大腸がんは治る?末期やステージ4の症状と注目の新治療
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こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
今回のテーマは「大腸がんは治るのか?大腸がん末期の症状と注目の新治療」です。
「大腸がんの初期から末期で起こる症状」「大腸がんの一般的な治療経過と注目の治療法」「大腸がんについてよくある質問」についてお話していきます。
年々増える大腸がん
大腸がんと診断される人は年々増えていて、この40年で約7倍になり、年間13万人が大腸がんと診断されています。
現在、男性で大腸がんと診断される人の数は前立腺がんに次いで2位で、男性の11人にひとりが大腸がんになる計算になります。女性では乳がんに次いで2位で、女性の14人にひとりが大腸がんになります。
また最近では若者の大腸がんが急増しており、若いから大丈夫というがんではなくなってきています。診断される人が増えるのに伴い死亡者数も増え、がん全体の死亡者数の中で男性では3位、女性ではここ20年間ずっと1位です。
有名人でも大腸がんになった人は多く、桑野信義さん、鳥越俊太郎さん、トミーズ雅さん、原口文仁さん、山本譲二さんなどが闘病されています。残念ながらお亡くなりになりましたが、あき竹城さん、今井雅之さん、島田陽子さん、ジャイアント馬場さん、坂本龍一さんも闘病されていました。
大腸がんの効果的な検査方法
大腸がんは早期のうちは全く症状が出ません。症状が出る前に見つける方法で最も行われているのが便潜血検査です。検診や人間ドックで便をちょこちょこっとこすって提出したことがあると思います。あれが便潜血検査です。
大腸がん検診でも便潜血検査を行います。2日続けて検査して1回でも潜血が認められたら陽性となります。
大腸がんの場合、便が大腸の中を通っていく際に大腸がんの表面が傷つき出血を起こします。(すり傷みたいなイメージです)。
超微量の出血なので目には見えないのですが、検査ではその微量な出血を検出し大腸がんの有無を調べることができます。
大腸がんの約30%が便潜血検査で発見され、そのうちの70%がステージ1、2であることを考えると、体に負担のない便潜血検査はぜひとも活用して欲しいと思います。便潜血検査はがん検診だと無料ですし、自費でも1000円くらいで受けることができます。
もう一つ、大腸がんをより早期で見つけたいのであれば、初めから大腸カメラを行うのも一つの方法です。超早期の大腸がんであれば大腸カメラでそのまま切除できますし、がんになる前のポリープの段階で切除してしまえば、大腸がんになることもありません。
個人的には、毎年の便潜血検査と5年おきの大腸カメラの組み合わせをオススメします。
大腸がんが進行して出てくる症状について
進行した大腸がんで見られる症状を以下に挙げます。
①血便
便潜血のような超微量の出血ではなく、明らかに便に血が混じり便の色が変わります。
便の色は大腸がんの部位によって異なります。大腸の入口付近にがんがあると、そこで付着した血液は肛門に到達するまでの間に酸化し黒っぽい便になります。
直腸など肛門に近い出口付近のがんの場合には新鮮な血液のままで真っ赤な便が出ます。
中間くらいの位置のがんだと、赤褐色の便となります。
便の色で大腸がんの位置の予測ができます。
②便秘と下痢を繰り返す
まず大腸がんが進行すると大腸内が狭くなり、狭くなったところを便が通過できずに便秘となります。
その後、便を通過させようと粘液を分泌し、便が柔らかくなり下痢のようになります。これを繰り返すのが大腸がんの特徴の一つです。
③便が細くなる
大腸がんで狭くなった腸内を通過するので、細い形状の便となります。
④腹痛
大腸がんで狭くなったところを押し出そうと腸の動きが活発になり、腹痛が起きます。痛くなったり治まったりを繰り返します。
⑤残便感(便が残っている感じ)
肛門に近い直腸にがんがあると、がんの塊を便が残っているように感じ、残便感が続くことになります。
⑥貧血症状
血便が続くと貧血となり、めまいや立ちくらみ、動悸、息切れ、疲れやすいといった症状が出てきます。
⑦体重減少
がんの成長に栄養を使われてしまい、普通に食事を摂取していても痩せていきます。
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進行がんからさらに進んで末期になると、大腸の中が完全に閉塞し、便が通らなくなり腸閉塞を起こすことがあります。完全に詰まってしまったら人工肛門を造るなど緊急で処置が必要となります。
また、がんが大きくなって硬いしこりとして触れたり、大腸を突き破り腹膜炎を起こしたり、腹水が溜まったりすることもあります。
他にも、末期になると転移先の臓器での症状が出てきます。肝臓への転移ではお腹の張り、強い倦怠感、黄疸など、肺への転移では咳、呼吸困難などの症状が見られます。
末期の状態になると腸閉塞で緊急で処置を行う以外はモルヒネで呼吸苦や痛みを取ったり、腹水を抜いたりするなど、症状を和らげることを目的とした緩和ケアが中心となります。
大腸がんの治療について
大腸がんはステージ0の場合には基本的に大腸カメラでの切除となり、それで根治となります。治療に要する日数も1泊2日程度の入院で済みます。
早期のステージ1でも大腸カメラでそのまま切除したり手術で大腸を切除することで、5年生存率は90%以上と高い確率で治ります。
がんが大腸の壁の奥深くまで入り込んでいたりリンパ節転移のあるステージ2、3でも手術で根治を目指します。
大腸がんの手術の場合、入院期間は手術後10日~2週間ほどです。最近流行りのダヴィンチなどロボット手術ではキズが小さく体への負担が少ないため、手術後1週間ほどで退院することが可能です。
ステージ2までは手術だけで終了ですが、ステージ3の場合には手術で完全に切除したとしても30%の確率でがんが再発します。そのため手術後に約半年間の抗がん剤治療を行い、再発する可能性を減らすようにします。
このようにステージ3までは手術治療が優先されるのですが、海外では手術をせずに根治をめざす、切らない治療というのが注目されています。
大腸がんの手術は、がんから10cmほど離れた箇所で大腸を切除し、残った大腸を吻合します。がんが肛門近くにあって、がんから十分に離れた距離を確保できない場合には肛門ごと切除し、もう一方の断端を人工肛門にするという手術が日本では一般的です。
しかしアメリカではこのような場合に放射線化学療法と言って、放射線治療と抗がん剤治療を組み合わせた治療法が行われています。この治療法で完全にがんが消えることがあり、その場合には手術せずに肛門を残したまま根治が期待できるため、新治療として注目されています。
現在、この治療法が日本人にも合っているかどうかを調べる臨床試験も始まっています。音楽家の坂本龍一さんはアメリカで直腸がんに対してこの放射線化学療法を行いましたが、残念ながらがんが消えることはなく再発して亡くなってしまいました。
日本での治療法に話を戻します。遠隔転移のあるステージ4の場合でも大腸がんと転移の部分が手術で切除可能であれば手術を行います。手術で取り切れないような場合には初めから抗がん剤治療を行うことになります。
抗がん剤治療は、大腸がんで特に有効なオキサリプラチンとイリノテカンという薬剤を用いた治療を行います。これらの抗がん剤のおかげで以前よりも延命ができるようになり、ステージ4の大腸がんでも2、3年生きる人も増えています。ただ全体的に見るとまだまだ治療成績は厳しく、5年生存率は18%と低いです。
私事ですが、実は10年ほど前に健康診断で大腸カメラを行ったところ、大腸ポリープが多数見つかりました。大腸ポリープは将来的に大腸がんになる危険が高いです。幸いがん化する前に切除できたので大腸がんを未然に防いだということになります。あと5年放っておけば初期の大腸がんになっていた可能性があります。
私は大腸がんの予備軍としてその後も数年おきに大腸カメラを行っていますが、また新しくポリープができることがあり、その都度切除しています。
大腸がんは早く発見することで根治が望める病気です。
進行して症状が出るよりも前に、大腸がん検診や大腸カメラで無症状のうちに発見したいものです。
大腸がんの末期や治療についてのよくある質問
- 生理中に便潜血検査をしてもよいでしょうか?
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生理血に反応することがあるので、不可です。
- 10代の息子が便秘と下痢を繰り返しています。大腸がんの可能性はあるでしょうか?
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その年代だと、精神的な原因や自律神経の乱れで便秘と下痢を繰り返す過敏性腸症候群という病気の可能性があります。ただ、10歳で大腸がんになったという報告もありますので、一度は調べてみても良いと思います。
- 便が細くなるって、どれくらいのことを言うの?
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1cmくらいの太さの便のことを言います(通常は3~4cmの太さ)。
- たまに胃のあたりがキリキリ痛みます。大腸がんでもその場所が痛くなることはありますか?
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大腸の中の横行結腸という箇所は、胃と同じ高さにあるので、胃痛と勘違いされることもあります。
- 便秘でいつも残便感があります。がんの可能性はありますか?
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がんによる残便感か便による残便感かを区別するのは難しいので、一度調べてみてください。
- 貧血のサプリメントを飲み始めたら、黒っぽい便が出るようになりました。がんを刺激したとかあるのでしょうか。
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サプリメントに含まれる鉄分が酸化して、黒っぽくなっている可能性があります。一度サプリメントを止めてみてください。
- 食べ物でも便が黒くなることはありますか?
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ブルーベリーや高カカオチョコレート、赤ワインなどで便が黒くなることがあります。
- 腸閉塞の症状を教えてください。
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波のある激しい腹痛や、嘔吐、お腹が強く腫れる、おならが出ないなどの症状があれば、腸閉塞を疑います。
- 腹水がたまったら、もう治すことはできませんか?
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腹水が溜まるということは、腹膜播種と言って、お腹の中にがんが飛び散っている状態が考えられます。腹膜播種を完全に治すことは難しいですが、腹水を抜くことで、お腹の張りを楽にしたり、食事が摂れるようにしたりすることはできます。
- 大腸がんのステージ4で手術ができないと言われました。もう治ることはないのでしょうか?
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まずは抗がん剤治療を行い、手術ができるくらいに大腸がんや転移が縮小すれば、そこで手術を行い長期生存する可能性があります。
- 大腸がんでダヴィンチ手術はできますか?
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可能です。保険適応にもなっています。
- 大腸がんに重粒子線治療はできないのでしょうか?
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腸が重粒子線に耐えられないので、大腸がん自体に照射することはできません。ただし、リンパ節など大腸以外への転移であれば照射することができます。
- 人間ドックで大腸ポリープが見つかったのに、様子見になりました。なぜですか?
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大きさが2、3mmと小さすぎて、様子見になったのかもしれません。今後大きくなるようなら切除が必要です。
- 大腸がんのステージ1で手術しました。もう治ったということで良いですか?
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約5%の人が再発するというデータがあります。5年間は再発しないかどうか定期的に検査する必要があります。
- 大腸がんの予防にアスピリンが有効という記事を見たことがあります。本当でしょうか?
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大腸がんのリスクとなる、ポリープの再発率を40%低下させるというデータがあります。ただ、アスピリンには胃潰瘍や脳出血などの副作用もありますので、予防的投与は勧められていません。
- 無症状ですが、大腸カメラは保険でできますか?
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無症状の場合は自費で行うことになります。
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