突然すい臓がんステージ4!? 症状やリスク、早期発見で完治に努めるコツ

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濱元誠栄院長

こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。

今回のテーマは「膵臓がんは治るのか?膵臓がん末期の症状と最新の治療法」です。

「膵臓がんを疑うべき症状と膵臓がんの検査をした方が良い人」「膵臓がんの治療」「膵臓がんについてよくある質問」についてお話していきます。

目次

膵臓がんは増えつつある

最近、有名人や周りで膵臓がんになったという話を耳にすることが増えていませんか?膵臓がんの患者数はこの20年で2倍に増えていて、すべてのがんの中で患者数が6位にまで上がっています。

膵臓がんを公表した有名人も多く、大相撲の九重親方、元プロ野球の星野仙一さん、女優の八千草薫さん、歌舞伎の坂東三津五郎さん、アップルの創始者スティーブ・ジョブズさん、沖縄県の翁長雄志知事、最近ではYoutuberのみずきさん、評論家の森永卓郎さんなどがいます。

膵臓がんの代表的な症状とは

膵臓がんは検査では発見しにくいためか、症状が出てから見つかる人が多いです。膵臓がん患者さんの約8割は症状が出てから見つかったと言われています。

初期の膵臓がんで症状が見られることはほとんどなく、基本的には進行してから症状が出ます。

膵臓がんの症状で最も多いのは腹痛で80%の人で見られます。

膵臓はみぞおちからお腹の左横にかけて延びている臓器で、みぞおちあたりの痛みが最も多く見られます。

また、膵臓はちょうど胃の真裏に位置するので胃の痛みと勘違いされてしまうこともあります。ただ、胃の痛みは食事で悪化することが多いですが、膵臓がんによる腹痛は食事に関係なく常に痛いという特徴があります。

まれですが、膵臓がんが急性膵炎を引き起こし、急激にみぞおちの痛みが出現することがあります。星野仙一さんも急性膵炎で入院した際に膵臓がんが見つかったそうです。

膵臓の左側は背中よりに位置するため、腹痛だけでなく、左側の背中の痛みを訴えることもあります。実は膵臓がんで背中が強く痛んで整形外科を受診する人は少なくありません。

膵臓の周りには痛みを感じる神経が多く、膵臓がんが進行してくると激痛になります。痛みまではいかなくても膵臓がんの4人に1人は診断される半年前から腹部の重苦しさ張り感を感じるというデータがあります。

お腹の張りで胃カメラをしても異常がなく、結局膵臓がんだったということもあります。

その他の症状として、食欲低下があります。

腹痛やお腹の張りで食欲がなくなることもありますが、消化液である膵液の分泌が減り、脂肪分の消化や吸収が悪くなることで、食欲が低下すると考えられています。

また、脂肪分の吸収が悪くなると、便の中に脂肪分が多く含まれるようになり、白っぽく脂の浮いた脂肪便が出るようになります。脂肪便は少し下痢っぽいので、下痢と勘違いされることがあります。

膵臓は横長の臓器で、がんができる場所によっても症状が異なります。

膵頭部(膵臓の頭と書きます)では肝臓や胆のうに近いので、このあたりにがんができると胆管という胆汁の通り道を塞いでしまい、比較的早い段階から黄疸が出ます。Youtuberのみずきさんは、お腹の重苦しい感じが続いているところに黄疸が出てきて、そこで初めて検査をして見つかったそうです。

反対に、膵尾部(膵臓の尾っぽと書きます)は進行しても黄疸が出ることはありません。

膵臓がんの症状のまとめです。

  1. みぞおちあたりの強い痛み 食事に関係なく痛みます
  2. 背中の強い痛み 背中の左側が痛みます
  3. お腹の重苦しさや張った感じ 診断される半年前から見られることもあります
  4. 体重減少 半年で10%以上体重が減ったら要注意です
  5. 食欲低下
  6. 脂肪便 下痢と間違われることがあります
  7. 黄疸 膵頭部のがんで見られます

この他にも、症状ではないのですが、糖尿病が悪化するのも膵臓がんの特徴の一つです。

これまで糖尿病が落ち着いていた人が急激に悪くなったり、血糖値が正常で糖尿病と無縁だった人が半年で急に糖尿病になったりして、調べたら膵臓がんが見つかったということがあります。

膵臓がんになるリスクが高い人とは?

さて、膵臓がんは治療が難しく生存率が極めて低いことから「がんの王様」と言われています。2019年のデータでは43800人が膵臓がんと診断され、37600人が膵臓がんで亡くなっていますので、単純に計算すると膵臓がんと診断された人の約85%が亡くなっています。

膵臓がんは症状が出たときにはすでにステージ4であることが多く、ステージ4の5年生存率は1%と非常に厳しいです。膵臓がんを治すためには、症状が出る前に見つけることが最も重要です。ただ、誰でも彼でも膵臓がんを疑って検査するのではなく、リスクが高い人が定期的に検査を行うのが良いと思います。

膵臓がんで最もリスクが高いのが家族歴です。

膵臓がん患者の10~20人に1人は親きょうだいや子に膵臓がんがいるとされています。また、親兄弟に膵臓がんが3人以上いる場合には、通常の人と比べて膵臓がんのリスクが32倍に跳ね上がります。

次に、生活習慣病もリスク要因です。長年、糖尿病を患っている人は膵臓がんのリスクが約2倍となります。

他にも、肥満の人もリスクが高くなります。

特に若い男性の肥満ほどリスクが高くなると言われています。

タバコも膵臓がんのリスクと大いに関係があります。特に1日40本以上吸う人は、膵臓がんのリスクが3倍に上がります。

膵臓の病気もリスクになります。慢性的に膵臓の炎症が起きている状態、慢性膵炎の場合には膵臓がんのリスクが10倍以上になります。慢性膵炎の原因は主に大量飲酒です。

また、家系的に慢性膵炎を発症するケースがあり遺伝性膵炎と呼ばれます。遺伝性膵炎は膵臓がんのリスクが60-80倍に上がるとされており、若くして膵臓がんになることがあります。

他に、ちょっと専門的にはなりますが膵膿疱といって液体のたまった袋ができる病気や、IPMNという膵臓の良性腫瘍が見られる人も膵臓がんになるリスクが高いです。

膵臓以外では胆石のある人、B型、C型肝炎ウイルスに感染している人、胃がんの原因として知られているピロリ菌に感染している人も膵臓がんのリスクが高まると言われています。

膵臓がんのリスクが高い人についてまとめます。

  1. 身内に膵臓がんがいる人
  2. 糖尿病の人
  3. 肥満の人 特に若い男性の肥満で高くなります
  4. タバコを吸う人 1日40本以上吸う人はさらにリスクが高まります
  5. 膵臓の病気がある人
  6. 胆石、B型、C型肝炎ウイルス感染、ピロリ菌感染のある人

膵臓がんを発見する検査について

膵臓がんを見つけるための検査には、腹部エコー検査、CT検査、MRI検査があります。

膵臓は胃の裏側にあり大腸ガスなども邪魔をするのでエコー検査では見逃してしまうことがあります。また、CT検査も造影剤を使わなければがんを映し出すのが難しいです。

最も有用なのがMRI検査です。

膵臓のMRI検査は造影剤も使わないし被ばくの心配もありません。無症状の場合には保険がきかないので自費で受けることになります。

自費で受けられる病院は限られているので、膵臓がんドックをお勧めします。膵臓がんドックでは主にMRIでの検査となります。

身内に膵臓がんがいる人、膵臓の病気がある人は、1‐2年に1回は膵臓のMRI検査を行うことをお勧めします。定期的に検査することで超早期の膵臓がんを見つけることが可能になります。

膵臓がんの治療について

膵臓がんで完治を目指すには手術しかありません。膵頭部にがんが存在する場合には、周辺の臓器である胃、十二指腸、胆のう、胆管を一緒に切除するという大手術になります。膵尾部に存在する場合には、膵臓の一部と脾臓を切除する手術になります。

膵臓がんのやっかいなところは、ステージ1という、通常のがんであれば早期と呼ばれる段階で発見し手術したとしても、高い確率で再発するところです。

膵臓がんはサイズが小さいうちから転移する傾向があるため、ステージ1だと思っていても目に見えない転移が存在している可能性があります。

大手術で体が弱った時に転移箇所のがんが暴れ出し、手術後早い段階で転移が見つかることがあります。そのためステージ1とは言っても、5年生存率は50%ほどしかありません。ちなみに翁長知事は手術後約3か月で、九重親方や坂東三津五郎さんも手術後1年以内に転移が見つかっています。

手術後早期での再発を防ぐために、最近では手術の前に抗がん剤治療を行い、体内に存在するがん細胞を少なくしてから手術を行うようになりました。術前の抗がん剤治療の導入で今後は生存率が向上していく可能性があります。

また、ステージ1の中でも大きさが1㎝以下の小さな膵臓がんの場合には転移している可能性がより低くなり、5年生存率が80%と高いです。膵臓がんはできるだけ早く小さなうちに見つけることが重要なのです。

手術ができない状態、主にステージ4の膵臓がんでは抗がん剤治療しか選択肢がありません。ただ、抗がん剤もなかなか効きにくく、膵臓がんのステージ4の5年生存率は1%と非常に厳しいものとなっています。

世界中で膵臓がんを克服しようと様々な新薬の研究が行われているので、今後に期待です。

濱元誠栄院長

難治性の膵臓がんと言えど超早期で発見すれば治る確率は高くなります。リスクが高い人は定期的に検査を行い、超早期発見に努めましょう。

膵臓がんついてのよくある質問

人間ドックのエコー検査で、膵臓は“描出不良”とありました。どういう意味でしょうか。

膵臓が大腸や胃の裏にあるので、ガスなどが邪魔をしてすべてを見るのが難しいことがあります。そんな時には“描出不良”と報告します。心配であればエコー以外の方法で検査することをお勧めします。

人間ドックのエコー検査で、“主膵管が拡張”とありました。悪い所見でしょうか。

主膵管とは膵液を分泌する管ですが、何らかの理由で狭くなったり詰まったりして流れが悪くない拡張することがあります。膵臓がんが隠れている可能性もありますので、一度MRI等で検査することをお勧めします。

人間ドックのCT検査で、“膵のう胞”が見つかりました。がんでしょうか?

のう胞とは、水がたまった袋のことを言います。膵炎などの炎症でできる場合と、腫瘍によってできる場合があります。造影CTやMRIでより詳しく検査することをお勧めします。

人間ドックで、膵臓の腫瘍マーカーを調べてもらったら正常でした。安心して大丈夫ですか?

膵臓がんでも腫瘍マーカーが上昇しない場合があるので、安心とは言えません。

親戚に膵臓がんの人がいます。自分もやばいですか?

第一親近者(親・きょうだい)に膵臓がんがいるとリスクが高くなることが分かっていますが、親戚で高くなるかどうかは分かりません。

糖尿病と膵臓がんが関係あると聞きました。膵臓の検査をした方が良いですか?

一度は調べた方が良いと思います。また、急に悪化した場合なども調べた方が良いです。

背中がすごく痛くて、整形外科に行っても骨には異常がないと言われました。膵臓がんの可能性はありますか?

一度、調べてみた方が良いと思います。

市販の遺伝子検査キットで、膵臓がんのリスクが高いと出ました。なる確率は高いですか?

市販の検査キットの正確性は不明なので、何とも言えません。

膵臓がんはやせている人がなるイメージだったのですが、最近なった知り合いは太っていました。本当に膵臓がんなのでしょうか。

肥満は膵臓がんのリスクになるので、太っている人もいます。

濱元誠栄院長

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この記事を書いた人

1976年宮古島市生まれ。宮古島市立久松中学から鹿児島県のラ・サール高校に進学。鹿児島大学医学部を経て沖縄県立中部病院で研修医として勤務。杏林大学で外科の最先端医療を学んだのち再び沖縄県立中部病院、沖縄県立宮古病院、宮古徳洲会病院に外科医として勤務。2011年9月に上京しRDクリニックで再生医療に従事した後に、18年7月にがん遺伝子治療を専門とする銀座みやこクリニックを開院。

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