
【大腸がん】術後治療にも免疫チェックポイント阻害薬が登場へ!

濱元誠栄院長こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
大腸がんの術後治療が、大きく変わるかもしれません。
2026年8月14日、中外製薬は免疫チェックポイント阻害薬テセントリク(アテゾリズマブ)について、
MSI-Highの結腸がんに対する術後補助療法
として、日本で適応拡大の承認申請を行ったと発表しました。
承認されれば、結腸がんの術後補助療法として国内初の免疫チェックポイント阻害薬となる見込みです。
これは大腸がん治療にとって、かなり重要なニュースです。
今回は、その根拠となった大規模Phase 3試験ATOMIC試験について分かりやすく解説します。
*厳密には、大腸がん=結腸がん+直腸がんを指し、今回のATOMIC試験は直腸がんを含みません
これまでのステージ3大腸がん術後治療
ステージ3の大腸がんとは、基本的には
「がんを手術で切除できたものの、リンパ節転移がある状態」
です。
画像上、がんをすべて取り切れていても、体のどこかに目には見えない微小ながん細胞が残っている可能性があります。
そのため、ステージ3だと約3割の患者さんが再発します。
再発を減らす目的で、
- FOLFOX(5-FU/LV+オキサリプラチン)
- CAPOX(カペシタビン+オキサリプラチン)
などの抗がん剤を術後に行います。
これを「術後補助化学療法」と言います。
ただ、術後化学療法を行って再発率は減らせる一方で、それでも再発する患者さんが一定数います。
そこで、
「抗がん剤に免疫チェックポイント阻害薬を加えれば、さらに再発を減らせるのではないか?」
という発想で行われたのがATOMIC試験です。
【注意】すべての大腸がんが対象ではありません
ATOMIC試験の対象となったのは、
dMMR(ミスマッチ修復機能欠損)を有するステージ3の結腸がん
です。
dMMRのがんでは、DNAをコピーするときに生じた間違いを修復する機能が低下しています。
その結果、がん細胞のDNAに多くの異常が蓄積し、MSI-High(MSI-H)という状態になることがあります。
MSI-Highのがんは免疫療法が効きやすい
DNAの異常が多いがん細胞は、正常細胞との違いが大きくなります。
すると免疫細胞から、「これは異常な細胞だ」と認識されやすくなります。
そのためMSI-High/dMMRの大腸がんは、免疫チェックポイント阻害薬が効きやすいことが知られています。
ただし、日本の大腸がんでは、dMMRを有する症例はおよそ6~7%と少ないです。(直腸がんだと、2-4%と低い…)
なので、
すべての大腸がん患者さんに免疫療法を追加するという話ではありません。
「MSI-H/dMMR」という特徴を持った患者さんを選んで治療する、
バイオマーカーに基づく術後治療
というところがポイントです。
ATOMIC試験とは?
ATOMIC試験は、根治手術を受けたステージ3 dMMR結腸がん 712人を対象とした国際Phase 3試験です。
患者さんはほぼ半分ずつ、
<従来治療>
mFOLFOX6を6か月
と、
<新しい治療>
mFOLFOX6+テセントリクを6か月
→その後テセントリク単独をさらに6か月
に分けられました。
つまりテセントリク群では、免疫チェックポイント阻害薬を合計約1年間使用する治療です。
研究の最大の評価項目は、
DFS(無病生存期間)
でした。
「手術後、再発などを起こさずに過ごせる期間」を比較したわけです。
結果はこちらです。
3年無病生存率
テセントリク+mFOLFOX6 86.3%
mFOLFOX6のみ 76.2%
でした。
「手術後に免疫療法」という時代へ
免疫チェックポイント阻害薬というと、
これまでは「進行したがんに使う薬」というイメージが強かったと思います。
しかし近年は、肺がん、乳がん、食道がんなどさまざまながんで、免疫チェックポイント阻害薬を「再発してから使う」のではなく、「再発を防ぐために使う」方向へ治療が広がってきています。
そして今回、ついに大腸がんでも非常に強いPhase 3のデータが出てきました。
ATOMIC試験は、
「大腸がんの術後に免疫療法を加えることで、再発を減らせる」
ことを大規模ランダム化試験で示した重要な研究です。
副作用の問題
もちろん、良いことばかりではありません。
Grade 3~4の有害事象は、
テセントリク+mFOLFOX6:84.1%
mFOLFOX6:71.9%
と、テセントリクを追加した群で多くなりました。
また免疫チェックポイント阻害薬では、
- 甲状腺機能障害
- 肝機能障害
- 皮膚障害
など、免疫に関連した副作用にも注意する必要があります。
日本での承認申請資料では、主な有害事象として肝機能障害43.9%、皮膚障害33.8%、甲状腺機能低下症18.8%などが報告されています。一方、新たな安全性上のシグナルは認められなかったとされています。
したがって、
「再発を減らせる可能性」と「1年間の治療負担や副作用」
の両方を考えて治療を選択することになります。
まだ日本では承認されていない
2026年8月14日に発表されたのは、
「承認された」というニュースではなく、「承認申請した」というニュース
です。
したがって、現時点でこの術後治療が日本の通常診療としてすぐに使えるようになったわけではありません。
ただし、根拠となったATOMIC試験はすでにNew England Journal of Medicine(NEJM)に掲載されたPhase 3試験であり、非常にしっかりしたエビデンスです。
承認されれば、日本の大腸がん術後治療にも大きな変化が起こる可能性があります。
「大腸がんはステージだけを見て治療する時代ではなくなってきた」
ということです。
同じステージ3の大腸がんでも、
MSI-Hなのか?
dMMRなのか?
によって、術後治療そのものが変わる可能性が出てきました。
つまり、
ステージ3だから全員同じ術後治療
ではなく、
そのがんの遺伝子的・分子的な特徴を調べ、その特徴に合わせて再発予防治療を選ぶ
方向へ進んでいます。
これまで主に再発・転移した大腸がんで重要だった「がんの性質を調べて治療を選ぶ」という考え方が、
術後の再発予防の段階まで入ってきた
とも言えます。
まとめ
今回のニュースをまとめます。
2026年8月14日、MSI-High結腸がんの術後補助療法として、テセントリク+FOLFOXが日本で承認申請されました。
その根拠となったPhase 3「ATOMIC試験」では、
3年無病生存率
テセントリク+mFOLFOX6
86.3%
mFOLFOX6のみ
76.2%
という結果でした。
対象は誰でもというわけではなく、
主に根治切除後のステージ3、MSI-H/dMMR結腸がん
です。
それでも、
「大腸がんの術後治療にも免疫チェックポイント阻害薬が入ってくる」
というのは、大腸がん治療における大きな転換点だと思います。
そして今後は、
手術をする
↓
ステージを確認する
↓
さらに、がんの分子的な特徴を調べる
↓
その人のがんに合った再発予防治療を選ぶ
という流れが、ますます重要になっていくでしょう。
ATOMIC試験は、その流れを大きく前に進める研究だと思います。













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