
小細胞肺がん二次治療でイムデトラ、日本人でも良好な結果

濱元誠栄院長こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
小細胞肺がんは、一次治療の抗がん剤がよく効くのですが、早い段階で耐性ができてしまい、二次治療に移行します。
二次治療では、主にカルセド(アムルビシン)が使われます。
カルセド一択だったところに、2024年に新しく登場したのが、イムデトラ(タルラタマブ)です。
イムデトラは、がん細胞と免疫細胞を「つなぐ」薬です。
小細胞肺がんの表面にある「DLL3」という目印を見つけると、そこへT細胞という免疫細胞を呼び寄せます。
がん細胞のすぐそばまでT細胞を連れてきて、患者さん自身の免疫の力でがん細胞を攻撃させます
2025年には、大規模な国際第3相試験「DeLLphi-304」で、従来の化学療法より生存期間を延ばすことが報告されました。
そして今回、DeLLphi-304に参加した日本人だけを取り出した解析結果がInternational Journal of Clinical Oncologyに発表されました。
日本人でもイムデトラが生存期間を延長
今回解析された日本人は35人でした。
世界全体のDeLLphi-304では、イムデトラに対してトポテカン、ルルビネクテジン(日本未承認)、カルセドのいずれかが比較対象でしたが、日本で登録された患者さんでは比較薬は全員カルセドでした。

*画像をクリックするとリンクが開きます
結果をみると、まず生存期間は、
イムデトラ:中央値未到達
カルセド :11.5か月
でした。
12か月生存率も、
イムデトラ 66.7%
カルセド 47.0%
と、イムデトラの方が良好でした。
無増悪生存期間は…
ここからが今回の結果で、私が注目したところです。
無増悪生存期間(がんが大きくならずに過ごせた期間)は、
イムデトラ:4.0か月
カルセド :4.2か月
でした。
中央値だけを見ると、ほとんど変わりませんし、むしろカルセドの方が0.2か月長いくらいです。
では、
「無増悪生存期間が同じなのに、なぜ全生存期間ではイムデトラが良くなのか?」
ここはグラフを見ると分かりやすくなります。
曲線を見ると「効く人には長く効く」形が見える
PFS(無増悪生存期間)のグラフを見てみます。

治療開始から数か月の間は、イムデトラでもカルセドでも比較的早く曲線が下がっています。
そのため、患者さんの半数が進行する時点を表す「PFS中央値」ではイムデトラ4.0か月となり、カルセドの4.2か月とほとんど違いがありません。
しかし、その後の曲線が少し違います。
6か月時点のPFS率は、
イムデトラ 25.0%
カルセド 21.7%
ですが、12か月になると、
イムデトラ 16.7%
カルセド 4.3%
となっています。
このことは、奏効期間の結果とも合っています。
がんが縮小した患者さんについて、その効果がどれくらい続いたかを見る奏効期間(DOR)は、
タルラタマブ 10.1か月
アムルビシン 5.6か月
でした。
奏効率は
タルラタマブ 33.3%
アムルビシン 26.1%
でした。
ですから、このPFS曲線は、
反応する患者さんの一部で効果が長く続く可能性
を示しているように見えます。
もちろん12例しかいないため、確実なことは言えません。
全生存期間の曲線はさらに印象が違う
一方、全生存期間(OS)の曲線を見ると、さらにイムデトラとカルセドの違いが目立ちます。

イムデトラ群では治療開始後しばらく死亡イベントがほとんどなく、12か月生存率は66.7%でした。
これに対してカルセド群は47.0%です。
なぜPFSが同程度なのにこのような差が出たのか?
すべてイムデトラの「免疫効果」なのでしょうか。
今回、病気が進行した後に別の抗がん治療を受けた患者さんは、
イムデトラ群 83.3%
カルセド群 65.2%
でした。
進行後に受けた治療の違いも、OSに影響した可能性があります。
さらに、治療開始時点で、イムデトラ群には90日以内に再発した患者さんや脳転移を持つ患者さんが少なかったという違いもありました。論文でも、こうした背景因子の不均衡と少ない症例数が日本人解析の限界として挙げられています。
そしてOSグラフの後半を見ると、両群の曲線が近づいています。
世界全体の509人ではOS、PFSともにタルラタマブが上回った
大元のDeLLphi-304全体の結果を見てみます。
世界全体では509人が参加しました。
OS中央値は、
イムデトラ 13.6か月
化学療法 8.3か月
PFS中央値についても、
イムデトラ 4.2か月
化学療法 3.2か月
こちらはOS、PFSとも統計学的に有意な改善が認められています。
今回の日本人解析は、
「世界全体で確認されたイムデトラの効果が、日本人でも大きく違うわけではなさそうだ」
という確認に近い位置づけです。
血液毒性が少ないのも大きな特徴
もう一つ注目したいのが副作用です。
日本人解析でグレード3以上の治療関連有害事象は、
イムデトラ 8.3%
カルセド 56.5%
でした。
カルセドなどの抗がん剤では、白血球や好中球の減少、貧血などの血液毒性が問題になります。
イムデトラでは、その代わりに特徴的な副作用があります。
代表的なのがCRS(サイトカイン放出症候群)です。
*サイトカイン放出症候群(CRS)とは
主な症状: 発熱、低血圧、低酸素症(呼吸困難)、疲労、頭痛、悪心など。治療初期(特に1回目・2回目の投与後など)に発現しやすいのが特徴です。
病態: 薬物の作用でT細胞が急激に活性化され、炎症性サイトカインが大量に放出されることで起きる全身性の強い炎症反応です。
日本人12人では75%にCRSがみられましたが、すべてグレード1または2でした。また、ICANSと呼ばれる神経系の副作用が1人、グレード2で認められています。
日本のガイドラインでも二次治療以降に強く推奨
肺癌診療ガイドライン2025年版では、PS 0~1の再発小細胞肺がんに対して、
「二次治療以降にイムデトラ療法を行うよう強く推奨する」
とされています。推奨の強さ1、エビデンスの強さBです。
したがって現在は、
「カルセドなど従来の抗がん剤しかないところに、新しい選択肢が加わった」
という段階を越えて、イムデトラは再発小細胞肺がんの二次治療を考えるうえで中心的な治療の一つになっています。
まとめ
・イムデトラは、日本人を対象とした解析でも本試験と同様な結果を示した。
・抗がん剤治療特有の白血球減少が少ない代わりに、サイトカイン放出症候群という特殊な副作用が見られる。
・小細胞肺がんの二次治療として、推奨されている。
院長・濱元誠栄の著書が発売されます
「結局、健康のために何をすればいいのか?」
食事、運動、睡眠、ストレス、飲み物など、健康情報は世の中にあふれています。
そこで、これまでに発表されたすべてのがん予防の研究を一つひとつ調べながら、無理なく日常生活に取り入れられるものを33の習慣にまとめました。
『すべてのがん予防法から「いいもの」だけ集めた すごい健康習慣33』

がんになる前も、がんになった後も、毎日の生活を見直すきっかけとして、読んでいただければと思います。
この本で、日本を健康に!
Amazonでの購入はこちらから
楽天での購入はこちらから













コメント