
【膵臓がんの痛み】ステージ4でも約7割が改善?緩和のための放射線治療

濱元誠栄院長こんにちは、銀座みやこクリニック院長の濱元です。
今回のブログの内容は、多くの膵臓がんの患者さん・ご家族に知って欲しいので、シェア、拡散してもらえると嬉しいです。
今年の緩和医療学会の個人的に一番の目玉は、「症状緩和のための放射線治療ガイドライン」でした。

気になっていた、膵臓がん原発巣に対する緩和照射のページを読んでみました。
それがこちら

疼痛緩和目的の放射線治療を行うことを弱く推奨する
とあります。
ということは、ステージ4でも「緩和のための照射」であれば、放射線治療をしても良いんです。
なぜ膵臓がんは強い痛みが出るのか?
まずは、痛みのイメージが強い膵臓がんで、痛みが出る原因について。
膵臓は、胃の後ろ側にあり、周囲には腹腔神経叢をはじめとする多くの神経が集まっています。
膵臓がんが大きくなり、膵臓の周囲や後腹膜の神経へ広がると、
- みぞおちの奥が痛む
- 背中や腰に突き抜けるような痛みが出る
- 横になると痛みが強くなる
といった症状が起こります。
このような痛みに対して、膵臓の原発巣へ放射線を当て、がんを小さくしたり、局所での進行を抑えたりすることで、神経への圧迫や刺激を減らせる可能性があります。
つまり、放射線治療は、痛み止めとは異なる方向から痛みの原因に働きかける治療なのです。
「弱く推奨」は、効果が弱いという意味ではない
ガイドラインの「弱く推奨する」という表現を見ると、
「効果がほとんどないのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、これは放射線治療の効果が弱いという意味ではありません。
膵臓がんの緩和照射については、質の高い大規模な比較試験がまだ十分ではなく、患者さんの体調、痛みの原因、がんの広がり、予想される経過などによって、治療のメリットが異なります。
そのため、すべての患者さんに一律に行うのではなく、状態を見ながら治療の選択肢として検討する、という意味での「弱い推奨」です。
2026年版のガイドラインでも、「膵癌原発巣による疼痛の緩和」が独立したクリニカルクエスチョンとして取り上げられています。膵臓がんの原発巣に対する緩和照射が、正式に検討すべき治療選択肢として示されたことには、大きな意味があります。
実際、どのくらい痛みが和らぐのか?
膵臓がん患者100人を対象とした報告では、緩和照射を受けた患者さんの69%で痛みが改善しました。
さらに、胃の圧迫などによる早期満腹感や腹部膨満感は59%で改善し、がんからの出血に対しては73%で止血効果が得られています。副作用の多くは軽度から中等度でした。
また、痛み止めで十分に抑えられない中等度以上の痛みがある膵臓がん患者さん30人を対象としたPAINPANC試験では、8Gyを週1回、合計3回照射する短期治療が行われました。
その結果、比較的早い時期から臨床的に意味のある痛みの軽減が認められ、生活の質も改善しました。副作用も大部分が軽度だったと報告されています。
もちろん、全員の痛みがなくなるわけではありません。
それでも、医療用麻薬を増やし続ける以外に、痛みの原因となっている原発巣へ直接アプローチできる可能性があることは、もっと知られてよいと思います。
どのような患者さんが対象になるのか?
特に検討してほしいのは、次のような患者さんです。
- 膵臓の原発巣による、みぞおちや背中の痛みが強い
- 医療用麻薬を使用しても痛みが残っている
- 麻薬による眠気、吐き気、便秘などがつらい
- 原発巣が大きくなり、胃や十二指腸を圧迫している
- 原発巣からの出血が疑われる
- 遠隔転移はあるが、原発巣による症状が生活を大きく妨げている
一方で、腹膜播種、腹水、骨転移など、別の場所が痛みの原因となっている場合には、膵臓の原発巣を照射しても痛みが改善しない可能性があります。
まず、どこから生じている痛みなのかを見極めることが重要です。
放射線治療は何回くらい行うのか?
緩和照射では、根治を目指す放射線治療よりも、治療期間を短くすることが一般的です。
実際には、
- 5回程度
- 10回程度
- 週1回で3回程度
など、患者さんの体調や予測される経過、腫瘍と胃・十二指腸との位置関係、抗がん剤の予定などを踏まえて決められます。
治療自体は通院で行えることも多いですが、照射前には治療計画用のCT撮影が必要です。
副作用として、吐き気、食欲低下、倦怠感、胃や十二指腸の炎症などが起こる可能性があります。膵臓の周囲には胃や十二指腸などの放射線に弱い臓器があるため、安全に照射できるかどうかを放射線治療医が判断します。
抗がん剤治療中でも相談できます
ステージ4の膵臓がんでは、治療の中心は抗がん剤です。
しかし、抗がん剤治療中だから放射線治療ができない、というわけではありません。
痛みが強く、日常生活や睡眠、食事に影響している場合には、抗がん剤のスケジュールを調整しながら、短期間の緩和照射を組み込めることがあります。
緩和照射は抗がん剤の代わりではなく、全身を治療する抗がん剤と、局所の症状を抑える放射線治療を役割分担させる治療です。切除不能の膵臓がんでも、病状や体の状態に応じて薬物療法、放射線治療、緩和ケアを組み合わせることが示されています。
なぜ、これまであまり行われてこなかったのか?
膵臓がんの放射線治療というと、
「ステージ4だから適応がない」
「転移があるので、原発巣だけ治療しても意味がない」
と判断されることが少なくありませんでした。
確かに、根治や生存期間の延長だけを目的に考えれば、全身に転移がある状態で原発巣だけを照射する意義は限定的です。
しかし、患者さんにとって重要なのは、生存期間だけではありません。
痛みが減って眠れるようになる。
食事が少し取れるようになる。
強い医療用麻薬による眠気が軽くなる。
家族と会話できる時間が増える。
このような変化も、がん治療の大切な成果です。
緩和照射は、がんを治すためだけの放射線治療ではありません。
残された時間を、できるだけ苦痛を少なく過ごすための治療でもあります。
膵臓がんによる痛みで困っている場合には、主治医や緩和ケア医だけでなく、一度、放射線治療科へ相談してみてください。
「ステージ4だから放射線治療はできない」と、最初から諦める必要はありません。
今回のガイドラインをきっかけに、膵臓がんの緩和照射が広まり、痛みを我慢しながら過ごす患者さんが一人でも減ることを願っています。
この情報を必要としている膵臓がんの患者さんやご家族へ届くよう、ぜひシェア、拡散をお願いいたします。













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