
Netflix『ダウンタイム』より―がん患者の「生きる」を支える

濱元誠栄院長こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
先日、Netflixで話題となっている『ダウンタイム』を見ました。
特殊メイクを、先日知り合ったアメージング・ジローさんが担当したということもあって、何年かぶりにドラマを見ました
『世界のアメイジング・ジローさんにお会いできた!』先日、特殊メイク界の超有名人、アメイジング・ジローさんとお話しする機会をいただきました!
松岡茉優さん演じる形成外科医・沼田文が、美容医療の世界に入っていく物語です。
美容医療の華やかな部分だけではなく、その裏にあるお金の問題、美しくなりたいという気持ち、医師と患者の距離感や美容医療の裏事情などがかなり生々しく描かれています。(特殊メイクの技術はめちゃすごい)
美容と同じく、”自由診療”であるがん治療に携わっている医師として、考えさせられる場面がいくつもありました。
治療だけに人生を縛られない
私が特に印象に残ったのが、第3話です。
※ここから少し内容に触れます。
余命が短い患者さんが「きれいになりたい」と言ったら
第3話に登場するのは、がんで余命が限られた女性です。
彼女が希望したのは、がんを治す治療ではなく、自分を美しくするための治療です。
病状も良くないので、医師からすると、「美容医療なんてあり得ない」話だと思います。
しかも、末期がんと言う状態の身体に負担をかけてまですることなのか?
ここで、医療者側が気付いていない問題が出てきます。
それが、
患者さんは、病気を治すためだけに生きているわけではない
という事実です。
がんになると、人生の中心が「治療」になっていく
がんと診断された日から、
検査
手術
抗がん剤
放射線治療
血液検査
CT
次回の診察
など、生活の中心が、否応なく「がん」に変わっていきます。
それまで普通にしていたことができなくなります。
そして、見た目まで変わってしまいます。
抗がん剤による脱毛、眉毛やまつ毛の変化、皮膚や爪の変化、手術の傷あとなど、見た目にさまざまな変化が起こります。
当院が勧めているアピアランスケアは、単純に「きれいになるための美容」とは少し違います。
病気になる前の自分に少し近づく、もしくは病気になる前よりもきれいになるためのものです。
最終的なゴールは、
病気だけに支配されない自分を取り戻すためのものだと、私は感じています。
「生きたい」患者さんが自由診療を探すとき
そして、もう一つ。
『ダウンタイム』を見ながら、私は銀座みやこクリニックに来られるがん患者さんのことも考えていました。
当院には、標準治療を受けながら来られる方もいれば、標準治療の選択肢が少なくなり、「他に何かできること」を探して来られる方もいます。
最近、標準治療が終わり、もう打つ手が無くなり緩和ケアを勧められている患者さんで、とても印象的な方がいました。
余命1-2か月で在宅酸素もしており、いろいろな管も繋がれていて、動くのもままならないし、もう自宅でおとなしく最期を迎えるしかないおちうような状態でした。
そんな方が当院に免疫療法で通われていました。
当院には、エレベーター前に6段ほどの急な階段があります。
普通の人にはたった6段でも、末期で両足も浮腫み、筋力も低下し、腹水が溜まっている患者さんには、1段1段が非常に苦痛です。
その患者さんは、6段を10分以上かけて毎回気力で上りました。
(もちろんお手伝いはします)
上り切った後はイスで移動するのですが、上るだけで全精力を使い切ったくらいぐったりされています。
標準治療を終えて、あとは死を待つだけの患者さんだと思っている医師だと、「何でそこまでして頑張るの??」と思うかもしれません。
患者さんが求めているのは、必ずしも「奇跡の治療」ではありません。
「もう少しだけ生きる」ために、「まだ何かできることがあるならやりたい」と思う。
私は、その気持ち自体を否定することはできません。
「縋りついている」のではなく、「諦めたくない」
自由診療を受ける患者さんについて、
「エビデンスの乏しい治療に縋っている」
という表現をされることがあります。
もちろん、科学的根拠を冷静に見ることは必要ですし、効果が証明されていないものを、あたかも治るかのように説明することはあってはなりません。
ただ一方で、患者さんの「生きたい」という気持ちまで、
「エビデンスが無いから」
という一言で切り捨ててしまうのも違うと思っています。
標準治療至上主義の医師たちは、自由診療を探している患者さんの多くが冷静さを失っていると決めつけています。
それは大きな勘違いです。
患者さんは、「何もできないまま諦めた」と思いたくないのです。
そこにあるのは、治療への執着ではありません。人生への執着です。
医療従事者は、所詮 「患者さんが主役の人生というドラマの中で、主治医や看護師という役を一時的にもらった脇役」です。
その脇役が、患者さんの人生の執着を否定している今の医療現場は、何だかなぁと思います。
「きれいになりたい」と「生きたい」は、意外と近い
ここで、『ダウンタイム』の話に戻ります。
余命が限られているのに美容医療を受けたい人。
標準治療が難しくなっても、できる治療を探し続け、状態が悪くても諦めない人。
これらは、全く違うように見えても、根っこの部分では近いのではないかと思いました。
このまま人生を終わらせたくない。
という気持ちが共通項にあります。
「もう長くないのだから、美容なんて必要ない」
「標準治療がないのだから、もう治療を探しても仕方がない」
周囲から見れば合理的な考え方かもしれません。
でも、人生を生きている本人にとっては、
今日も明日も、自分の時間です。
きれいになって出かけたい。
人に会いたい。
もう少し治療を続けたい。
少しでも長く生きたい。
その気持ちに、医学だけで簡単に順位をつけることはできません。
銀座みやこクリニックに、がん治療と美容の両方がある理由
銀座みやこクリニックでは、がん治療の相談や自由診療を行う一方で、美容皮膚科やアピアランスケアにも取り組んでいます。
一見すると、
「がん治療」と「美容」
は、まったく違う医療に見えるかもしれません。
でも、私の中ではそれほど離れていません。
「今ある時間を、どう生きるか」
にどちらもつながっています。
もちろん、免疫療法を含めた自由診療なら何でもよいわけではありませんし、美容医療も、すべての患者さんに必要なものではありません。
だから私たちは、勧めることよりも、
その人が何を望んでいるのかを知り、その選択に医療としてどう関われるかを考えること
が大切なのだと思っています。
「治す」だけれはなく、「生きる」を支える
医療は長い間、
「病気を治す」
「命を延ばす」
ことを中心に発展してきました。
もちろん、それはとても大切なことです。
でも、がん患者さんを診ていると、医療はそれだけでは足りないと痛感します。
治療を受けながら生きる時間。
治療が難しくなってからの時間。
その時間にも、患者さんには生活があります。
希望があります。
見た目を整えたい日もあります。
もう一度治療に挑戦したい日もあります。
だから私たちが支えるものは、単に「がん」だけであってはならないのです。
治したい
生きたい
きれいでいたい
自分らしくいたい
これらは、必ずしも別々の願いではありません。
全部、
「まだ自分の人生を生きたい」
という一つの気持ちから出てくる願いなのです。
Netflix『ダウンタイム』を見ながら、がん治療と自由診療、そして美容を同じクリニックで行っている意味について、改めて考えました。
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