
胃がんで胃全摘は大丈夫?食事・後遺症・余命とステージ4の選択肢
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濱元誠栄院長こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
今回は「胃がんで胃を全摘しても大丈夫?」というテーマでお話しさせていただきます。
「胃がんで胃を全部取りましょう」と言われた時、頭が真っ白になった方も多いのではないでしょうか。「本当に生きていけるの?」「食事はどうなるの?」と不安になりますよね。

今日はそんな疑問に対して、外科医として胃がんの手術も数多く行ってきた私の視点から、1つずつお答えしていきます。
胃を全部取っても、人は生きていける
まず初めに結論からお伝えします。胃を全部取っても、人は生きていけます。
これははっきりと言い切れます。
胃というのは、食べ物を一時的に貯めて消化を助ける「袋」のような臓器です。
実は、栄養をしっかり吸収しているのは胃ではなく、その先にある「小腸」なのです。
そのため、胃がなくなっても食べ物は食道から直接小腸に流れ、きちんと栄養として吸収されます。
イメージとしては「家にある大きな冷蔵庫がなくなって、その日に必要な分だけこまめに買い物に行くような暮らしに変わる」そんな感じです。
不便にはなりますが、生きていけなくなるわけではありません。
なぜ「全摘」を選ぶのか?(胃を残せない理由)
「部分的に取るだけじゃダメなの?」「少しでも残せないの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
胃をなるべく残したいのは、私たち医師も同じです。
胃が残っていれば食事もしやすく、体重も減りにくくなりますからね。
それでもあえて「全摘」を選ぶのは、主に次のようなケースです。
- がんが胃の上のほう(食道に近い場所)にできている時
- がんが胃の広い範囲に広がっている時
- スキルス胃がんのように、胃壁全体に染み込むように広がるタイプの時
中途半端に胃を残すと、がんを取り切れないリスクが高くなってしまいます。
逆に言うと、全摘を勧められたということは「しっかり取らないと根治が難しい」と専門医が判断したサインでもあるのです。
胃がん全摘後の「生存率」とセカンドオピニオン
気になる生存率についてもお伝えします。
国立がん研究センターのデータによると、胃がんの5年生存率は以下のようになっています。

- ステージ1:約93%
- ステージ2:約67%
- ステージ3:約41%
- ステージ4:約7%
ここで大事なのは、これはあくまで全体の「平均値」であるということです。
同じステージでも、年齢や体力、がんの性質、そして受ける治療によって結果は大きく変わります。
決して「ご自身の数字」と決めつけないでください。
もし「本当にこの治療方針でいいのだろうか」「全摘しなければならないのだろうか」と少しでも迷いがあるなら、セカンドオピニオン(別の医師の意見を聞くこと)は患者さんの正当な権利です。
遠慮する必要は全くありません。
術後の食事はどう変わる?3つのポイント
多くの方が一番不安に感じる「食事」のお話です。胃を全摘すると、食事のスタイルは確実に変わります。
しかし、食べる楽しみがなくなるわけではありません。
具体的なポイントを3つご紹介します。
1. 1度に食べられる量が減る
胃という「貯める袋」がなくなるため、一度にたくさん食べられなくなります。
手術直後は、うどん1杯でお腹いっぱい、煮込んだ人参一切れでギブアップ、というレベルです。
2. 1日5〜6回に分けて食べる
「1日3食をしっかり」ではなく、朝・10時・昼・15時・夜・寝る前……というように、こまめに分けて食べるスタイルになります。
おやつが大事な栄養補給になります。
3. 「ダンピング症候群」への対策
胃という「ゆっくり流すための調整弁」がなくなったせいで、食べ物が一気に小腸に流れ込み、めまい・冷や汗・動悸などが起こる「ダンピング症候群」という症状が出ることがあります。
しかし、「よく噛んでゆっくり食べる」「食事中に水分を摂りすぎない」といった工夫でかなり防ぐことができます。

術後1年ほどは消化の良いものを選ぶ必要がありますが、それを過ぎれば、お寿司もお肉もビールだって少しずつ楽しめるようになります。
実際にグルメブロガーをされている胃全摘の患者さんもいらっしゃるんですよ。
術後の体力低下と、気をつけたい後遺症
体力と体重の回復ペース
術後1〜3ヶ月の間に、元の体重の10〜20%ほど減るのが一般的です。
これは胃を取ったから痩せたのではなく、胃から分泌されるホルモンが減ることで「食欲そのものが落ちる」ことが大きな原因です。
- 術後すぐ: 自宅で軽く過ごし、散歩から始めます。
- 術後1〜2ヶ月: デスクワークなら職場復帰できる方が多いです。
- 術後3ヶ月〜: 体を使う仕事も少しずつ戻せるようになります。
- 術後半年〜1年: 体重も増え始め、生活が落ち着いてきます。
元の体重まで完全に満たない方も多いですが、減った体重で安定し、日常生活に支障がなければ、それが「新しい健康な状態」と考えて良いでしょう。
後遺症(貧血・骨粗しょう症)の予防
胃全摘後に特に気をつけたいのが、貧血と骨粗しょう症です。
胃で作られていたタンパク質がなくなることでビタミンB12が吸収できなくなり、貧血になりやすくなります。
そのため、2〜3ヶ月に1回ほどビタミンB12の注射を受けることが推奨されます。
きちんと通院して管理すれば、貧血も骨も守れます。
「もう治療法がない」と言われたステージ4・末期がんの方へ

「ステージ4なので完治は不可能です」 「もう抗がん剤しかないが、体力が耐えられない」 「これ以上できる治療はありません」
このように宣告され、治療法を求めていわゆる「がん難民」となってしまう方がいらっしゃいます。
しかし、「もう治療法がない」という言葉は「標準治療の中ではもう次の手がない」という意味であって「世界中のあらゆる治療を試した結果、何もない」という意味ではありません。
日本の保険診療(標準治療)はとても優れており、私たちもまずは標準治療を第一にお勧めします。
しかし、標準治療はあくまで「全ての人に使える、平均的に一番効果のある治療」です。
その枠に当てはまらなかった方には、次の手がないという結論になってしまいます。
「自由診療」というもう一つの選択肢
実際には、保険適用の範囲外(自由診療)に以下のような選択肢があります。
- 免疫療法
- 高濃度ビタミンC点滴
- 温熱療法
- 東洋医学やサプリメントによる体力サポート
これらは標準治療の代わりではありません。「標準治療と組み合わせて、患者さんの体を支えながらがんに抗っていく」という考え方です。
例えば、抗がん剤の副作用が辛い方の体力を底上げしたり、胃全摘後の体力回復を栄養・免疫面からサポートしたり、再発を防ぐために体の防御力を高めておくといったアプローチが可能です。
まとめ:一人で悩まず、最適な選択肢を一緒に考えましょう
私自身も外科医だった頃は、自由診療に対して懐疑的なイメージを持っていました。
しかし、標準治療では難しいと言われた患者さんが、別の治療法で笑顔を取り戻されるのを何度も見てきました。
選択肢を知らないだけで治療を諦めてしまうのは、本当にもったいないと強く感じています。













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