
肺がんの新薬「イザロンタマブ ブレンギテカン」がすごい!がんの進行を抑える期間が約2倍に

肺がんの新薬「イザロンタマブ ブレンギテカン」がすごい!がんの進行を抑える期間が約2倍に
ESMO(欧州臨床腫瘍学会)での発表と同時に、2026年10月26日、世界的な医学雑誌「Lancet」に、肺がんの新しい治療薬について注目の研究結果が発表されました。
その薬の名前は、イザロンタマブ ブレンギテカン(Iza-Bren)。
舌を噛みそうな名前です。
今回の研究では、従来の抗がん剤治療と比べて、がんが進行するまでの期間が5.7カ月から11.1カ月へ、約2倍に延びました。
EGFR遺伝子変異のある肺がんとは?
肺がんの中には、「EGFR」という遺伝子に変異があるタイプがあります。
EGFRは細胞の増殖に関係する遺伝子ですが、ここに変異が起こると、がん細胞が増殖しやすくなります。
このタイプの肺がんには、EGFRの働きを抑える「分子標的薬」がよく効くことが知られています。
代表的な薬がタグリッソです。最近ではライブリバントという新薬も登場しています。
タグリッソなどのEGFR阻害薬によって、以前より長期間がんを抑えられるようになりましたが、どうしても薬が効きにくくなる「薬剤耐性」が起こります。
薬が効かなくなった場合、これまではプラチナ製剤とペメトレキセドを組み合わせた抗がん剤治療などが選択されてきました。
今回の新薬は、そうした患者さんにとって期待される治療薬です。
新薬「イザロンタマブ ブレンギテカン」はどんな薬?
この薬の特徴は、がん細胞を2つの目印で見つけて、抗がん剤を届けることです。
がん細胞の表面には、EGFRやHER3というタンパク質があります。
イザロンタマブ ブレンギテカンは、この2つを認識できる抗体に、強力な抗がん剤を結合させています。
このような薬を「抗体薬物複合体(ADC)」と呼びます。
仕組みを簡単に説明すると、
- EGFRとHER3を目印に、がん細胞に結合する
- 薬ががん細胞の中に取り込まれる
- 結合していた抗がん剤が放出される
- がん細胞のDNAにダメージを与え、増殖を抑える
という流れです。

さらに、EGFRやHER3からの増殖シグナルを抑える働きもあります。
従来の抗がん剤とは違った仕組みで、がん細胞を攻撃する薬なのです。
がんが進行するまでの期間が約2倍に!
今回発表されたのは、中国で行われた「PANKU-Lung01」という第3相臨床試験です。
対象となったのは、EGFR遺伝子変異のある進行非小細胞肺がんで、第3世代EGFR阻害薬による治療後にがんが進行した患者さんです。
進行がんに対する抗がん剤治療をまだ受けていない方が参加しました。
432人が2つのグループに分けられました。
- 新薬イザロンタマブ ブレンギテカンを使うグループ
- 従来の抗がん剤(ペメトレキセド+プラチナ製剤)を使うグループ
実際に治療を受けた422人を対象に、効果が比較されました。
その結果がこちらです。
| 治療効果 | 新薬 | 従来の抗がん剤 |
|---|---|---|
| 無増悪生存期間(PFS) | 11.1カ月 | 5.7カ月 |
| 奏効率 | 60.2% | 34.5% |
| 奏功期間中央値 | 10.4カ月 | 5.7カ月 |

従来の治療では5.7カ月だったものが、新薬では11.1カ月に延びました。
奏効率も約6割に上り、従来の抗がん剤を大きく上回っています。
これだけ明確な治療効果が出たことは、EGFR阻害薬が効かなくなった肺がんの治療にとって大きなニュースです。
生存期間も延びるのか?
患者さんにとって、もう一つ気になるのは「長く生きられるようになるのか」という点でしょう。
今回の研究では、生存期間についても新薬の方が良好な傾向を示しました。
ただし、2026年10月の発表時点では、まだ十分な追跡期間が経過していません。
今後の追加解析によって、生存期間の延長がどの程度期待できるのか、さらに明らかになると思います。
副作用はどうなの?
効果が高い薬ですが、副作用もあります。
今回の試験で多く見られたのは、次のような副作用です。
- 好中球や白血球の減少
- 血小板の減少
- 貧血
- 脱毛
- 口内炎
- 倦怠感や食欲低下
特に、血液に関係する副作用が目立ちました。
グレード3以上という比較的重い副作用は、新薬を使用した患者さんの約79%に認められています。従来の抗がん剤では約62%でした。
また、新薬群では約60%の患者さんが減量を、約54%が一時的な休薬を必要としました。
ただ、副作用に応じて薬を減量したり、白血球を増やす薬を使用したりすることで、治療を継続できた患者さんも多くいました。
副作用によって治療を完全に中止した人は約2%でした。
また、肺がん治療で気になる間質性肺疾患は2人(約1%)に発生し、うち1人はグレード3でした。
治療に関連した死亡も新薬群、抗がん剤群でそれぞれ1人報告されています。
今後、この薬が広く使われるようになるには、副作用をうまく管理することが重要になりそうです。
ほかの新しい肺がん治療薬と比べると?
EGFR阻害薬が効かなくなった肺がんに対しては、近年、さまざまな新薬が登場しています。
例えば、EGFRとMETを標的とする「ライブリバント」を抗がん剤と組み合わせる治療があります。
また、HER3を標的とするADCや、TROP2を標的とするADCも開発されています。
今回のイザロンタマブ ブレンギテカンは、こうした新薬の中でも、非常に良好な治療成績を示しました。
特に、抗がん剤との併用を必要とせず、単剤で11.1カ月という無増悪生存期間を達成したことが注目されています。
ただし、それぞれの臨床試験では患者さんの背景や治療条件が異なるため、数字だけで薬の優劣を決めることはできません。
今後は、ほかの新しい治療法との直接比較も期待されます。
まとめ:EGFR肺がんの治療がさらに進歩する可能性
EGFR遺伝子変異陽性の肺がんは、分子標的薬の登場によって治療成績が大きく改善してきました。
しかし、分子標的薬が効かなくなった後の治療には、まだ多くの課題があります。
今回のPANKU-Lung01試験では、新しいADCによって、がんが進行するまでの期間が約2倍に延び、約6割の患者さんでがんの縮小が確認されました。
副作用の管理や生存期間に関する追加データなど、これから確認したいこともあります。
それでも、『タグリッソ一のあと治療』で化学療法しかなかった選択肢が増える可能性を示した意義は大きいと思います。
新しい薬の開発は、着実に進んでいます。
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