大腸がん再発予防にアスピリン?効果の有無を最新研究から専門医が解説

濱元誠栄院長

こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。

「アスピリンは大腸がんにいい」と聞いたことがあるでしょうか。

アスピリンで、大腸がんの再発が半分近くまで減った。

2025年、そんな研究結果が発表され、大きな注目を集めました。

その研究はこちら

ところが今回、別の大規模研究では、

アスピリンを飲んでも再発は減らなかった

という、まったく違う結果が出ました。

同じ大腸がん、同じアスピリンなのに、なぜこれほど結果が違うのでしょうか。

2026年9月に『Lancet Gastroenterology & Hepatology』に発表されたASAC試験をもとに、「大腸がんとアスピリン」の現在地を考えてみます。

目次

ASAC試験とは?

今回の研究では、

大腸がんが肝臓に転移したものの、手術などで根治を目指した治療ができた患者さん

が対象でした。

肝転移の治療後に、

治療後にアスピリンを飲めば、再発を減らせるのではないか

という考えで試験が行われました。

患者さんは、アスピリン160mgを毎日飲むグループと、プラセボを飲むグループに分けられ、最大3年間治療を続けました。

結果は「再発を減らさなかった」

無再発生存期間の中央値は、

アスピリン群 1.13年

プラセボ群  1.40年

で、明らかな差はありませんでした。むしろプラセボ群の方が無再発生存期間が長くなりました。

これはつまり

大腸がんの肝転移を治療した後にアスピリンを飲んでも、再発予防効果は確認できなかった

という結果です。

生存率も、アスピリン群の方が良くはなかった

36か月時点の生存率は、

アスピリン群 76%
プラセボ群  85%

でした。

アスピリンによって生存率は良くならない

という結果でした。

アスピリンには副作用もある

アスピリンは長く使われている身近な薬で、副作用が比較的軽度です。

ただし、命にかかわる副作用が見られることがあります。

特に注意が必要なのが、血が止まりにくくなる作用による出血です。

今回の試験で重い有害事象がみられた割合は、

アスピリン群 8%
プラセボ群  2%

でした。

鼻出血や十二指腸潰瘍、脳出血なども報告されています。

通常は頸部な副作用だが、重篤な副作用が起こる可能性もある薬剤です。

では、なぜ別の研究では再発が減ったのか?

ここが今回のポイントです。

2025年に発表されたALASCCA試験では、今回とは違う結果が出ています。

こちらは、大腸がんの中でも、

PI3Kという細胞の増殖に関係する経路に、特定の遺伝子異常を持つ患者さん

を選んでアスピリンの効果を調べました。

その結果、特定のPIK3CA遺伝子変異を持つ患者さんでは、3年間の再発率が、

14.1%から7.7%

に低下しました。

ほぼ半分です。

「効いた研究」と「効かなかった研究」の違い

2つの研究を比べると、対象となった患者さんが大きく違います。

ASAC試験は、

一度、肝臓まで転移した大腸がん

が対象でした。

一方、ALASCCA試験は、

比較的早い段階の大腸がんの中から、特定の遺伝子異常を持つ患者さんを選んでいます。

つまり、

同じ「大腸がん」でも、患者さんの条件によって差がある

ということです。

進行度も違えば、がんが持つ遺伝子の特徴も違います。

そう考えると、

「大腸がんにアスピリンは効くのか?」

という聞き方そのものが少し大きすぎるのかもしれません。

むしろ今後は、

「どんな大腸がんなら、アスピリンが効く可能性があるのか?」

が重要になってきます。

結局、大腸がんの患者さんはアスピリンを飲んだ方がいいの?

現時点では、

大腸がんで、自己判断でアスピリンを始めることはおすすめできません。

今回のASAC試験では、肝転移治療後の再発予防効果は確認できませんでした。

一方で、特定の遺伝子異常を持つ患者さんでは、再発を減らした研究もあります。

さらに、アスピリンには出血などの副作用があります。

要は、

誰にでも使うのではなく、効果が期待できる患者さんを選ぶ必要がある

のではないかと思います。

なお、心筋梗塞や脳梗塞の予防など、病気治療のアスピリンを処方されている方は、アスピリンを中止する必要は全くありません。

まとめ

今回のASAC試験では、

大腸がんの肝転移を治療した後にアスピリンを飲んでも、再発を減らす効果は確認されませんでした。

一方で、特定の遺伝子異常を持つ大腸がんでは、アスピリンによって再発が減った研究もあります。

この2つの研究から見えてくるのは、

「アスピリンが効く患者と効かない患者に分かれる」

ということです。

同じ大腸がんでも、できた場所や遺伝子の異常で、性質が異なります。

まだ分かっていないことが多いですが、これからの研究ではっきりしてくるのかもしれません。

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濱元誠栄院長

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この記事を書いた人

1976年宮古島市生まれ。宮古島市立久松中学から鹿児島県のラ・サール高校に進学。鹿児島大学医学部を経て沖縄県立中部病院で研修医として勤務。杏林大学で外科の最先端医療を学んだのち再び沖縄県立中部病院、沖縄県立宮古病院、宮古徳洲会病院に外科医として勤務。2011年9月に上京しRDクリニックで再生医療に従事した後に、18年7月にがん遺伝子治療を専門とする銀座みやこクリニックを開院。

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