上続く咳や、徐々に悪化する咳、喉の痛みや鼻水などの風邪様の症状が見られない咳、血痰が出る咳が見られた場合には要注意です。

次に多いのが体重減少です。その他に呼吸困難、胸痛などが見られます。また、肺の症状が全くなく、脳転移によるけいれんや麻痺、骨転移による骨折など、転移先の症状が先に見られることがあります。

肺の症状のまとめです。

  1. 2週間以上続く咳
  2. 徐々に悪化する咳
  3. 風邪などの症状が見られない咳
  4. 血痰が混じった咳
  5. 体重減少(ステージ4では90%の人に見られます)
  6. 呼吸困難
  7. 胸痛
  8. 転移先の症状

これらの症状は早期ではまず見られません。症状が出る前に見つけるためには肺がん検診を受けてください。40歳以上は毎年受けることができます。

タバコ以外も肺がんのリスクがあるので、非喫煙者でも油断せずに肺がん検診を受けてください。肺がん検診のレントゲンだけでは見つけにくい肺がんもあるので、数年に1回は低線量CT検査をオススメします。定期的な検査を行い、早期発見に努めましょう。

肺がんについてのよくある質問

肺がん検診で痰の検査をする人としない人がいるようですが、何が違うんですか?

50歳以上で、喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の人は、ハイリスクとして喀痰検査も行います。

私はリスクが高いと思うので、いきなりCT検査を受けたいのですが、どうしたらよいですか?

症状がない場合は自費検査となります。CT検査を行える病院で、可能かどうか問い合わせてみてください。

負担の少ないCTかどうかは、どうやって分かりますか?

「低線量CT」かどうか聞いてみてください。

咳と血痰が数か月続いているのですが、肺がん検診を受けてもよいでしょうか?

肺がんを疑うような症状がある場合には、検診ではなく、CT検査が可能な医療機関を受診するよう勧められています。

喘息でかかりつけに通院しています。肺がん検診を受けてもよいでしょうか?

かかりつけの先生に相談してください。呼吸器疾患がある人は、肺がんが無くてもレントゲンで異常が見られ精密検査を勧められることがあります。

加熱式タバコは肺がんにはならないでしょうか?

加熱式タバコは紙巻きたばこと比べて有害物質が少ないですが、一部の有害物質は電子タバコの方が多いので、肺がんのリスクはあるかもしれません。また、タバコの影響が出るのに20-30年かかるので、加熱式タバコがどれくらい肺がんへ影響するのかはまだ分かっていません。

加熱式タバコは煙が出ないので、周りの人も安全?

喫煙者が吐き出した呼気に有害物質が含まれているので、近くにいる人が安全とは言えません。喘息や化学物質過敏症の患者さんが呼気を吸うと、体調を崩すことがあります。

濱元誠栄院長

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この記事を書いた人

1976年宮古島市生まれ。宮古島市立久松中学から鹿児島県のラ・サール高校に進学。鹿児島大学医学部を経て沖縄県立中部病院で研修医として勤務。杏林大学で外科の最先端医療を学んだのち再び沖縄県立中部病院、沖縄県立宮古病院、宮古徳洲会病院に外科医として勤務。2011年9月に上京しRDクリニックで再生医療に従事した後に、18年7月にがん遺伝子治療を専門とする銀座みやこクリニックを開院。

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