
PD-L1陰性でも免疫療法は効く? 5年生存率38%

濱元誠栄院長こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
肺がんの患者さんから、
「PD-L1が0%だったのですが、主治医から免疫チェックポイント阻害薬は期待できないと言われました。本当でしょうか?」
と聞かれたことがあります。
PD-L1は、免疫チェックポイント阻害薬の効果を予測するうえで大事な検査です。
一般的には、PD-L1が高いほど免疫療法が効きやすく、1%未満では効きにくくなります。
*先日のブログで、PD-L1発現量の違いによる治療法について解説しています。

ただ、0%だから効かない、というわけではありません。
今回、PD-L1が1%未満の日本人非小細胞肺がん患者さんについて、オプジーボ+ヤーボイを使った治療の長期成績が報告されました。
5年生存率は38%でした。
ステージ4または再発肺がん、しかもPD-L1 1%未満という患者さんを対象にした数字です。
CheckMate 227と9LAの日本人を解析
今回の論文は、CheckMate 227試験とCheckMate 9LA試験に参加した日本人患者さんをまとめて解析したものです。
対象は、EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子のない進行・再発非小細胞肺がん。
さらに、その中からPD-L1が1%未満だった患者さんだけを抽出しています。
免疫療法群は34人。
化学療法群は41人でした。
人数はかなり少ないので、この結果だけで日本人全体の成績を決めつけることはできません。
それを踏まえて数字を見てみます。
生存期間中央値は41か月
全生存期間中央値は、
オプジーボ+ヤーボイを含む治療 41.0か月
化学療法 15.2か月
でした。
5年生存率は、
38% vs 16%
です。

この結果、PD-L1が1%未満でも、免疫療法を使った患者さんの中に長期生存する人が一定数いることが分かります。
PD-L1 0%という結果だけを見て、
「免疫療法は期待できない」
と考える必要はなさそうです。
奏効率はほとんど変わらない
もう一つ、数字を見ていて気になったのが奏効率です。
がんが一定以上縮小した割合は、
35% vs 32%
でした。
オプジーボ+ヤーボイ群が35%、化学療法群が32%。
ほぼ同じです。
ところが、効果が続いた期間を見ると、
16.6か月 vs 3.0か月
でした。
免疫チェックポイント阻害薬は、効く人では長く効くことがあります。
今回も、治療が効いた患者さんの中には、中止後も効果が続いている人がいました。

副作用で中止した12人の方が、生存率が高かったと解析されています。
その12人の経過を見ると、中には中止しても5年以上効き続けている人もいました。

免疫チェックポイント阻害薬の場合は、一度しっかり反応すると、その状態が数年続く人がおり、それが長期生存につながる理由の一つです。
PD-L1が低くてもヤーボイが効く理由
オプジーボはPD-1を阻害する薬です。
ヤーボイはCTLA-4を阻害します。
同じ免疫チェックポイント阻害薬ですが、作用する場所が違います。
PD-L1が低い場合、PD-1/PD-L1だけを狙う治療では効果が出にくい傾向があります。
そこでCTLA-4も同時に抑えることで、別の経路から免疫反応を強めます。
PD-L1の発現だけでは拾えない患者さんにも効果が出る理由の一つと考えられます。
CheckMate 227と9LAは治療内容が違う
今回の結果を見るときには注意も必要です。
CheckMate 227では、
オプジーボ+ヤーボイ
が使われています。
一方、CheckMate 9LAでは、
オプジーボ+ヤーボイ+2サイクルの化学療法
です。
今回はこの2つをまとめて解析しています。
そのため、
オプジーボ+ヤーボイだけで十分なのか、
化学療法も加えた方がいいのか、
という比較はできません。
腫瘍量が多い場合や症状が強い場合、早くがんを縮めたい場合には、最初に化学療法を組み合わせる意味があります。
一方で、化学療法やヤーボイを加えるほど副作用の問題も出てきます。
患者さんの状態によって使い分けることになります。
副作用は軽くない
今回の解析では、重い治療関連有害事象は免疫療法群で38%にみられました。
ただし、治療関連死亡も1例報告されています。
オプジーボ+ヤーボイは、長期生存が期待できる治療ではありますが、命にかかわる免疫関連有害事象(irAE)が起こる可能性があります。
PD-L1だけで決めない
PD-L1は肺がん治療では非常に重要な数字ですが、PD-L1が0%だから免疫療法が効かない、とは言えないようです。
今回の日本人データでは、
PD-L1 1%未満でも5年生存率38%
でした。
もちろん34人という小規模な解析ですし、2つの試験をまとめた事後解析でもあります。
38%という数字をそのまま実臨床に当てはめることはできません。
それでも、
PD-L1陰性の肺がんでも、免疫チェックポイント阻害薬によって長期生存する患者さんがいる
ということは、改めて確認できたと思います。
そして今回の結果では、奏効率そのものよりも、
効いたあと、どれくらい長く効くか
の差が大きく出ています。
特に副作用(免疫関連有害事象)が強かった症例で、効果が長く続く傾向にあるようです。
免疫チェックポイント阻害薬の副作用で大変な目に合った、反面、よく効いたという、難しい治療ではあります。













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