
膵臓がんで注目のダラクソンラシブが肺がんでも有効!

濱元誠栄院長こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
以前、膵臓がんの新薬として紹介したダラクソンラシブ(daraxonrasib)。

2026年8月には、米国でステージ4の膵臓がんに対してFDA承認されました。

そのダラクソンラシブについて、今度はRAS遺伝子変異を持つ非小細胞肺がんの臨床試験結果が発表されました。
日本がん対策図鑑様の画像が分かりやすいです(画像をクリックするとリンク先に飛びます)。

非小細胞肺がん領域では、KRAS G12C変異に対して、すでにルマケラス(ソトラシブ)という分子標的薬が承認されています。
今回のダラクソンラシブとどう違うのか、期待される効果などについて解説します。
肺がんのKRAS変異はG12Cだけではない
肺がんでは、今ではEGFR、ALK、ROS1、RET、MET、HER2など、いろいろな遺伝子異常を調べてから治療を決めます。

KRASもその一つです。
非小細胞肺がんの中では、KRASを含むRAS遺伝子変異は決して珍しくありません(アジア人で10-15%)。
ただ、同じKRAS変異でも中身はいろいろあります。
G12D
G12V
G12A
G13
Q61
など、G12C以外のRAS変異が見つかることもあります。
ところが、こうした患者さんでは「遺伝子変異は見つかったけれど、それに合う薬はない」ということが少なくありませんでした。
今回の試験では、むしろG12C以外の患者さんが中心です。
特に多かったのが、
G12Vが37%
G12Dが30%
でした。
複数のRAS変異に効果がみられた
ダラクソンラシブは、複数のRAS変異をまとめて抑えるように作られた薬です。
RASというタンパクは、細胞の中で増殖のスイッチのような働きをしています。
OFFになっている時とONになっている時があり、がん細胞ではRASがONの状態になって、増殖の信号を出し続けます。
ダラクソンラシブは、このONになっているRASを狙う薬です。
そのため、KRASを含めたRAS遺伝子変異のある患者さんにも効果が期待されています。
実際に今回の試験でも、G12DやG12Vを持つ肺がんで腫瘍の縮小が確認されました。
今回の臨床試験は第1/2相試験で、対象となったのは、RAS変異を持つ進行非小細胞肺がんです。
ほとんどの患者さんが、それまでにプラチナ製剤を含む抗がん剤治療と抗PD-1/PD-L1抗体を使った免疫療法を受けていて、二次治療以降に使われたことになります。
治療効果は?
第1/2相試験なので、投与量別の奏効率があります。
120mg以下 31%
160〜220mg 34%
300mg 37%
でした。
全ての投与量で、おおむね3人に1人で腫瘍が縮小した、という結果です。
さらに、プラチナ製剤+免疫療法を受けたあとで、まだドセタキセルを使用していなかった38人に限ると、
奏効率42%
でした。
このグループでは、
病勢コントロール率89%
無増悪生存期間(PFS)中央値8.3か月
全生存期間(OS)中央値16.0か月
という結果も出ています。
また、一度効いた患者さんでは、効果持続期間の中央値は11.5か月でした。
すでに治療を受けたRAS変異肺がんで、この数字なら期待したくなるところです。
特に、今回の患者さんの多くがG12DやG12Vだったことを考えると、これまでとは少し違う治療の選択肢になりそうです。
まだ「標準治療より優れている」とは言えない
数字だけを見るとかなり良さそうに見えますが、今回の研究は第1/2相試験です。
ドセタキセルなどの標準治療と直接比較した試験ではありません。
しかも、奏効率42%、PFS 8.3か月、OS 16.0か月という数字は、全136人の結果ではなく、条件を満たした一部の患者さんの解析です。
ですので、
ダラクソンラシブを使えばドセタキセルより長く生きられる
とまでは、まだ言えません。
そこは、これから第3相試験で確認されます。
膵臓がんではすでに第3相試験まで進み、化学療法と比較して生存期間の延長が示されました。
肺がんは今、その少し手前にいる段階です。
副作用はそれなりにある
ダラクソンラシブは1日1回内服するだけなので、抗がん剤の点滴より楽そうに思えますが、副作用は決して少なくありません。
今回よくみられたのは、
皮疹 90%
下痢 73%
吐き気 62%
嘔吐 54%
口内炎・粘膜炎 40%
でした。この辺りは膵臓がんでの臨床試験に近い結果です。
Grade 3以上の有害事象は54%で、このうち、薬剤との関連があると判断されたGrade 3以上の有害事象は30%でした。
また、300mgまで増量すると、減量や治療中断が増えていました。
現在進行中の肺がんの第3相試験では、200mgが採用されています。
このあたりを見ると、肺がんでは200mg前後が効果と副作用のバランスがよいと判断されたのだと思います。
次はドセタキセルとの比較試験
現在、RASolve 301試験という第3相試験が進んでいます。
対象は、すでに治療を受けた局所進行・転移性のRAS変異非小細胞肺がんです。
約590人を、
ダラクソンラシブ
と
ドセタキセル
に分けて比較します。
ここで無増悪生存期間や全生存期間が改善するかどうかが確認されます。
この試験でダラクソンラシブがドセタキセルを上回れば、肺がん治療の中でかなり存在感のある薬になると思います。
日本からも治験に参加しており、国立がん研究センター中央病院・東病院、がん研有明病院、静岡県立静岡がんセンター、近畿大学病院などで試験が行われています。
日本ではまだ承認されていませんが、まったく遠い話ではなくなってきました。
「KRAS変異はあるけれど薬がない」が変わるかもしれない
RASは、昔からがんでは非常に有名な遺伝子です。
ところが長い間、RASそのものを薬で狙うのは難しいと言われてきました。
そこにまずKRAS G12C阻害薬が登場しました。
そして今度は、G12Cだけではなく、G12DやG12Vなどを含めて広くRASを狙う薬が出てきています。
ダラクソンラシブはすでに膵臓がんで結果を出しています。
そして今回、肺がんでも腫瘍縮小が確認されました。
まだ肺がんでは承認前ですし、第3相試験の結果も待たなければなりません。
それでも、
「KRAS変異でも治療できる可能性がある」
というのは、多くの肺がん患者さんにとって希望になると思います。













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