肝臓の痛み原因は?現れる症状、危険サイン14選と見分け方
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こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
今回のテーマは「沈黙の臓器、肝臓が出すSOSサインとは」です。
「皮膚に現れる肝臓病のSOSサイン」「皮膚以外の肝臓病のSOSサイン」「肝臓病についてのよくある質問」についてお話していきます。
肝臓は『沈黙の臓器』
『肝臓は沈黙の臓器である』という言葉を聞いたことがあるでしょうか。私たちの体はどこかに異常が起こると痛みを感じたり、かゆみや熱感を感じたりと様々な症状が出ます。
しかし肝臓には痛みなどを感じる神経が存在しないため異常が起こっても自覚症状が現れません。そのため肝臓に病気があっても気付きにくく、気付いた時には病気がかなり進んでいることがあります。
また肝臓は3分の2を切除しても元の大きさに戻るくらい再生能力が高いです。肝臓病で細胞が多少ダメージを受けても正常細胞が増殖したり余分に働いたりして、基本的には普段と変わらない生活を送ることができます。これらが『沈黙の臓器』と言われる所以です。
肝臓の病気で一番多いのはB型肝炎、C型肝炎で過半数を占めます。その他はアルコール性肝障害、脂肪肝、薬剤性肝障害、自己免疫性肝炎、肝臓がん、がんの肝臓への転移などがあります。
肝臓自体は自覚症状が乏しいため、これらの診断が遅れがちになりますが、肝臓から離れた場所、例えば皮膚で肝臓病による症状が出ることがあります。
肝臓病で見られる皮膚症状
肝臓病で見られる皮膚のSOSサインは以下の通りです。
①皮膚が黄色くなる
肝臓の機能が低下してくるとビリルビンと呼ばれる黄色い色素が代謝できずに血液中に増加します。血液中にビリルビンが増えると皮膚が黄色く染まってきます。白目の部分も黄色く見えるようになります。
②皮膚がかゆくなる
肝臓の機能が低下してくると脳のかゆみを感じる箇所で異常が起き、見た目に皮膚の異常が無くてもかゆみが出ることがあります。このかゆみは抗ヒスタミン薬でも改善せず、掻いても緩和されないという特徴があります。
また、①のようにビリルビンで皮膚が黄色くなった際にはビリルビンが皮膚のかゆみを感じる神経を刺激してかゆみが起こることがあります。
③顔が浅黒くなる
肝機能が低下すると、皮膚のメラニン色素による色素沈着が起き、顔が浅黒く見えることがあります。
④クモのような模様ができる
肝臓が長期間ダメージを受けるとインスリンや女性ホルモンなど様々なホルモンの異常が起きてきます。女性ホルモンであるエストロゲンが増えると皮膚の血管が広がる「血管拡張」が見られることがあります。
血管拡張が起こった結果、顔や首、胸に、赤い点状の血管拡張とそこから四方に伸びる細く蛇行した血管が見られます。クモが足を延ばしたように見えるため「クモ状血管腫」と呼ばれます。
クモ状血管腫は妊娠中の女性やピル(経口避妊薬)を内服している女性でも見られます。
⑤鼻が赤くなる
クモ状血管腫は鼻の頭に起きやすく、鼻の頭がトナカイのように赤くなることがあります。
⑥手のひらが赤くなる
クモ状血管腫と同じく、エストロゲンによって手のひらの血管が拡張して赤くなっていると考えられています。
特に親指の下のふくらみ(母指球)と小指の下のふくらみ(小指球)が赤くなり、手のひらの真ん中凹んだ部分の色があまり変わらないので赤と白のコントラストが特徴です。
また心臓より高い位置に手を挙げるとコントラストが強くなり、心臓より下に手を下げると手のひら全体が赤くなってコントラストが分かりにくくなるという特徴もあります。
⑦お腹の皮膚がボコボコになる
肝臓の障害が進み肝臓が硬くなる状態、肝硬変になると血液が肝臓に行きにくくなり、肝臓を経由して心臓に戻る血液が渋滞を起こします。その迂回路として全身のあちこちの細い血管が使われ、血流が増えることでコブのように膨らみます。
お腹の皮膚の皮下の静脈が膨らむと皮膚がボコボコとした感じに見えます。メドゥーサの頭に生えた蛇のようにみえるため、このお腹の皮膚がボコボコした感じを医学用語でメドゥーサの頭と言います。
肝臓の異常によって皮膚に見られる症状のまとめです
- 皮膚が黄色くなる
- 皮膚がかゆくなる(湿疹など見た目の異常が無くてもかゆくなることがあります)
- 顔が浅黒くなる
- クモのような模様ができる(妊娠中やピルで起こることもあります)
- 鼻が赤くなる
- 手のひらが赤くなる(親指と小指の下のふくらみが特に赤くなります)
- お腹の皮膚がボコボコになる
皮膚以外の症状について
肝臓の機能が悪くなって現れる皮膚以外の症状は以下の通りです。
①鼻にツンとくる口臭
肝臓には食べ物を消化した際に発生するアンモニアを代謝する働きがあります。肝臓の機能が低下すると代謝できなくなったアンモニアが口臭となって現れます。
②爪が白くなる
肝臓の機能が悪くなると爪全体が真っ白になったり、白い線が出たりすることがあります。
③紅茶色の尿が1日中出る
黄疸の原因となるビリルビンが尿に排泄されるので、オレンジから茶褐色の尿が出るようになります。
④お酒に弱くなる
『以前よりも早くに酔いがまわる』『二日酔いが残りやすい』『酒の味がまずく感じる』といった症状が見られることがあります。
⑤全身の倦怠感
『最近疲れやすくなった』『同じことをしていても、今までと妙に疲れかたが違う』といった症状が見られることがあります。
⑥右脇腹の重苦しさ
肝臓がんや肝転移などで肝臓が腫大した場合、『右脇腹の鈍い痛み』『背中の右側が凝る』といった症状が見られることがあります。
⑦出血しやすくなる
肝臓機能が悪くなると、肝臓で作られる血液を固まらせる物質が減って出血しやすくなります。『鼻血が出やすい』『青あざが目立つ』『歯茎から血が出やすい』などの症状が見られたら要注意です。
肝臓の異常によって見られる、皮膚以外の症状のまとめです
- 鼻にツンとくる口臭(アンモニアの臭いがします)
- 爪が白くなる(全体が白くなる場合と、白い線ができる場合があります)
- 紅茶色の尿が1日中出る
- お酒に弱くなる
- 全身の倦怠感
- 右脇腹の重苦しさ
- 出血しやすくなる
肝臓は沈黙の臓器と言っても、離れた場所や全身で何かしらのSOSサインを出します。これらを頭に入れておいて一つでも該当する症状があれば、すぐに病院を受診してください。
肝臓病についてのよくある質問
- 会社の健康診断で「肝機能に異常がある」と指摘されました。どうしたらよいでしょう?症状はありません。
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肝機能異常の原因には、肝炎ウイルス、薬剤、アルコール、脂肪肝などがあります。肝臓は症状が出にくいので、無症状でも消化器内科を受診してください。
- 会社の健康診断で肝機能に異常が無ければ、肝炎ウイルスに感染していないと考えてよいですか?
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肝炎ウイルスに感染していても肝機能が正常な人はいますので、感染していないとは限りません。
- 肝炎ウイルスの検査はどこで受けられますか?
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ほとんどの病院や診療所で受けることができます。また保健所では無料で受けられることがあります。
- 肝臓病は安静が大事と聞きましたが、運動は肝臓に悪いのでしょうか?
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肝硬変などで肝不全になっている場合を除いては、問題ありません。肝臓病の人は筋肉量が落ちてくるので、むしろ程度な運動で筋肉を維持した方が良いです。
- 肝臓に良い食べ物はありますか?
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肝臓をよくするという証拠のある食べ物はありません。シジミやレバー、ウコンが肝臓に良いと言われていますが、摂りすぎると逆に肝臓に負担になります。
- 肝臓に悪い食べ物はありますか?
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鉄分を多く含む食べ物、例えばシジミやレバー、ウコンなどは、肝臓が弱っている時はかえって悪化させます。アルコールも肝臓に悪いです。
- 肝臓がんが分かる腫瘍マーカーはありますか?
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肝臓がんで上昇する腫瘍マーカーはありますが、基準値内のこともあるので、完全には分かりません。
- ミカンを食べた後に手が黄色くなるのも、体に悪いんですか?
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ミカンのカロテンという色素が、手の角質層に沈着して黄色くなることがあります。黄疸と勘違いされることもあります。色素は角質層で止まっているので特に体に害はないようです。
- 白目のところに黄色いできもの(?)があります。黄疸でしょうか?
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黄疸は白目全体が黄色くなるので、そうでなければ瞼裂斑(けんれつはん)と言って、紫外線などの影響で見られるものかもしれません。瞼裂斑の場合は、充血を伴うことが多いです。
- 風邪をひいた後に健康診断を受けたら肝機能が悪いと言われ、専門病院を受診するころには正常になっていました。そんなことあるのでしょうか
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風邪のウイルスで肝機能が一時的に悪くなることがありますが、時間とともに戻ります。
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