子宮頸がんの症状や原因、HPVワクチンの効果や副作用、検診の考え方とは

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濱元誠栄院長

こんにちは銀座みやこクリニック院長の濱元です。

本日は「子宮頚がんは2段階で予防する」というお話です。

目次

「マザーキラー」と呼ばれる子宮頸がんとは

皆さんの周りで「子宮頚がんになった」という人はいますでしょうか?日本人女性の9人にひとりがなる乳がんと比べて子宮頚がんは76人にひとりの割合なので周りで子宮頚がんになったという人はあまりいないかもしれません。

しかし毎年1万人の女性が子宮頚がんと診断されていて芸能人でも子宮頚がんを公表されている人は少なくありません。大御所で言うと和田アキ子さん、大竹しのぶさん、森昌子さん、三原じゅん子さん。他にも吉村比呂さん、仁科亜希子さん、原千晶さん、高橋メアリージュンさん。つい最近ではYoutuberのきりまるさんなどが子宮頚がんを公表されています。

完治した方もいる一方で、吉村比呂さんは先日3度目の再発が見つかり現在、闘病中です。

子宮頚がんは他のがんと比べて圧倒的に若い世代に多く、20代から急に増え始め30代後半がピークとなります。また毎年約3000人が子宮頸がんで亡くなっていて子育て世代の母親が家族を残して亡くなるケースが多いことからマザーキラーとも呼ばれています。

子宮頚がんは予防できる病気です。悲しむお子さんを少しでも減らすために予防について考えてみましょう。

子宮頚がんの95%以上はヒトパピローマウイルスの感染が原因です。ヒトパピローマウイルスは略してHPVとも呼ばれます。

HPVに感染する経路は基本的には性交渉です。性交渉の経験がある女性のうち50-80%はHPVに感染したことがあると考えられています。性交渉を経験する年頃になれば多くの人がHPVに感染しますがそのうちの一部の女性が将来、子宮頚がんを発症することになります。

HPVに感染してから子宮頚がんになるまでの期間は数年から数十年と幅広いです。10代で感染したHPVウイルスによって20代で子宮頚がんになることもあれば、20代で感染し40代で子宮頚がんになることもあります。

なぜそのように発症までに差があるかというと、実はHPVの種類によって発症までの時期が異なります。

HPVには何十種類もあるのですが、そのうちがんになりやすい「ハイリスクタイプ」と呼ばれるものが15種類ほどあります。

中でも「HPV16型、18型」と呼ばれるタイプは特に子宮頚がんになりやすく、しかもがん化までの期間が短いとされています。HPV16型では感染後4年以内に2.5%の人が、18型だと1%の人が子宮頚がんになります。

ということは、早い人は10代で感染して10代のうちに子宮頚がんを発症する可能性もあるということです。

子宮頸がん予防に効果的な「HPVワクチン」とは

そうなると、子宮頸がんはHPVへの感染を予防するのが重要となります。

HPVの感染を予防するには子宮頚がんワクチン(HPVワクチン)が有効です。以前のワクチンは16型と18型だけの2価ワクチンだけでしたが、2023年の4月から他の7種類のハイリスク型を含めた9価ワクチンが公費で受けられることになりました。

9価ワクチンだと子宮頚がんの原因となるHPVの種類の大部分を予防することができます。接種回数は2回で、1回目は小学6年生の年度から15歳の誕生日の前日までに摂取することになっています。

15歳を過ぎていても積極的な接種が控えられていた期間に該当する人、具体的には誕生日が1997年4月2日から2007年4月1日の人は公費で接種することができます。

日本ではHPVワクチン副作用問題があり接種率が1%にまで低下してしまいましたが、諸外国では多い国では接種率が70%と高い状態が維持されていました。そのため先進国は軒並み子宮頸がんの死亡率が年々低下してきており、日本だけが死亡率が増えています。

濱元誠栄院長

HPVワクチンで感染を予防することが、子宮頚がんにならないように亡くならないようにするための第一歩なのです。

子宮頸がん検診とは

子宮頚がんの発症を予防する方法としては子宮がん検診もあります。

HPVに感染してもほとんどの人は子宮頚がんになりません。それはHPVに感染しても70%が1年以内に、90%の人が3年以内に自己免疫で体から排除されるためです。

排除されずに残っている場合は前がん病変である「異形成」と呼ばれる状態に進行していきます。

異形成は前がん病変とは言っても必ずしもがんになる訳ではありません。異形成は軽度→中等度→高度と進んでいきます。

「軽度」異形成、「中等度」異形成で見つかっても大部分の人が自然治癒してしまうので、まずは経過観察となります。レーザーで異形成の箇所を焼いてしまうこともあります。

「高度」異形成の場合には高い確率でがん化することに加え、初期のがんが隠れている可能性があるので子宮頚部を手術で切除します。

ただ手術を行うと妊娠した際に早産・流産のリスクが高まるので、妊娠や出産を考えている若い女性ではレーザー治療だけを行うケースもあります。その場合には再発する危険があるので、定期的に検査をする必要があります。

Youtuberのきりまるさんは「高度」異形成だったのですが、やはり再発を心配して手術を決断されました。

前がん病変や初期の子宮頚がんでは症状が出ません。進行してはじめて性交時の痛みや不正出血(月経以外の出血のことです)、茶褐色のおりものなどの症状が見られます。

進行がんになると子宮を全摘しなければなりません。ですから子宮がん検診を受けて前がん病変である異形成のうちに見つけることが重要なのです。

子宮がん検診は20歳という若い年齢から始まります。20歳でがんになるなんて普通は考えないかもしれませんが、子宮頚がんに関しては十分あり得るので性交渉の経験がある方はぜひ検診を受けてください。

前がん病変のうちに見つけることができればがんを予防することができます。

HPVワクチンの副作用問題の考え方とは

最後に、日本でHPVワクチンの接種率が激減するきっかけとなった副作用問題について私の考えをお話しします。

HPVワクチンの接種が開始となって、たった2か月で重篤な副作用が問題となりました。頭痛や強い疲労感、全身の痛みや関節痛歩行困難、記憶障害など、マスコミが当時こぞってショッキングな映像を流しました。

そのためHPVワクチンは定期接種は続けるものの「積極的に勧めるものではない」と変更されました。

その後の調査ではこれら重篤な副作用が起きたのが1万人に80人ほどで1万人に6人は症状の改善が見られていないと報告されました。副作用の発生率は高くはありませんが、やはり起こる可能性はあります。

濱元誠栄院長

結局は「HPVワクチンの副作用のリスク」と「子宮頸がん予防のメリット」とのバランスだと思います。

HPVワクチンで90%以上の感染を予防できる反面、1万人に6人は回復しない副作用が起きるということを天秤にかけ、どちらを選択するかです。

「ワクチンを接種しなくても子宮頸がん検診だけ受けておけば大丈夫では?」という意見もあります。

しかし最近は検診では見つけにくい「腺がん」というタイプが増えており、それに関してはHPVワクチンで予防するしか方法はありません。

子宮頚がんにならないようにするためには、10代からのHPVワクチンと20歳からの子宮がん検診の2段階で予防を行うことが重要です。

ただHPVワクチンに関しては副作用の問題があるため、リスクとベネフィットを家族でしっかり話し合って決めましょう。

今回のまとめです。

★子宮頚がんの原因はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染がほとんど

★HPVには進行が速く感染から数年で子宮頚がんになるタイプがある

★進行が速いタイプのHPVはワクチンで予防できる

★HPVワクチンは小学6年生の年度から15歳の誕生部前日まで無料で接種できる(15歳を過ぎても無料の場合もある)

★子宮頚がん検診は前がん病変の段階で見つけるための検査で、前がん病変で見つけて対処すれば子宮頚がんを予防できる

★子宮頚がん検診は20歳からはじまり2年に1回行われる

★進行して症状が出た状態で見つかると子宮を全摘しなければならないが、前がん段階や超早期で見つけることができれば妊娠・出産は可能

★HPVワクチンは副作用の問題があるため、リスクとベネフィットをしっかり考えて決めることが大事

濱元誠栄院長

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この記事を書いた人

1976年宮古島市生まれ。宮古島市立久松中学から鹿児島県のラ・サール高校に進学。鹿児島大学医学部を経て沖縄県立中部病院で研修医として勤務。杏林大学で外科の最先端医療を学んだのち再び沖縄県立中部病院、沖縄県立宮古病院、宮古徳洲会病院に外科医として勤務。2011年9月に上京しRDクリニックで再生医療に従事した後に、18年7月にがん遺伝子治療を専門とする銀座みやこクリニックを開院。

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