
若年性大腸がんが増加中?【医師解説】30代・40代に直腸がんが多い理由

濱元誠栄院長こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
最近、がんの患者さんを診ていて少し気になることがあります。
それが、30代、40代の直腸がんの患者さんが、以前より明らかに増えているのです。
もちろん、私が診ている患者さんだけの偏りかもしれません。
若い患者さんは印象に残りやすいので、単なる「医師の肌感覚」という可能性もあります。
そこで少し調べてみました。
すると、どうも完全な思い込みではなさそうなのです。
若い人の大腸がんが世界的に増えている
一般的に大腸がん(結腸がん+直腸がん)は、年齢とともに増えるがんです。
ところが近年、
50歳未満で発症する「若年発症大腸がん(early-onset colorectal cancer)」
が世界各国で増えています。
2025年のシステマティックレビューでも、若年発症大腸がんでは直腸が最も多い部位の一つで、若年者では直腸・左側結腸(下行結腸~S状結腸)に偏る傾向が報告されています。
では、日本はどうなのでしょうか。
日本の若年性大腸がんの特徴
台湾、韓国、日本、香港のデータを比較した研究があります。
50歳未満について調べると、台湾や韓国では結腸がん、直腸がんともに増えているのに対し、日本では決貯油がんは横ばいで、直腸がんだけ有意に増えていました。
日本の50歳未満の直腸がん罹患率は、
- 男性:7.2 → 10.1/10万人
- 女性:4.7 → 6.7/10万人
へ増加していました。
「若い人の大腸がんが増えている」というより、
「若い人の直腸がんが増えている」
という見方をした方が、日本では実態に近い可能性があります。

日本の若年大腸がんは、半分近くが直腸がん
さらに2025年、日本人731人の大腸がん患者を調べた研究が報告されています。
50歳未満の若年発症大腸がんは46人でした。
そのうち直腸がんだった割合は、45.7%。
一方、50歳以上での直腸がんの割合は、26.4%でした。
つまり、この研究では若い大腸がん患者のほぼ2人に1人が直腸がんだったことになります。
症例数の少ない単施設研究なので、この数字をそのまま日本全体に当てはめることはできませんが、診療をしていて感じていた
「若い人の直腸がんが多い気がする」
という印象とはよく合います。
生まれ年での調査結果
さらに世界各国のデータを「診断された年」ではなく「何年生まれか」で解析すると、日本でのある現象が見えてきます。
大阪での調査では、1960年代生まれあたりから若年大腸がんの増加傾向が認められました。
しかも、
結腸がんより直腸がんの方が、早い世代から増加していた
のです。
これは、
生まれた世代によって、何らかの環境や生活習慣への曝露が変わった可能性
も考えられています。

なぜ若い人の直腸がんが増えているのか?
ここは、まだ分かっていません。
肥満、運動不足、食生活、糖尿病やメタボリックシンドロームなど、従来から大腸がんとの関連が知られている要因はもちろん候補です。
2026年のレビューでも、若年発症大腸がんについて比較的一貫しているのは、肥満や代謝異常との関連でした。
一方、食事、飲酒、喫煙、運動不足などについては関連を示す研究はあるものの、「これが若年大腸がん増加の原因だ」と言えるものはまだありません。
実際、若い直腸がん患者さんの中には、
「太っていない」
「タバコも吸わない」
「運動もしている」
という人も珍しくありません。
生活習慣だけですべて説明するのは無理があります。
最近かなり注目されているのが「腸内細菌」
ここ数年、研究が急速に進んでいるのが腸内細菌です。
2025年、Natureに興味深い研究が発表されました。
11か国、981例の大腸がんのゲノムを解析したところ、コリバクチン(colibactin)という毒素を作る腸内細菌に関連した特徴的な遺伝子変異が、若年大腸がんで多く見つかりました。
特に40歳未満で診断された大腸がんでは、70歳を超えて診断された大腸がんと比較して、コリバクチン関連の変異パターンが約3.3倍多く認められました。
さらにこの変異は、がんができるかなり早い段階で生じていたと考えられています。
つまり、
子ども〜若い頃の腸内環境が、数十年後の大腸がんに関係しているのではないか
という仮説が出てきたわけです。
ただし、まだ「この細菌が若年大腸がんの原因」と証明されたわけではありません。
この分野はこれからだと思います。
若い人は「血便」からのサインを見逃す
若い人に血便があった場合、多くの人が「痔」だと思ってしまうことがあります。
本人だけでなく、医療者側も若ければ大腸がんの可能性を低く考えがちです。
ところが2024年、50歳未満の大腸がんについて81研究、約2490万人を解析した報告では、診断前の症状として最も多かったのは、
血便 45%
腹痛 40%
便通の変化 27%
でした。
しかも症状が出てから診断まで、中央値で約4か月、平均では約6か月かかっていました。
また、血便は結腸がんより直腸がんで特に多い症状です。若年発症大腸がんに限った解析では、血便がある患者は結腸より直腸にがんがある可能性が強く関連していました。
「若い人の血便は大腸がんの可能性は低い」という考えは、半分あっていますが、最近では毛も言えなくなってきています。
30代でも、続く血便は一度調べてほしい
今回いろいろ調べてみて、診療現場で感じていた違和感は、まったく根拠のないものではありませんでした。
特に気になるのは、
若年発症大腸がんの中でも、直腸がんが多い
という点です。
原因はまだ分かりません。
肥満や食生活だけでは説明できず、腸内細菌や子どもの頃からの環境への曝露など、さまざまな研究が始まっています。
今の段階で大切なことは、
若い人にも直腸がんはある
と知っておくことだと思います。
特に、
- 血便が繰り返す
- 便に血が混じる
- 便が以前より細くなった
- 便秘や下痢など便通の変化が続く
- 原因のはっきりしない貧血がある
といった変化が続く場合には、「まだ若いから」と放置しないことです。
あとは、便潜血検査で「陽性」が出た時に、必ず一度は調べるようにして欲しいです。
若い人ほど、陽性でも放置しがちです。
30代、40代の直腸がん。
これからもう少し注意して見ていく必要がありそうです。













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