
【小細胞肺がん】イムデトラ+イミフィンジで生存期間21.1か月!

濱元誠栄院長こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
2026年10月24日、進展型小細胞肺がんの新しい治療成績が、医学誌「New England Journal of Medicine(NEJM)」に発表されました。
維持療法のイミフィンジ(デュルバルマブ)にイムデトラ(タルラタマブ)を加えることで、生存期間が大幅に延長したという結果です。
イミフィンジ単独の維持療法と比較して、生存期間の中央値は12.7か月から21.1か月へ。8.4か月の延長が認められました。
小細胞肺がんの治療において、かなりインパクトのある結果です。
小細胞肺がんは抗がん剤が効いても再発しやすい
進展型小細胞肺がんでは、初回治療としてプラチナ製剤(カルボプラチンまたはシスプラチン)とエトポシドに、免疫チェックポイント阻害薬のイミフィンジを併用する治療が行われています。
ただ、小細胞肺がんには大きな問題があり、抗がん剤がはじめ非常によく効くのですが、短期間で再発してしまう患者さんが多いということです。
今回の研究では、初回治療後の維持療法の段階から、イミフィンジに分子標的薬(二重特異性T細胞誘導抗体)イムデトラを追加する方法が検討されました。
*進展型小細胞肺がんでは、イミフィンジの維持療法は日本未承認です。(限局型のみ承認)
DeLLphi-305試験とは?
DeLLphi-305試験は、日本を含む国際共同第3相臨床試験です。
対象となったのは、進展型小細胞肺がんに対して、プラチナ製剤+エトポシド+イミフィンジによる初回治療を受け、病気が進行していなかった563人です。
患者さんを次の2つのグループに分けました。
- 282人:イムデトラ+イミフィンジによる維持療法
- 281人:イミフィンジ単独による維持療法
そして、生存期間や病気が進行するまでの期間を比較しました。
生存期間は12.7か月から21.1か月に延長
今回の研究で最も注目されたのが、全生存期間(OS)の結果です。
| 評価項目 | イムデトラ+イミフィンジ | イミフィンジ単独 |
|---|---|---|
| 全生存期間中央値 | 21.1か月 | 12.7か月 |
| 1年生存率 | 79% | 53% |
| 無増悪生存期間中央値 | 7.4か月 | 1.9か月 |
| 奏効率 | 26.4% | 4.1% |

さらに、病気が進行するまでの期間も1.9か月から7.4か月に延長しました。
特に印象的なのは、維持療法開始から1年後の生存率が53%から79%に改善したことです。
なお、今回の生存期間は、最初の抗がん剤治療を終えて維持療法に入った時点から計算されています。
イムデトラはどんな薬?
イムデトラは、小細胞肺がんの細胞表面にある「DLL3」というタンパク質を標的とする薬です。
正式には、二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE)と呼ばれます。
簡単に言うと、患者さん自身の免疫細胞を、がん細胞に直接誘導して攻撃させる薬です。
*イムデトラに関してはこちらのブログも参照に

免疫チェックポイント阻害薬イミフィンジお組み合わせることで、より強い抗腫瘍効果が期待できると考えられています。
副作用は?
効果が高い一方、副作用はどうでしょう。
今回の試験では、グレード3以上の有害事象は、
- イムデトラ+イミフィンジ群:46.8%
- イミフィンジ単独群:40.6%
でした。
治療との関連があると判断されたグレード3以上の有害事象は、それぞれ20.9%と10.8%でした。
特にイムデトラで特徴的なのが、サイトカイン放出症候群(CRS)です。
免疫細胞が急激に活性化することで、発熱、血圧低下、呼吸状態の悪化などが生じる可能性があります。
今回の試験では、イムデトラ併用群の49.6%にCRSが認められました。
ただし、その大部分は軽症から中等症であり、グレード3は0.4%でした。
また、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は1.1%に認められました。
ICANSの症状は意識障害、錯乱、せん妄、失語、幻覚、振戦、歩行障害、痙攣などがあります。
イムデトラは投与初期に特別な観察や副作用管理が必要な薬剤です。治療効果だけでなく、安全に投与できる医療体制も重要になります。
日本でも、この治療を受けられる?
イムデトラは、2024年12月に日本で「がん化学療法後に増悪した小細胞肺がん」に対して承認されています。
2026年3月には、DeLLphi-304試験の結果を踏まえて、二次治療に関する添付文書の記載も改訂されました。
一方、今回のDeLLphi-305試験で検討された初回治療後のイムデトラ+イミフィンジ維持療法は、2026年10月30日時点で国内の承認適応に含まれていません。
今後、この結果を受けて承認申請や治療ガイドラインの改訂が進む可能性があります。
小細胞肺がん治療は「再発後」から「再発前」へ
今回の結果で重要なのは、イムデトラを使うタイミングです。
イムデトラは、すでに再発・増悪した小細胞肺がんに対して二次治療での効果が示されてきました。
しかし今回の研究では、最初の治療が効いているうちにイムデトラを追加することで、さらに大きな生存期間の延長が得られました。
また、脳転移や肝転移を有する患者さんを含む、複数の患者集団でも生存期間延長の傾向が認められています。
進展型小細胞肺がんは、長年にわたり治療選択肢が限られていたがんの一つです。
今回のDeLLphi-305試験は、治療の考え方を変える可能性を持つ研究だと思います。
これまで再発しやすかった小細胞肺がんに対して、病状が落ち着いている期間をより長く保てる可能性が示されたことは、大きな前進です。
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