
【肺がんステージ4】治療の選び方をわかりやすく解説|遺伝子検査・免疫療法・分子標的薬

濱元誠栄院長こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
「肺がんステージ4です」
そう告げられると、ほとんどの患者さんが
「もう治らない」「手術ができない」「放射線治療も適応にならない」
など、悲観的になってしまいます。
しかし、現在の肺がん治療は大きく進化していて、ステージ4であっても、遺伝子のタイプによっては長期生存例が可能になったり、免疫チェックポイント阻害薬で生存期間が延びています。
肺がんでは、
- 肺がんのタイプ
- 遺伝子異常
- PD-L1
- 転移している場所
- 全身状態
などによって、選ぶ治療が大きく変わります。
今回は、
「肺がんステージ4になったとき、どのように治療を選んでいくのか」
について、できるだけ分かりやすく解説します。
ステージ4の肺がんとは?
肺がんのステージ4とは、簡単に言えば、
肺の原発巣だけではなく、離れた場所にもがんが広がっている状態
です。
例えば、
- 反対側の肺
- 脳
- 肝臓
- 骨
- 副腎
などへの転移がある場合です。
また、悪性胸水や悪性心嚢水などもステージ4に分類されます。

肺がんステージ4の治療を決める4つのポイント
治療を考えるとき、大きく4つのポイントがあります。
① 肺がんのタイプ
まず、
非小細胞肺がん
なのか、
小細胞肺がん
なのかを確認します。
この2つは性質も治療法も大きく異なります。
② 遺伝子異常
特に非小細胞肺がんでは、
がんを増殖させている原因となる遺伝子異常
が見つかることがあります。
その場合、その遺伝子を直接狙う「分子標的薬」が治療の中心になることがあります。

③ PD-L1
遺伝子異常が見つからなかった場合に重要になるのが、
PD-L1
です。
PD-L1は、キイトルーダなどの免疫チェックポイント阻害薬が効きやすいかを考える一つの指標です。日本肺癌学会では、ドライバー遺伝子異常がない場合、PD-L1 TPSを「50%以上」「1~49%」「1%未満」に分けて治療を検討しています。
④ 転移の場所と全身状態
同じステージ4でも、
- 脳転移がある
- 骨転移がある
- 転移が数個だけ
- 多臓器に広がっている
- 症状がほとんどない
- 体力が大きく低下している
では治療方針が異なります。
「何の肺がんか」だけではなく、「どこに、どのくらい広がっているか」まで見て治療を決めることが重要です。

まず知ってほしい「肺がんの2種類」
肺がんは大きく分けて、『非小細胞肺がん』と『小細胞肺がん』の2種類に分かれます。
それぞれ特徴や治療法が大きく異なります。

非小細胞肺がん
肺がんの多く(85%)はこちらに分類され、
- 腺がん
- 扁平上皮がん
- 大細胞がん
などがあります。
非小細胞肺がんでは現在、
遺伝子検査とPD-L1検査が治療選択の非常に重要な部分を占めています。
進行非小細胞肺がんでは治療前にドライバー遺伝子異常を調べ、陽性であれば対応する分子標的治療を行います。
小細胞肺がん
一方、小細胞肺がんは、
増殖が速く、早い段階から全身へ広がりやすい
という特徴があります。
そのため進展型小細胞肺がんでは、局所治療よりも全身に作用する薬物療法が治療の中心になります。
日本肺癌学会のガイドラインでは、全身状態が良好な進展型小細胞肺がんに対して、
プラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬
が一次治療として強く推奨されています。
非小細胞肺がんでは「治療前の検査」が非常に重要
ステージ4の非小細胞肺がんでは、治療開始前に可能な限り、
- 病理検査
- ドライバー遺伝子検査
- PD-L1検査
- CT・MRIなどによる転移評価
- 全身状態の評価
を行います。
特に遺伝子検査については、検査項目に優先順位をつけて一つずつ調べるのではなく、複数を同時に検査します。
2026年6月に更新された日本肺癌学会のバイオマーカー検査の手引きでも、肺がん治療に関係する多数の遺伝子・バイオマーカーが整理されています。
遺伝子異常が見つかったら「分子標的薬」
非小細胞肺がんで特に調べられる遺伝子として、
- EGFR
- ALK
- ROS1
- BRAF
- MET
- RET
- NTRK
- KRAS G12C
- HER2
などがあります。

遺伝子異常がある肺がんと、遺伝子異常がない肺がんでは、治療の順番そのものが変ります。
代表例① EGFR遺伝子変異
EGFR遺伝子変異は、日本人の肺腺がんでは特に重要な遺伝子異常です。
代表的なのが、
- Exon19 deletion
- L858R
です。
こうしたEGFR遺伝子変異陽性肺がんでは、EGFRを狙った分子標的治療が治療の中心になります。
現在はタグリッソを中心とした治療に加え、治療強度や患者さんの状態などを考え、
タグリッソ+化学療法

ライブリバント+ラズクルーズ
(リブロファズ+ラズクルーズ)

など複数の選択肢を検討できる時代になっています。
一方で治療法が増えた分、
「最初にどの治療を選ぶか」
が以前より複雑になってきています。

代表例② ALK融合遺伝子
ALK融合遺伝子陽性肺がんも、分子標的薬が非常によく効くことがある肺がんです。
代表的なALK阻害薬の一つが、
ローブレナ
です。
第Ⅲ相CROWN試験の5年追跡では、ロルラチニブ群の無増悪生存期間中央値はまだ到達せず、5年時点で約60%が増悪なく生存していました。
さらにALK陽性肺がんでは脳転移が問題になりやすいのですが、ロルラチニブは頭蓋内病変に対する強いコントロール効果も示しています。
つまり一部の肺がんでは、
ステージ4であっても、適切な分子標的薬によって何年にもわたる長期コントロールを目指せる
時代になってきています。

遺伝子異常がなければPD-L1を確認する
明確な治療標的となるドライバー遺伝子異常が見つからなかった場合、次に重要になるのがPD-L1です。
PD-L1は、
がん細胞が免疫から逃げるために利用している仕組みの一つ
です。
その仕組みを解除するのが、
- キイトルーダ
- テセントリク
- オプジーボ
- イミフィンジ
などの免疫チェックポイント阻害薬です。
がん細胞の表面の、PD-L1というタンパクの発現率で治療が異なってきます。

PD-L1が50%以上の場合
PD-L1 TPSが50%以上では、
免疫チェックポイント阻害薬単独
が治療選択肢になります。
最近では、
免疫チェックポイント阻害薬+抗がん剤
も選択肢として挙がってきました。
日本肺癌学会でも、ドライバー遺伝子異常がなくPD-L1 TPS 50%以上の患者さんでは、免疫チェックポイント阻害薬単剤またはプラチナ製剤を含む併用療法などが推奨されています。
一昔前は、「PD-L1が高いから全員キイトルーダ単剤」という選択肢しかなかったのですが、どんどん変化しています。
がんの広がり方、症状、治療効果をどの程度急ぐ必要があるか、年齢、全身状態、副作用リスクなども考えて選びます。

PD-L1が1~49%の場合
PD-L1 TPS 1~49%では、
プラチナ製剤を含む化学療法+免疫チェックポイント阻害薬
が代表的な一次治療になります。
日本肺癌学会は、全身状態が良好な患者さんではこの治療を強く推奨しています。
また症例によっては、ニボルマブ+イピリムマブなどを含む治療も選択肢になります。

PD-L1が1%未満の場合
PD-L1陰性だからといって、
免疫療法がまったく使えないわけではありません。
免疫チェックポイント阻害薬単独の適応とはなりにくい一方、
化学療法+免疫チェックポイント阻害薬
では、PD-L1が低い患者さんでも治療効果が認められています。
日本肺癌学会もPD-L1 TPS 1%未満の全身状態良好例に対して、プラチナ併用化学療法+PD-1/PD-L1阻害薬を強く推奨しています。
治療を始めたら「効いているか」を定期的に確認する
治療開始後は、
- CTなどの画像検査
- 自覚症状
- 全身状態
- 血液検査
- 副作用
を確認しながら治療を続けます。
一定期間治療を行ったあと、効果がある・病勢が安定しているのであれば、使用する薬を減らしながら維持療法へ移行する場合があります。
一方、がんが増大している場合は、二次治療を検討します。
一つの薬をずっと続けられる機関には限界があります。その時点の病状に応じて治療をつないでいくという考え方になります。
一次治療が効かなくなっても次の治療があります
がんが増悪したからといって、
「もう治療が終わり」という意味ではありません。
例えば、
- まだ使用していない抗がん剤
- 別の組み合わせ
- 再生検
- 遺伝子パネル検査
- 新しく出現した耐性遺伝子の確認
- 臨床試験
などを検討します。
特に分子標的薬を使用している患者さんでは、治療途中でがんの遺伝子的な性質が変わることがあります。
そのため、増悪したときに再び遺伝子を調べることで、
新しい治療標的が見つかる可能性
もあります。

小細胞肺がんのステージ4の治療法
小細胞肺がんは非小細胞肺がんとは治療の考え方が異なります。
ステージ4ではなく、”進展型”という独特の表現をします。
進展型小細胞肺がんでは、一次治療として、
プラチナ製剤+エトポシド+免疫チェックポイント阻害薬
が現在の基本です。
具体的には、
- テセントリク
- イミフィンジ
などが用いられます。
小細胞肺がんは抗がん剤に反応しやすい一方で、再発しやすいという特徴があります。
そのため、再発した際の二次治療以降も重要です。
小細胞肺がんでは「タルラタマブ」という新しい選択肢も
近年、小細胞肺がんの治療で注目されているのが、
イムデトラ
です。
イムデトラは、小細胞肺がん細胞に多く発現するDLL3とT細胞のCD3を同時につなぐことで、患者さん自身のT細胞にがんを攻撃させる薬です。

日本肺癌学会2025年版ガイドラインでは、全身状態が良好な再発小細胞肺がんに対して、
二次治療以降のタルラタマブ療法が強く推奨
されています。
小細胞肺がんでも治療の選択肢は少しずつ増えています。

ステージ4でも「局所治療」を使うことがある
ステージ4では基本的に全身治療が中心です。
しかし、
「転移しているから放射線や手術は意味がない」
というわけでもありません。
病変の数や場所によっては、薬物療法に局所治療を組み合わせることがあります。
脳転移
脳転移では、
- 定位放射線治療
- 全脳照射
- 手術
- 脳移行性の高い分子標的薬
などを、病変数、大きさ、症状、肺がんのタイプなどから検討します。
症状のある脳転移に対する放射線治療は、日本肺癌学会でも強く推奨されています。脳圧亢進症状や出血のある単発性脳転移では、手術が選択肢になる場合があります。
頭痛、嘔吐、けいれん、手足の麻痺などが出現した場合には、早い対応が必要です。
骨転移
骨転移では、
- 放射線治療
- 鎮痛薬
- ランマーク
- ゾメタ
- 必要に応じた外科治療
などを組み合わせます。
特に、
- 強い背中の痛み
- 手足のしびれ
- 足に力が入らない
- 急に歩きにくくなった
などがある場合は、脊髄圧迫の可能性もあるため緊急での処置が必要です。

「転移が少ないステージ4」では治療戦略が変わることも
同じステージ4でも、
転移が1個ある患者さん
と、
全身の多くの臓器に転移している患者さん
では状況が大きく異なります。
転移がごく少数に限られている状態を、
オリゴ転移
と呼びます。
こうした患者さんでは、薬物療法に加えて、
- 定位放射線治療
- 手術
などを積極的に組み合わせることが検討される場合があります。
日本肺癌学会のガイドラインでも、ステージ4非小細胞肺がんに対する局所治療が独立した項目として検討されています。

つまり、
「ステージ4だから全身療法のみで、局所治療はしない」
とは一概には言えません。
肺がんステージ4の治療で大切なこと
肺がんステージ4の治療は、この20年で大きく変化しました。特にここ10年は、毎年のように新薬が登場しています。
以前は、
「ステージ4なら抗がん剤」
という比較的単純な治療選択でした。
現在は、
肺がんのタイプ
↓
遺伝子異常
↓
PD-L1
↓
転移の場所・数
↓
全身状態
を確認しながら治療を組み立てていきます。
特に非小細胞肺がんでは、治療前の遺伝子検査が極めて重要です。

自由診療を組み合わせることも
当院で行っている4種免疫療法(CIK療法)も標準治療との併用で、生存期間などが延長する可能性があります(エビデンスが弱い)
扁平上皮がん(遺伝子変異やPD-L1の発現が少ない)の治療で、標準治療へのCIK療法の上乗せ効果が期待されています。

小細胞肺がんでは、奏効率の改善が見られました。

まとめ
肺がんステージ4と診断された場合の流れについて。
非小細胞肺がんなのか、小細胞肺がんなのか。
非小細胞肺がんなら、
治療につながる遺伝子異常があるのか。
遺伝子異常がなければ、
PD-L1はどのくらいなのか。
さらに、
脳転移や骨転移はあるのか、転移は何個あるのか、現在の体力はどうなのか。
こうした情報を一つずつ組み合わせて治療を決めます。
そして治療開始後も、
一次治療 → 維持療法 → 二次治療 → 再検査 → 次の治療
と、状況に応じて治療をつないでいきます。
現在では分子標的薬や免疫療法の進歩によって、ステージ4でも長期間病気をコントロールできる患者さんが確実に存在します。
大切なのは、「ステージ4」という言葉だけで治療を考えないことです。
肺がんの中身を詳しく調べ、その患者さんの肺がんに合った治療を選んでいく。
これが、現在の肺がんステージ4治療の基本的な考え方です。














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